Between the sheets



青は強いお酒に似てる。

免疫が無い人が、下手に飲めば大変なことになる。

・・・・・・強引なまでの強さで躰に巡り、酔わしてしまう純度の高いアルコールみたいな人だ。





シャカシャカシャカッ・・・!!
高く透明な音を立てて、シェイカーを振る青は凄く決まってる。
カッコいいだけじゃない。
いつもはクールな瞳に真剣な光を灯し、力強い律動を繰り返す姿は、
どこか愛し合うときの姿と被り、色っぽい。

・・・嫌だ・・私ったら・・

まだ時間は宵の口だというのに、何を考えてるというのだ。
自分の想像に羞恥を覚える。
視線を青に戻すと、いつの間にか彼はシェイカーからグラスにカクテルを注いでいた。
綺麗なグラスに注がれた液体は、蜜を思わす琥珀色で、それを持って沙矢の座るソファの隣に腰掛けた。

「それは何ていうカクテル?」
問いかけると、青は微笑む。
にやり、という形容ぴったりのそれに首を傾げた。

「何ていうと思う?」

「解らないから聞いてるんじゃない!」
からかうような気配に、少し憮然として言うと、今度は柔らかな笑顔を見せて言った。

「綺麗だと思わないか?」
グラスを掲げると、それは残照に照らされて鮮やかな黄金に輝いた。

「ええ・・」
素直に頷いて、琥珀色の液体を見ているうちに、どんな味がするのだろうかと思った。
アルコールに弱い彼女には、青の作るカクテルは強すぎるのだが、飲んでみたいという気分になる。
それを察したように、青が『飲むか?』とグラスを差し出してきたので、受け取って一口含む。

「美味しい・・」
キンっと冷えているのに、喉を落ちていく熱さは炎のようだ。
けれど喉ごしは柔らかく、そして甘い。
アルコール度数はかなり高い。
一口飲んだだけで、躰に心地よい痺れと熱が回ってくる。

「・・・・"Between the sheets"・・それがこのカクテルの名前だ」

「ビトウィーン・ザ・シーツ?」

「俺たちに相応しいカクテルだと思わないか?」
艶めいた声音で言われて、どきんと心臓が大きく跳ねた。
そして、今更のように名前の意味に思い当たる。

「シーツの間って・・・!!」
何て名前のカクテルなのだろう!?
実は青がからかっているのかと思い、軽く睨む。

「・・・何だ、俺がお前をからかうために嘘を言ったと思うのか?」
あっさり見透かされ、その上益々艶めいた気配を漂わせながら言われて、沙矢の頬に朱が奔る。

「顔が赤いぞ。一口飲んだだけで酔ったのか?」
うそぶいて言って、沙矢からグラスを取り、まるでジュースか
何かのように平然と喉にカクテルを流し込んだ。

「いくら私でも、一口で酔うわけないじゃない!」
ぷいっと、顔を背ける。それでも青の視線が自分に注がれているのが
はっきり解るのは、多分酒が入ったせいで皮膚感覚が敏感になっているからだ。

「沙矢」
青の声が、益々低くなる。
なのに声に宿る熱さと甘さは反比例して増している。
それだけで沙矢は酔いしれそうになる。
カクテルを一口飲んだだけなのに、酩酊度は深まるばかり。
甘い危険を予告するシグナルが沙矢の脳裏に響く。
けど、まだそれに抗しようとする、意地に似た気持ちが、どうにか振り返りたい衝動を抑えさせた。

「沙矢」
一層低い、夜の帳のような声。
沙矢の内(なか)で響くシグナルが限界値に達し・・・・そして、音を立てて崩れた。

「青・・・ずるい」
シャツのボタンをゆっくり解かれながら、沙矢は熱を抑えるような小さな囁きが漏れる。
しかし、どんな小さな囁きも、見逃す青ではなかった。

「ずるい?・・何が?」
耳元で囁き返す。
熱い吐息が沙矢の耳元を官能的にくすぐった。

「・・解ってるくせに・・」
耳元に舌を這わせられて、熱い感覚が沙矢を突き上げる。

「解らないな・・・言えよ」
肌蹴られた胸元の白さに、思わず目を奪われる。
数日前に自分がつけた紅い痕にすら、嫉妬したいような気になる。
そんな自分に苦笑しながら、薄くなりかけた痕をなぞって、再び鮮やかな色を刻んだ。

「っあああ!」
首筋から胸元に舌を甘く愛撫され、時折強く吸う度に、沙矢は甘い悲鳴を漏らす。
そんな彼女の肌のすべらかさや表情も愉しみながら、ゆっくりと奥深いところに侵略を進めていく。

「言えよ・・何がずるいんだ?」
衣服の上からそっと触れると、既に沙矢の中心は熱く熱を持ち、
溢れる熱は、流れとなって青の指を濡らす。

「こんなことされてるのに、言えるわけ無いじゃない!」
長く優美な指は、器用に衣服を剥がし、奥に辿り着く。

「こんなこと?」
平然とうそぶいて、殊更ゆっくりと指を這わせた。
酒で熱くなった躰と感覚は、じりじりと加えられる熱に、耐え切れないやるせなさを感じさせた。
気まぐれに玩ぶように、敏感な処を掠めさせて、
決して内(なか)には入り込まない意地悪な指の動かし方。
沙矢の息があがる。
抑えきれない熱と衝動が、凶暴なまでに体内に溢れて止まらない。

「青は・・青は声まで官能的過ぎるのよ・・逆らえないわ」
囁きと言うべきか、喘ぎというべきか・・・
青の与える快楽の奔流に掠れた声音で、答えを紡ぐ。
勿論その答えは青をひどく満足させた。

「よく言えた・・・褒美に本格的に"カクテル"を飲むとするか・・」
軽々と沙矢を横抱きにして、アルコールの味のする、甘いキスをする。
そのキスは、体内のアルコールより熱く、強く沙矢を痺れさす。


「カクテルは・・混ぜて作るものだろう?」
特にこの酒は、"Between the sheets"なのだから・・・シーツの間で作らなきゃな・・・・。
囁きは、沙矢の唇の中に消えた。
そして、青は寝室のドアを開く。
二つの違う『酒』が混ざり合うことで、美味なカクテルは生まれるのだから。
今宵も、シーツの狭間で甘くて強いカクテルが生まれる。





――――――Between the sheets・・・・



***************管理人による後書き****************************

ちひちゃんこと千尋さんから強奪しました頂きました。
きゃあああああっ!!(絶叫)
はあはあ。(鼻血)これが読んだ際の感想です。
ちひちゃん、ありがとうございます。
オリジ作品sinful〜をちひちゃん仕立てに魅力的に書いてくれて、
嬉しいです。これは言うならば私の作品の二次創作に当たるんでしょうか。
久々に青がかっこよくてドキドキしました。
何か変なこといってますが最近、私の彼の扱いは酷すぎるので
これ読んで反省しました。妄想掻き立てられてます。
ちひちゃんの青への愛を感じますね。はあvv艶やかで色っぽいです。
くうっ!(じたばた)
このお酒の名前素敵すぎ。飲んだことなくて知らないんですが、
名前だけでもう惚れてしまいますわ!
ありがとう、ちひちゃんvまたよろしくね(おい)

ではでは。2003.7.25UP








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