sinfulrelations

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Whiteday's memory






 ベッドの縁に腰掛けて青を待つ。
 タオルで髪の滴を拭き取り、手持ち無沙汰になった私は膝に肘をついた。
 バスローブを着ている自体、待っていると思われても仕方ない。
「こ、これって誘っているのかしら? 」
 自分で言ってはっとした。
 顔が見る見るうちに高揚する。
 二人が迎える初めてのホワイトデイだ。
 今日は何をくれるのかしら?
 楽しみにしてろよって言ってたけど、青はある意味予想外の物くれるから本当に楽しみだ。
 期待以上のものをくれるって意味では予想通りかしら。
「私は何でも嬉しいのよ」
 独り言が、静寂の中に溶ける。
 耳を澄ませば、彼の足音が聞こえてきた。
 長身なので歩幅が大きいが、彼の動作は静かだ。
 出会った時から、品のあるとても洗練された仕草が印象的だ。
 すっとベッドに上がって後ろから私を抱きしめる。
「沙矢」
 耳に届く心地の良い声。
 艶が滲んだウィスパーヴォイスにぞくりと身を振るわせた。
 くすくすと忍び笑い。
「何がおかしいのよ? 」
青は笑って今度は顔に手を回した。
大きな手がカーテンになって視界を塞ぐ。
 青の手はひんやりしていてドキッとする。
 外されない手に、心臓が跳ねた。
「何してるの? 」
「いつもとは違った新鮮な気分になれていいだろ」
「真っ暗で何も見えないんだけど」
「気にするな。お前の代わりに見てやるから」
 一緒に暮らしだしてから、知らなかった青を少しずつ知っていってる。
「ふふふ、青って面白い」
「後で良いものやるからな」
 後で!?
 するりと腕が解かれて、そのままベッドに仰向けにされる。
 青はベッドについた腕でそのまま私の手を固く握り締めた。
 一緒に過ごす時間が増えて、ドキドキも増えた。
 だってこんなに近くにいる。
 前よりずっと、ありのままのあなたがそこにいる。
「愛してる」
 言葉と共に唇が重なった。

 丁寧に赤い華を咲かせてゆく唇。
 きつく吸われると感じる痛みが、今を限りなく感じさせてくれる。
 背中に腕を回して、身を任せる。
 私はいつも簡単に彼の動きに酔ってしまうのだ。
 首筋に青の吐息がかかる、それだけで、感じる。
 体が熱くなって、もう止められなくなる。
「青、青、もっと強く」
 夜の世界にいる私は大胆。
 恥ずかしさなんてない。全部裸にしてほしいの。
 心ごと包み込んで、受け止めて。
 あなたも全部受け入れるから。
「沙矢」
 名前を呼びながら耳朶を噛む。
 耳全体を舌でなぞって、中に差し入れる。
 鋭い快感が嵐となって駆け抜けた。
 唇を舌を使って開いてゆく。
 入り込んだそれに自ら舌を絡めた。
「うう……っん」
 体の熱が高まる。
 舌を絡ませれば、淫靡な音が響いた。
 唾液の糸が二人の間を繋ぐ。
 耳朶へと再び差し込まれた舌に体がおののく。
 指先は額を辿り、頬を撫で、首筋を滑る。
 私は青の背中に腕を回す。
 捕まって全部預けられる体。
 広くて、しなやかでたくましい。
 胸に手を添え青はゆっくりと揉みしだく。
「はあ……ん」
 声が漏れるのを防げない。
 気持ちよさに私の表情も変わってゆく。
 蕩けた顔で、彼に対峙する。
「青」
 吐息混じりに呟いて顔を近づけた。
 自ら、唇を重ねる。
 青は一瞬、目をみはったが、されるがままであるはずがなく、
 やがて舌が荒々しく口内を蹂躙した。
「好きよ……」
 頂に歯を立てて甘噛みしたり、きつく吸い上げながら、
 青の指は溢れる泉へと辿り着いていた。
 隠れた芽を探り当て、擦られると、
 私は荒い息を吐き出しすすり啼いた。。
 体中に快楽が響き渡る。
 蜜を撫でつけて、芽を擦り上げられれば波がじんわりと広がってゆく。
 秘所がじんわりと熱を増した。
 疼くそこを放置して、青はシーツの中で体中を愛撫し始めた。
 キスの雨が降る。
 甘い痛みを感じて背を反らせてしまう。
 強い力で吸い上げなければ、赤い痕にはならないらしい。
 青は、過去の恋愛でキスマークという物を残した事はないと言っていた。
後腐れなく別れる為にお互い残る物を与え合いたくなかったからだ。
 彼が本気で愛したのは私しかいないということに喜びを感じる。
 切ない心の距離を乗り越えて、今はこんなに素顔で愛し合えているわ。

 舌で秘所全体を舐められた。
 溢れる蜜を啜る卑猥な水音が響く。
 子猫がミルクを飲むのと同じ音だ。
 わざと音が立つように舌を動かしている。
 そのことが分かるから、余計に羞恥を煽られて、濡れた。
 背中が弓状に反り、腰が淫らに宙に浮く。
 指が溢れる泉の奥に入り込む。
 奥を揺さぶって、感じる箇所を確実についてくる。
「ああ……ん……早く……青っ! 」
 声を上げてねだる。
 指なんかじゃなくて、あなたが欲しいの。
 私の中へ早く来て。
 青はこちらを真っ直ぐ見つめ、熱っぽい口づけをくれた後、
 一旦体から離れると床へと下着を脱ぎ捨てて、手早く準備を整えた。
 霞んだ視界の中、覆い被さる青が見える。
 柔らかくなった体は簡単に開く。
 口づけを重ねながら、待ち焦がれたモノが秘所にあてがわれた。
「はあ……」
 満たされた悦びの溜息。
 一気に奥まで入って、一時動きを止めると、私の体を優しく抱きしめた。
 肌をぴったりと合わせるとどちらのとも分からない鼓動の音が聞こえる。
 肌を合わせているから混ざっているのだ。
 高く鳴る鼓動に、同じ時間を刻んでいることを実感する。
「沙矢」
 吐息で囁いて舌で耳朶をなぞられた。
 そのまま律動を開始する。
 腰を前後させたり、回したりされて内部をかき混ぜられる。
 青の動きに合わせて私も無意識に腰を揺らす。
「ああん……っ」
 律動を刻まれながら、両胸を揉まれると、気持ちよさで体が震えた。
 頂を舌で転がして弄び、きつく吸われる。
 行為は段々と激しさを増してゆく。
 汗が弾け、息が上がる。
 青が私の中で動くと、秘所は幾度となく収縮する。
 溢れる蜜を指に撫でつけ、芽を弄る。
 指と青自身による両方の刺激で、体中が啼いていた。
 声は途切れることはない。
 溶け合う水音も聞こえる。
「ああ……」
 青が艶を増した表情で、甘い声を漏らすのが聞こえると、
 抱かれてるんじゃなくて抱き合っていることを実感した。
 繋がって同じになることの幸福感が心に溢れる。
 弛緩する体。
 近づく波。
 ざわめいて一つになる為に向かう熱い飛沫。
 境界線越しに注がれる瞬間、脳裏が淡くスパークした。
「青、青……ああっ」
「沙矢っ」
 ふわりと体が、宙へと舞ってシーツに沈んだ。
 繋がったままの青が倒れこんでくる。
 炎を灯した体が、焼けそうで熱い。
 暫くして呼吸が整うと、青は繋がりを解き、隣りに横たわった。
 私の頭を腕の下に乗せてくれる。
「あったかい」
「暖房なんていらないな」
 髪を梳いてくれる青と寄り添う私もしゃがれた声が吐き出される。
 身を寄せると、膨らみが押し潰されそうになるけど、構わない。
 頂まで彼の胸板にくっつけて。
普段なら恥らうことをしている。
「沙矢……またお前を愛したい」
「うん、私も」
「その前に」
 がさごそと青はベッドに備え付けの引き出しの中から、小さな箱を取り出した。
 少し身を起こして壁に背をもたれさせる。
「やっぱホワイトデイなんだからチョコレートだろ」
「そうね」
「これ食べると回復するぞ? 」
 ニヤリと笑う青。
 思わず頷いてしまった。どうしよう。
 はっきりいって無茶苦茶なこと言われているんだけれど、
 私ももう一度、彼を感じたかった。
 くすぶる熱を、ゆるやかに解き放ちたくて、
 焦燥を煽られているからお互いさまね。
 かさかさと音をさせて、包みを開ける。
 箱も捨てちゃうのが勿体無いくらいお洒落で綺麗。
「これ取り寄せないと手に入らないの? 」
「ああ、一応な」
どうやら青いバラといい、チョコレートといい特殊なルートで取り寄せているらしい。
聞いたことがないご実家が関係しているのかしら?
「ハートだ、可愛いー」
ホワイトハートのチョコレートが三つ。
ぱくん。青が見ている前で大きな口を開けて食べる。
 口に入れるとすっと溶けてゆく優しい味。
 二つ目を食べて、三つ目に手を伸ばそうとした所で、何故か青に奪われた。
「ちょっと……う……ごっくん」
 抗議の声は口づけに飲み込まれる。
 青の唇から届けられたチョコレートは二人の熱で一瞬で溶けてしまった。
 笑い合う。チョコレートの口づけは極上で甘かった。
「青、ありがとう」
 そのまま、また足を縺れさせながら、シーツの中で互いを貪り合い始めた。
 今日は特別な日だもの。

 あなたから愛をもらう日だから、私もいつも以上に求めるわ。
 その分同じだけ、返すから。


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