sinfulrelations

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 春日(元)部長に襲われた時から、前にも増して
 彼のチェックは厳しくなった。
 誕生日に入籍したこともあり、妻を守るのは夫の義務とばかりに……。
 これじゃあ自由な時間もないわってくらい、ぴったりと青がガードしてくれている毎日。
 朝出る時も一緒、帰りは遅くなっても必ず青の車が来るのを待って共に帰る。
どっちにしても家に帰っても一人だし、
 待つくらいどうってことない。彼にはこれまで随分待たされたし。
 寧ろ彼が迎えに来てくれるとかなり嬉しい。
 何にも怖い物なし。
 彼はとてつもなくかっこよくて多大な色気オーラも出ているのに、
 誰一人として野次馬根性を発揮して近づく者はいないのだ。
『どこで出会ったんですか?』とか何気ない言葉も飛び出ない。
(というより青が見えないバリアー張っているように周りには見えているらしい)
 その代り、後で私に全部皺寄せが来る。どこで
 出会ったとか聞かれるのはかなり困るけど! 出会ったその日に
同じベッドの中にいたなんて誰に言えるのよ。
自分が後悔してなくても、いくらなんでもいえないわよ。
 会ってすぐ抱き合ったなんて。まあ、言っても良いんだけど。
 それは青だからってだけで、他の人が相手だったら誰にも言えやしない。
 会社の玄関の辺りで、私は青を待つ。
 ちゃんと警備員がいる場所で待つよう青から言われていたので
 その場所で。どうでもいいけど他人の会社を青はよく見ているなと思った。
 下手したら内部構造全部調べ上げてそう。
(うーん、でも警備員とも一定の距離を保てって何。)
 春日部長をどこかに消し去ったし。
 しかも春日部長、哀れなことに誰にも気にかけられてない。
 いなくなってもちらっとすら誰の口からも名前が出ない。
 人間の無情なところを感じたわ。
 扉の向こうに青が見えたので顔が綻んだ。
 手を上げると長身が近づいてくる。
「待たせたな」
 澄んだ眼差しで見つめられ、腰を抱かれる。
 警備員がちらと視線をくれるのに構わず歩き出す。
「ううん、全然?  今日は友達もさっきまで一緒にいてくれたから、
 心細くなんてなかったわ。それにね、
 待つ時間も段々楽しくなってきたのよ。
 あなたはまっすぐ私の所に来てくれるから待つ時間も幸せなの」
「それでも、一緒にいる方が幸せだろ」
「そうね」
 甘い眼差しに、囚われて頷く。
 会社を出て、車に乗り込む。
 秋頃に新しい車が納車されるからもうすぐこの車ともお別れだ。
 何度となく乗った白い車。色々な想い出が胸に蘇る。
 全てが優しいものとも限らないけれど。
「……今のうちに浸っておこっと」
「あと数ヶ月は乗るんだから」
 くくっと笑うと青はハンドルを握る。
「次の車も白?」
「次は赤」
「青は何でも似合うけど、赤は意外かな」
「赤ってお前のイメージだから」
 私のイメージカラーって赤なんだ。
 あら、意外だわ。
「あのね、青、私の事心配してくれるのはすごく嬉しいの。
 でも、無理はしないでね? 嫌なら……」
「好きでやってるんだから、気にしなくていい」
好きという部分、強調したわね。
 クールなのにそういうところはっきりしてるのね。
「俺の気持ちわかれよな」
「青、心配性すぎるわ」
「若くて美貌の妻が、男がたくさんいる場所で仕事しているんだぞ?
 嫉妬しない奴の方が異常だ」
「……うーん」
「はあ。自覚のない奴はこれだから困る」
「な、何よ」
「とにかくこれからも仕事終ったらすぐ電話入れろよ」
「分かってる」
 満足気に微笑み、青はアクセルを踏み込んだ。
 ど、どうしよう。合コンに誘われたなんて言ったら
 青、怒るわ。行かせてくれるわけがない。
 でもいつも断ってばかりじゃ悪いし、
 結婚してるからって理由で断ろうとしたら、
 ただ飲んで食べる集まりなのよ。気にしないでなんて、言われたし……。
 私は家に着くまで悶々と考え続けていた。
 そして、家に帰って勇気を出して告げたところ、
「合コン……そんな所行っていいと思っているのか」
 冷たい目で見下ろされた。
「人数足りないから、その埋め合わせで」
 私の言葉に、青は静かな怒りを露にした。
「よりにもよって沙矢を人数合わせに使おうとするなんて」
 よく見れば拳握ってる。
「私は平気よ? 」
「俺が平気じゃない」
 この話、終るのかしら。
 ああ、食事が終ってから言えば良かった。
 気まずくてご飯が進まない。
「行くって言っちゃったもの」
「俺の許可もなしに……ああもういい分かった。好きにしろ。
 ただし、俺も行くからな、その下らない合コン」
「え! 青がもてまくるのみたくないから嫌」
「心配するな。お前以外の女は目に映らない」
 顔が真っ赤になってしまう。
「……うん」
「お前も誰に話しかけられても冷たい態度を貫け。
 ちゃんと隣にいるから、大丈夫だ」
 これが合コンに夫婦で参加することが決定した瞬間だった。
 はっきり言って前代未聞だ。
 会場はお洒落な居酒屋っぽい場所だった。
 友達に手を振ると、こっちこっちと手を振り返してきたので
 そこへ急ぐ。青は私の肩を抱いている。
 一目は気にしないらしい。
「沙矢、その人が、彼? 」
「夫です」
「ちょ、ちょっと青!? 」
「何だよ」
「夫婦というか男連れで合コン来たなんておかしいでしょ。
一応、私が気に入ってるってだけの他人の振りしててくれない?」
「そうですね、一応それでお願いします」
 友人の陽香が微笑む。
 青は内心、不服なんだろうけど何とも思ってないような顔で
 微笑み返した。了解というように。
「ところで、あの、言いにくいんですが
 男性側の席に移動してもらえますか?」
「何故ですか?」
  青が陽香をちらと見つめると彼女は放心状態になった。
 ぼーっとしたまま動かない陽香。
 目を開けて気絶してる!  青はそ知らぬ顔で、店内を眺め回している。
「……陽香!?」
「……はっ」
我に返ったのね。
「沙矢、来てくれた人達自信失くして帰っちゃったらどうしよう」
 ぼそぼそと私の耳元で言う陽香。
 私は曖昧に笑うに止めた。
 だって一緒じゃなきゃ合コンなんて行かせてくれなかったんだもの。
「大丈夫よ。青は私の側を離れないから、他の人に影響はないわ」
「何気にノロケたわね」
「そういうつもりは」
「そうですね、俺達のことは気にしないで楽しんで下さい」
 にこにこにっこり。青は微笑んだ。
「というかそれじゃあ沙矢、合コンじゃないんだけど」
「う、確かに」
「妻に近寄る害虫は排除しなければならないですから」
「……沙矢の幸せ者め。こんなかっこいい人にそこまで言われて」
「あははは」
 楽しい雰囲気に包まれかけた所で店内には人が増え始めた。
 私と陽香、それに青を入れて丁度9人。
 微妙な人数だ。
 時間の経過と共に場は和み始める。
 お酒も入り、仲良くなった者同士お喋りも弾んでいる。
 相変わらず、青は私の隣をがっちりキープ。
 と思っていたら、いきなり立ち上がった。
 「ちょっと実験してみるのさ」
 耳元で囁かれた。
 何の実験ですか?
 青は振り返りもせずどこかへすたすた歩いていく。
 暫く呆けていると色々な男性が周りを囲み始めたのに気付く。
「初めまして」
 その中の一人が声をかけてきた。
 見た目は真面目そうな感じの眼鏡の男性。
「さっきまでちょっと近づきにくくてね、
 あの人、彼氏じゃないよね。いる人が来るはずないし」
「ええ」
 嘘ついたことになるのかな。
「あの人、すごくいい男だよね」
 彼は苦笑する。
「下手したら来ている女性皆持っていかれそうだ。
 彼は君に夢中でそんなこともないのかもしれないけど」
 まったくもってその通りです。
「合コンって普通に考えると軽い感じがするよね。
 でも私はそうは思わないよ。気の合う者同士を見つけて純粋に
 語り合う場でしょ。別にどこもやましい所なんてないんじゃないかな」
 彼は極めて紳士的に微笑んだ。
 周りにいる男性陣はただ真っ直ぐ私を見ているだけで
 話しかけることはなかった。
 別に嫌な気分しなかったし、いい人だったので、
 私は自然とその人と話しこんでいた。
 こんなお兄さん欲しいかも。
 甘えさせてくれて、厳しい時はちゃんと厳しくて。
 私は一人っ子だったから、昔から兄弟というものへの憧れは強かった。
「……」
 とほのぼの和んでいる場合じゃなかった。
 青、どうしたんだろう。
「どうかしたの?」
 突然辺りに視線を彷徨わせ、落ち着きがなくなった私を見て、
 その眼鏡の男性は不思議そうな顔をした。
「失礼します」
 と言って席を立った。
 失礼かもしれないがこの際仕方がない。
 後のことの方がよっぽど怖かった。
 歩きながらきょろきょろと店内を見回す。
 青は……どこだろう。
 あ、いた。
 店の出入り口の付近で腕を組んでいる長身痩躯の男。
 容姿もあれほど目立つ存在は他にいないから、彼に間違いない。
「青、実験って何だったの?」
 いきなり切り出す。
「気づかなかったか」
「?」
「お前がどれだけ男を寄せ付けるかの実験」
「何それ」
「やっぱり合コンなんてロクでもない」
「青こそ、女の子達の視線気づかないの?」
「それは俺のせいじゃないな。勝手にこっちを見てくるんだ。
 どっちにしろ俺は見てないがな」
「陽香、気を失ってたわよ」
「気づかなかった」
 旦那様は悪びれもしていない。 「それよりどういうことだ、沙矢。
 あんな男と楽しそうに喋りやがって」
「ああ、あの人、お兄さんみたいな感じがして好感持ったの。
 それだけ。変な気持ちなんてあるわけないでしょう?」
「少なくとも向こうは妹みたいだなんて思ってないぞ」
「……そうね、合コンに参加してるんだものね」
「冷たい態度貫き通す約束を破ったな」
「だから、それは……」
「しかも予定が狂った。お前が大人しく座ってないから」
 割り込むこともできなかったじゃないか。
「へ。じゃあ今からやり直して」
 さっと席の方へ戻ろうとした私の腕を青が強く掴んだ。
「一緒に行こうか」
 にやりと笑った青。
 絶対怒っているわ!
 つかつか歩く青に引きずられ、席へ戻ると、男性陣が振り返った。
 眼鏡のあの人が驚いている。
「初めまして、皆さん、藤城青と申します」
 さっと名刺を一枚一枚配っている青。
 よく持ってたわねと内心感心する。
「今日は私の妻、沙矢がお世話になったようで」
「!?」
 男性陣はおろか、席を離れていた陽香まで驚いている。
 言っちゃったかって顔をしてる。
「沙矢ちゃん、彼じゃなくてご主人だったんだね」
 眼鏡のあの人が納得した感じで微笑む。
「は、はい」
「妻を気軽に沙矢ちゃんなんて呼ばないで頂きたい。
 寧ろ、呼ぶな」
 恐ろしい迫力で青は言った。
「青、小松さんはお友達なの。だからそんなこと言わないで」
「……男の友達など許すわけないだろう」
「沙矢ちゃんは良い旦那さんを持ったね、大切にするんだよ」
「はい」
「沙矢の父親にでもなったつもりか、貴様。馴れ馴れしい」
 青は一段と低い声を紡いだ。
 その声さえどこか色っぽい。
「沙矢ちゃんを幸せにしてあげて下さい」
「言われなくてもそのつもりです」
 鋭い目つきで青は小松さんを見た。
「この中に俺から沙矢を奪う自信がある奴が一人でもいるのか?
 いたとしても勇気がある命知らずだよ……そいつは」
 ちらちらと検分するように男性陣を見定めた。
 春日部長の件で分かったけど、青の言う半殺しは精神的に
 虐げるという意味の半殺しだ。
 人によっては肉体的よりもきつかったりする。
「……強いね」
 小松さんは苦笑いした。
 青は、私の腕を引き立ち去ろうとしたその瞬間、
 一度だけ振り返った。
「沙矢ちゃんじゃなく藤城さんなら大目に見て許そう、小松さん」
 何気に自分のものだって主張してるのね。
「ええ、失礼しました。あなたの奥さんを捕まえて」
「分かって頂ければ言う事はない」
 薄っすらと青は微笑んだ。
 私は腰を抱かれ、共に歩く。
 離れた席に座っていた陽香にごめんねと視線を送って店を出た。

 帰りの車の中で、青は唐突に言った。
「合コンがどういうものだかはっきり理解したよ」
「はい?」
「単なるアホの集まりだな。レベルも低いし」
 青は自分を基準にしちゃ駄目でしょ。
「綺麗な娘、結構いたでしょ。気にならなかった?」
「全く」
「ぷ……くく」
 はっきり言う青に思わず笑いが込み上げた。
「本気で言ってるんだぞ。お前よりいい女なんて存在しないんだから」
「……ありがとう」
「意外で私もびっくりした。青、落ち着いてるんだもの」
 青があれぐらいで収まるなんて思わなかった。
 確かに皆怯んでたけど……。
「あいつら相手に怒るのも馬鹿らしくてな」
「小松さんにだけ興味あったみたいだけど」
「お前に話しかけたのがあの男だけだったからだ」
 実験をちゃんと実行していたわけね。。
「沙矢ちゃんだと……あの男」
「……呼び捨てられてたらもっと怒ったくせに」
「愚問だ」
「兄が欲しかったら言え。全部俺が引き受けよう」
 マンションの駐車場で車を止めた青は、
 そのまま車内のカーテンを閉めた。
 黒いカーテンの上、車内は防音が完璧なのだ。
 まさかこういう時の為なの?
「……お兄ちゃんが妹にこんなことしないでしょ」
 有無を言わさずワンピースの背中のジッパーが引き下ろされる。
「妹だったら何もできないな」
「どっちよ、もう」
 あっという間に全部脱がされ、座席のシートが倒された。
 青は上半身だけ脱いで覆いかぶさってきた。

「はぁ……っ」
 耳朶をきつく吸われ、膨らみを揉みしだかれている。
 私の足と足の間に自分の腰を割り込ませて、
 空いている手で背を抱きしめる。
 瞳を閉じて身を任せる。
 口づけを交わす。舌を縺れさせ吐息を奪い合う。
「……わざわざここでしなくてもいいのに」
 何も言わず青は愛撫を続ける。
 優しいけれど激しく彼は私を翻弄していった。
 今まで車の中でしたことなんてなかったのに。
 忘れたくても忘れられない想い出がまた一つできちゃった。
 ああ、浸っておこうなんて言わなければ良かったかも。



『わざわざここでしなくてもいいのに』
 沙矢の言葉にはっとした。
 これは嫉妬に駆られた独占欲。分かっているさ。
 あんな男達の目に沙矢を触れさせて、耐えられるわけがない。
 早く腕の中に閉じこめたかったんだ。
 あんな奴らの目の前から救い出して。
 それに、この車で思い出を作っておきたいみたいだったし、
 ちょうどいい機会だろう。
 十分潤っているのを確認し、ダッシュポケットから避妊具を取り出す。
 口の端で封を切って、一気に貫いた。
「あっ……っん」
 シートの上で髪を揺らして悶える姿が、欲情を高ぶらせる。
 膨らみを揉みながら、唇を合わせ、円運動をする。
「はあ……ん……っ」
 止め処ない啼き声が車内に響く。
 甘い声で誘う唇を再び塞いだ。
「誰にも渡さないから」
 耳元に息を吹きかけ、言葉を落す。
 沙矢のひざ裏をを抱え上げて律動を早める。
 より深い場所で繋がっているのを感じると何もかも満たされる。
「青……愛してる」
 睦言は熱に浮かされた一時の嘘ではなく本心だ。
「愛してるよ」
 呟いて無我夢中で沙矢を抱きしめた。
 合コンなんて馬鹿な集まりにいかせたのが間違いだったな。
 こんな所で抱くことになるなんて。
 狂う自分を今更押し隠すつもりも必要もないが、本能というのは恐ろしいと思った。



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