sweetdropー7−
それから、夏を過ごし、秋を越えて、冬が来た。
二人にとって二度目のクリスマス。
冬が来るまでキスをいっぱいした。
恥ずかしくなるくらい好きって言い合った。
私のボケに砌が顔を顰め、呆れたのも数が分からないくらい。
はは……何だか笑えてしまう。
ドタバタが尽きなかったもんね。
忍さんも相変わらずだったし。
彼には感謝してる。
あの時、砌ママにジュースはもういらないことを伝えてくれた
おかげで邪魔されずに色んな話できた。
話した後エアコンの風が涼しくて寝ちゃったんだけど。
何かあっという間の4ヶ月だったなあ。
すごい濃くって充実してたよね、砌。
一緒に図書館で勉強したり、忍さんと3人で遊んだり。
私達は新しい扉を開けようとしてる。
その先に何があるのかは分からないけれど、きっと悪いことばかりじゃない。
明梨は純真で天然で、何も知らなそうに見えて
ちゃんと知ってて理解しようと一生懸命で。
彼女を見ていると焦る自分が馬鹿らしく思えた。
そんな急がなくても結ばれることはできるのに。
気づいた時から自分が変わった気がする。
彼女との日々をただ大切に、ゆっくり前を向いて生きてきた。
周りがどうであろうと関係なかった。
俺達は俺たちなんだ。
いつしか恋人ができていた忍から、
本当は明梨のことを本気で好きだったことを聞かされた時は
少々驚いた。あの時の危機感を無視しなくて良かったと。
明梨はもしかしたら彼に奪われていたかもしれない。
こんな風に見つめ合える日も来なかったかもしれない。
気持ちが高まった熱っぽい瞳で互いを見つめ合える日なんて。
サラリ。伸びた明梨の髪が肩口で揺れた。
俺はそっと掬い上げ、キスをする。
明梨が小さく笑った。
「すごいキザ」
「うるさい」
笑いあいながら、口づける。
柔らかい髪を指先で梳くとさらさらと零れ落ちた。
「怖いことなんてないから。嫌だったら言えよな」
「うん」
キスを交す。
熱を確かめるみたいに舌を触れ合わせて。
明梨の温度と俺の温度を交差させる。
神経が溶ける。
ふわと漂う感覚。
「……ん」
瞳を閉じた明梨が頤を仰け反らせる。
俺達は、そのまま一緒にベッドに沈んでいった。
互いを隔てる境界線ともいうべきものを解く。
邪な気持ちじゃなく、純粋に結ばれたいと思っていた。
俺の首筋に明梨が腕を絡める。
こっちを見つめるその淡い眼差しを見下ろし、微笑む。
耳朶にそっと口づけると明梨の体が微かに反応した。
それから。
ゆっくりと時間をかけてお互いを見せ合い、確かめ合った。
こんなに、熱っぽい目で見つめる砌なんて初めて。
見つめられてるとすごくドキドキしてしまう。
優しく触れてくる指と唇から彼の想いが感じられて
瞳が潤んだ。嬉しくて。
何も怖くなんてないよ。砌だもん。
砌と一緒なら平気。
スピード遅いけど、相手を分かり合ってきたってことだしね。
不安なんて無くなったよ。
だからあなたと一つになれる瞬間が待ち遠しい。
もうすぐ私達付き合って2年なんだね。
ここからまた始めよう。2年目を無事迎えれるように。
また深いキスを交わした。
今までとは違うキスをして
砌との距離が近づいた。
視線が交わる。こくりと頷く。
瞳を閉じた次の瞬間、私の中で砌を感じた。
切ないくらいの痛みが体を襲う。
じわりと涙が溢れた。
砌が気づかうようにキスをしてくれ、肌を撫でる。
髪を払いのけ、額にもキス。
小さく震える体を砌が力強く抱きしめてくれる。
私、こんなにも砌が好きなんだ。
彼は私の事をこんなにも想ってくれてる。
砌の背中にしがみついて、微笑んだ。
彼も微笑み返す。
やがて砌は私の中で動き出した。
こちらの表情を伺いながら、とても優しい動作で。
温かくてどうしようもなくて包み込んでしまいたい気がして、
無意識に足を絡めていた。
以前の自分と違ってこんなにも変わった。
彼と共に、成長したんだ。
水の中を泳いでいる不思議な感覚。
どんどん波が押し寄せてくる。
ゆるやかに、そして激しく。
私は彼を受け止めた後、意識を手放していた。
強く絡め合わせた指先だけは手離さずに。
彼女の中から出て行きたくない。
わがままな感情が首を擡げていた。
こんな温かい場所知らなかった。
漂い始めたら最後、自分が止められなくなった。
彼女の瞳に涙の後が見える。
それを見ると切なくて……。
自分も何故か涙を零していた。
融ける意識。彼女を抱きしめながら墜ちてゆく。
眠りの底まで一緒に。
ぼんやりと目を覚ますと、すぐ隣には砌がいた。
腕枕されて彼に寄り添っていたみたい。
「おはよ」
「おはよう」
私から彼にキスした。
「……あかり!?」
驚いて目を瞠る彼に思わず笑ってしまった。
「すごいあったかいんだね、砌の腕の中って」
言いながらひしと抱きつく。
「知らなかったんだ?」
クスっと悪戯っぽく笑う砌に、頬が赤くなるのを感じた。
「嬉しいな。砌のこんなに近くにいるなんて」
「そっか」
「好きな人の隣で目覚めるって本当幸せ……」
私は瞳を閉じた
彼の唇が重なる。
「これから何度でもこんな機会はあるからな」
「そうだね」
繋いだ手の確かさが、夢じゃないって教えてくれる。
「ねえねえ見て!雪降ってるよ」
「ホワイトクリスマスか」
私はするりとシーツを被って窓辺に立つ。
「カーテン閉めてなかったんだな……」
砌の呟きに一気に羞恥が巻き起こる。音とか声とか
外に漏れちゃってたらどうしよう!嫌だ!
「きゃあああああ」
「心配しなくても、ここ誰も来ないだろ」
「そ、そうだけど」
ここは彼の叔父さん(年齢も含めおじさんって感じではないらしい)の別荘だ。
友達と出かけるとお母さんには嘘をつき、(たまにはいいよね)
砌ママは反対しなかったので、全部話した上で口止めしておいた。
「いい旅行になったね」
「しみじみ言うな」
「だってそう思うでしょ?」
「あの男には感謝しなくちゃだな」
「っていうか早く会わせてよー」
まだ会ったことないのよ?
「その内会わせてやってもいいけど好きになるなよ」
最後のところ、強調した!?
「当たり前じゃない。砌がいるのに」
「疑って悪かったが、気をつけろよ」
「心配しすぎ」
「まあ、気をつけとけ。お前なら彼女とも仲良くなれそうだ」
彼女って誰だろとか思ったけど楽しみはとっておくことにした。
「楽しみー」
笑いながら、ベッドに戻る。
「折角だからもう少し寝ようか」
「うわ……今の言い方って」
寝るが変な風に聞こえた。
「気のせいだ」
引き寄せられて、何度目か分からないキスを交わした。
ずっと一緒にいられますように。
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