ドアをロックし、ドア側に背中を預ける。
改めて眺めると、喉が鳴った。
目に入れても痛くないとはよう言ったもんや。
睨まれている。
アイメイクで増大した大きな瞳の効力は、やばい。
「そんなんせえへんかってもかわいいのに」
「メイクはね、強くなれる魔法をくれるの」
「ふうん。前もゆうてたな」
「唇はどう?」
邪気のない目で問いかけられ、焦った。
まじまじ見つめるのは止めてたのだが……、
もう少し己が堪えられるか待ってみたかったが、もう無理や。
「んっ……」
唇の色が褪せる勢いで口づける。
舌で吸って奪い、蹂躙する。
荒い息の中、
「さっきのでまだ気づいてなかったんや」
菫子はキスだけでとろけそうだ。
愛撫を仕掛けたら簡単に逃げられなくなるのに、わざわざ鍵をかける用意周到さは、
密室でのふたりきりを楽しみたいからや。
変態じみていてもしょうがない。
これ位なら許されると知っていて、董子に甘えてる。
肌蹴たワンピースの胸元をくつろげる。
まさか、下着までお揃いとは思わなかった。
赤に白いふわふわのファーが飾られたデザイン。
立っていられない様子の菫子を浴槽の中に下ろした。
バスルームに来るまでに交わしたキスのせいで、菫子は溶けてしまった。
甘い匂いを漂わせながら。
上着を脱ぎ放って、向かいあう。
舌を絡め、耳たぶをなぞった。
抑えられない甘い声が耳に届く。
「……、最初からそのつもりだったの?」
「どうやろ?」
くてん、と力をなくした腕がバスタブの縁にあたった。
性急に、求めなくても欲しいものはこの手の中にある。
ただ、気持ちが膨れ上がっては抗う術も持たない。
はあはあと息が吐き出されている。
半眼が妙に艶っぽい。
「と……うこ?」
急に腕を伸ばしてきた董子が、口づけてきた。
柔らかな唇。
濡れた感触が、何かを煽るようだ。
押しつけられた唇は、ソフトなキスどまりだが、それが却って、
いい効果をもたらしたようだ。
俺が勝手に盛り上がるくらいに。
菫子が、合図を送っているのを感じとった。
いきなり首筋に噛みついて、音をたてる。
何度も、イやらしく。
淫らな気分が興奮を高める。
「っ……ああ」
下着の上から口に銜えて吸いたてる。
固さを増していくから、夢中になった。
「素直でかわいい。
俺が、こんな風にしたんや。自惚れとちゃうもんな」
どういう態度か、足をばたばたとさせてもがくから、
膝を割って自分の足を入れて拘束する。
自分たちが紡ぐ呼吸と心臓の音しか聞こえない中、やけに鳴り響く音を聞いた。
「どきっとしたんや?」
かっと羞恥の表情が灯る。
「そんな顔は卑怯やで」
意地悪に聞こえるように、わざとらしく言う。
より一層恥ずかしそうにする董子に満足した。
小動物を追いつめた感覚に陥る。
怯えるどころか、誘ってさえいたが。
見つめながら震える指に口づける。
感じやすくなっている董子は自然と甘い声をもらす。
ぞくりと背筋が泡立った。
フロントホックの下着を外して、放り投げる。
にやりと笑って、隠そうとした腕をつかんだ。
「誘っておいて今更、あかんやろ。
初々しい反応が俺を暴走させるってええ加減理解しようや」
今日のいじめっこ振りはどうしたんやろか。
自分でもわからん。
董子がニくい演出するからや。
自己完結させた。
膨らみを手のひらで愛でつつ、頂きを舌で転がした。
吸うと高い声が上がる。
「ええ声や。もっと聞かせて」
あいている手で下腹部をたどる。
しっとりと濡れたそこに触れると、下着の上からでも湿った音がした。
「はぁ……ン」
下着の隙間から指を差しこんで、固く尖った蕾をいじる。
頂に舌を絡め、
膨らみを揉みしだく。
つぷ。水音が増した。
溢れる蜜を掬って蕾にこすりつける。
背筋が大きく跳ねたから、腕で支える。
抱き上げて、マットの上に横たわらせた。
唇をしどけなく開き、瞳に涙を滲ませ、膝を立てて腕を無造作に放り出している。
ヤられた。
思わず唇をぺろりと舐める。
この獲物は扇情的や。
今すぐにでも襲いかかって、思う存分突き上げて、膣内(なか)で暴れたい。
……あっという間に熱情の証が、迸って、果ててしまうな。
既に張りつめたソレが董子の中に入りたいと、訴えているけれど、
ここで我慢できひんかったら男がすたるやろ。
もっと感じさせて、
何も考えられなくさせなければ。
するりと、下着を抜き取る。
「……ああっ!」
赤く熟れた実をきつく甘噛みする際中に、内部に指を侵入させた。
臀部を僅かに持ち上げている。
突き立てて探る。
ざらざらとした感触の場所を撫でてかき混ぜた。
「く……ふ……っ」
快感をこらえようと、指を噛んでいる。
「……こっちや」
指を外させて、唇を押しつける。
激しいキスに翻弄され、吐き出される息は限りなく甘い。
「っ……や……あ」
いきなり充血したソコに舌で触れた。
疼くソコをつつく。
背中が反る。
蜜をすすり、中に舌を潜りこませた。
しどけない喘ぎが断続的になる。
胸の膨らみへの愛撫も同時にしていれば、
董子は、女の顔を隠せなくなる。
「どうされたいんや?」
見つめたままで囁く。
すがる指先の力は存外強かった。
「ちゃんと言わんとわからんやん」
「は、やく……欲しい」
涙が、董子の頬を伝った。
「もうちょっとや」
浅くざらついた場所を指でひと突きすれば高らかに啼いて果ててしまった。
弛緩した体は何度か波打った後ようやく落ちついた。
肩で息を整えている董子は完全に瞳を閉じている。
ぴくぴくとまつげが震えていた。
シャンプーの後ろに隠している避妊具を取り、
屹立した自身に纏わせて董子の秘部をこすった。
薄い膜の外からねっとりと蜜がしみついた。
潤滑剤は十分のようだ。
体勢を低くして半ば覆い被さる。
「ええ?」
董子はこくんと頷いて、足を絡ませてきた。
たまらない気分になり、最初から勢いをつけて貫いてしまう。
「ああぁ……んっ!」
堪えていた分、暴走した。
董子の潤んだ眼差しが俺を射抜く。
拭ってやりたいが、キスはもうできない。
拭ってもさすがに……。
浅く深く腰を動かす。
董子も自然に腰を揺らしていた。
揺れる膨らみを頂こと揉みあげる。
まだまだイきそうにない己に、ふと思いついた。
嫌になるくらいのねちっこさやわ。
貫いた時と同じ勢いで、董子の中から出る。
必死で目を閉じている董子がかわいい。
「……違う刺激を与えたる」
胸の谷間に自身を挟んで、腰を動かし始めた。
董子の体がしなる。
ふくらみを左右に揺さぶって、腰を動かす。
膣奥とは違ったやわらかさに包み込まれる。
「は……っあ……ん」
「気持ちええ。董子は?」
こくこくと頷くしかないらしい。
腰の動きが、スピードを上げる。
迸りがこみ上げてくる感覚があった。
さすがに、ここで吐精するのは許せなくて、もう一度董子の中へと入る。
奥まで突き上げて、荒い息を吐き出す。
低い呻きと共に固く張りつめた自身が、跳ねた。
薄膜越しに弾ける熱い、精。
ぎゅっ。
「涼ちゃん……っ」
名前を呼ぶ声と共に背中に爪を立てられた。
「すみれ……」
荒い息、上下する肩。
名残惜しくて、ゆっくりと抜け出る。
手を洗って、蛇口をひねった。
横たわったままの董子を壁に凭れさせて、洗面所に向かう。
丁寧に歯を磨いて戻ると、虚ろな目の董子と目が合う。
「ぼうっとしてどした?」
「……待ってたの」
ハートを撃ち抜かれた。
甘えた声音、とろんとした眼差しが追いついめる。
(う……俺って若っ……)
タオルの下の自身は、さっきより硬さを増した。
「いこうな」
蛇口を閉めて、抱き上げる。
背中に腕がしっかりと回された。
「ん……ちゃんと心ゆくまで愛したる」
唇をついばんで歩き出す。
軽いリップノイズがした。
「……!」
口をぱくぱくさせた董子は何かいいたげだ。
あえて気にしない振りをして、寝室の扉を開ける。
「……っ」
「まさか感じた?」
指を開いた口の中に入れてみると、歯が当たる。
「……だって涼ちゃんが」
「俺が?」
わざと押しつけるように密着させたら大きく体を震わせた。
唇を噛んでいる様子がいじらしい。
「……へえ生地越しでも刺激くるんや」
こっちこそ鼻から抜ける甘い声に刺激されまくってる。
しかも、気づいてるか知らんけどそっちも胸とかこすれてたっちゅうねん。
ああ、でもたまにはこういうのもええかもな。
そっと董子をベッドに下ろす。
くたっとなった体は指で突くだけで、ベッドに沈んだ。
更に熱く感じやすくなった体は、どんな風に触れても、すすり泣くような声をあげる。
全身で喜んでるようだ。
「……ん」
唇を指でたどり舌で舐めて、自らの唇を合わせる。
顎を伝う雫には構わずに、膨らみの谷間に指をはわせた。
「うっ……く」
「啼けばええ……我慢は体に毒やから」
膨らみを掌で弄び、肌に舌と唇を滑らせる。
玉の汗がヤらしくて、立ち上がった頂きが含まれるのを待っている。
ぺろ。舌ですくって指で転がしてひねってみたりする。
キスマークは鎖骨と両肩、胸の谷間、へその窪みに残す。
気持ちよさもあるやろうけど結構痛いに決まってる。
だから、限度がある。
掌と唇で体中に触れていると、董子が手を伸ばしてくる。
俺の、張り詰めた器官。
「やるな……」
いつかはためらってたのに、進歩やな。素晴らしい。
ああ、口笛でも吹きたい。
手の平から伝わってくる温度と微妙な加減の刺激に、ぞくぞくとして背中を震わせた。
「あっ……なに」
ごろんと体を反転させて位置を入れ替える。
「一緒に高まり合おうや」
大胆だったかもしれないが、
昨日や今日体を交わすことを知ったわけじゃあるまいし、
そろそろ次のステップに進みたいという欲が芽生えていた。
上になった董子が俺の足の間に顔を埋める体勢になる。
指使いと舌は慣れてなくて不器用な動きやけど、逆に快感に導かれる。
俺は董子の秘部に顔をうずめて、滴る蜜を舐め、割れ目から溝の辺りをこすった。
「ん……あっ……あっ!」
音を立てて啜る。
董子も喘ぎながら俺自身を口に含んでいる。
ちょっときつそうで罪悪感が。
可愛いからいじめたいというのと相反した感情。
「だ、大丈夫か?」
「……うん……それより息かかるのが」
「たまらんのや?」
「っん」
余裕綽々なわけはなかった。
このときを楽しみたいから、羞恥に染まらせてみたくなる。
自身を抜いて、引き出しから避妊具を取り出す。
口に銜えてフィルムを開ける。
取り出した中身を見せつけて董子に渡した。
ぎょっとした顔をした董子が俺と避妊具を見比べる。
「つ・け・て」
声が弾んでいた。
たちまち頬を真っ赤にした董子は、ちら、と
こちらを窺い、恐る恐る俺のモノに避妊具を纏わせていく。
意外にスムーズなのは、俺のやり方を見て覚えたのだろうか。
きちんと装着できて、嬉しくて董子の手を握ってやる。
「おおきに」
にっと笑ったら、董子はほう、と息をついた。
手を引っ張って、腹の辺りに跨らせた。
下から貫くと、たちまち高い声が上がる。
「あああっ」
「頑張った董子へのお礼。そのままでええからな」
ぐいぐい突く。水音が生々しい。
その度に揺れる膨らみを乱暴に愛撫する。
掌で形を変えるそれが、いとしくて、つくづく独り占めしたいと思う。
ま、今は俺のもんやから。
揺られている董子はシーツを指が白くなるほど握りしめている。
冷静に観察しているわけやない。
俺の手で感じている彼女の姿を見ていたいと思うだけ。
「次は董子が動いてみよか」
「や……だ……っ」
「できるって。俺を真似するだけやから」
身を持って教えこむしあわせに頬が緩む。
色づいた表情の董子がもっと見たくて奥を重点的に攻めた。
「や……だめ!」
「董子が近い……最高」
奥の方で繋がっているいるから密着感がある。
身を起こして抱きしめる。
正面で抱き合って、下から出入りを繰り返す。
激しい動きに半ば意識が朦朧とする。
「愛してる……董子」
「……っ……涼ちゃ……あいしてる!」
枯れた声で互いの名前を愛の言葉を叫んだ。
締めつけにたちまちピークを迎える。
強く腕を絡ませあって登りつめた。
ちゃぷ。お湯をはったバスタブの中で向かい合う。
花を浮かべているから、甘い香りがする。
既にアルコールは抜けきっていた。
元々グラスに口をつける程度しか飲んでなかったんやけど。
それにしても、日付変更線越えていたのには驚いた。
「涼ちゃん」
「何や、董子」
「何でもない」
董子が満たされた顔やったから、良かったと思う。
「すごい奉仕精神やったな」
にんまり笑ってやれば、耳まで真っ赤にしながらぼそぼそと言う。
「…… 私だって何かしたかったの。
涼ちゃんの全部から、愛しているって伝わってくるから、
私も伝えなきゃって。だから、頑張る」
「それって殺し文句やで。董子は天然タラシ決定」
「何それ」
くったくなく笑う董子が、お湯をかけてくるからかけ返す。
ばしゃばしゃ。
子供みたいにはしゃいで、笑って。
「ああ、もう大好きや」
「りょ、涼ちゃん!?」
いきなりきつく抱きしめたら、董子が、腕の中でもがいた。
こら、董子、そんな態度とられたら何度でも抱きたくなるやんか。
董子は、ようやく動揺が収まったのか、耳元で小さく呟いた。
「うん、私も大好きよ、涼ちゃん」
ゆっくりと、自然に唇を重ねた。
メリークリスマスって呟きながら。