あの人を見たのは一瞬。

あの人に恋をしたのも一瞬。

あの人と一緒にいるのは……一生がいいな。
一瞬で抱いた恋心……一生輝かせていきたいの。
あの人の隣で……ずっと。



「咲人(さきと)先輩!」
姿を見つけた途端に走り出し、咲人先輩の腕に自分のを絡ませる。
「……オマエさぁ」
「逢夢(あみ)です。いい加減名前覚えてくださいよぉ〜」
チッチッと顔の前で指を左右に振りながら訴える。
「………………」
無言で嫌そうな顔をしている咲人先輩の意思を無視して話を続ける。
「次の授業でお菓子作るんですけど……食べてもらえます?」
「……イヤ」
「美味しいの作りますから、待っててくださいね!」
咲人先輩のコメントを無視して一方的に約束を取り付ける。
こうでもしないと、絶対帰っちゃうんだから。

咲人先輩って冷たそうに見えるけど、案外優しかったりする。
一方的に決めた事でも、守ってくれるし……。
2度目に会った時もそう……咲人先輩の優しさに触れた途端に恋してた。


初めて咲人先輩の姿を見たのは校内で。
2度目に見たのが、たまたま1人で行った喫茶店で。
家にいても勉強しないからといって、学校帰りにそのまま学校近くの喫茶店に直行した。
そして、ココアとクッキーを注文して教科書と格闘していた時……。
少し遠くから子どもの泣き声が聞こえた。
でも……何かおかしい。
子どもの泣き声なんて、広い場所でも大きく響くのに。
……微妙に聞こえてくるくらいの声。
特に、今日は雨が降ってるからかなぁ……雨音の方が少し大きいかも……あ、れ?
ふっと外に視線を向けると……女の子がしゃがみ込んでいるのがわかった。
どんどん雨音が強くなる中、女の子は雨に降られてもその場に留まったまま。
あ……泣き声はこの子のだ。
握っていたシャープをテーブルに置き、脱いでいたパーカーを片手に立ち上がろうとした……。

その途端、バタンと少し派手な扉の開く音と共に冷風が喫茶店内に広がる。
そして……雨に濡れた目の前のガラス越しには出て行った人と女の子の姿。
どうするんだろ……ちょっと心配になって外の様子を窺う。
すると……その人は女の子を抱き上げ、喫茶店内へと戻ってきた。

店員さんだった……出て行ったのは。
ポタポタと雫が落ちる前髪をかきあげるその姿……あぁ、先輩だ。
やっと気付いた。
校内で見かけた事がある……ここでバイトしてたんだ。
ようやく合点がいき、女の子を見る。
先輩の足元で今も泣きじゃくる女の子。
着ていたカーディガンはもちろん、中のワンピースまで濡れちゃってる。
早く乾かさないと……風邪引いたら大変だわ。
慌てて、少し高さのある椅子から降りて女の子に駆け寄る。

「大丈夫?」
女の子の前にしゃがみ込み、優しく語り掛ける。
きょとんと涙をいっぱい溜めた瞳であたしを見ていた女の子。
「風邪引いちゃうから……これ着ててね」
女の子が着ていたカーディガンを脱がせ、代わりにあたしのパーカーを着せる。
少しぶかぶかだけど……風邪引くよりかはマシ。
でも、この脱がせたカーディガンはどうしよ……?
水分をたっぷり含んで重みが増したカーディガンを持ちながら立ち上がろうとした時。
「……それ、貸して」
「先輩……」
「やっぱり後輩だったんだな……ほら、女の子もこっちおいで」
ポンポンと優しい手つきで女の子の頭を撫で、椅子に座らせてあげていた先輩。
そしてホットココアを作ってあげていた。

後に、その女の子は迷子になっていたらしく……女の子は無事に両親の元に帰っていった。



……やっぱ、アレがそもそものキッカケだよね。
あの時の女の子には感謝感謝。
だって……あの優しさに触れなければ好きにもなってなかったかもしれない。
ただの先輩・後輩のままで……過ごしていたはず。
それを考えたら……女の子はキューピットのように思える。

そして……あの日からすぐに行動を開始した。
名前もクラスも……調べた。
咲人先輩も……あたしの名前覚えてる……はずだし。
これに関してはちょっと不安だけど。



「まだ待ってるかなぁ〜……」
予想外に難航したお菓子作り。
今回はリンゴのカップケーキを作ったけど……オーブンの機嫌が悪かったらしく、なかなか焼きあがらない。
で……片付けなどで時間はどんどん進んでいき……夕焼けどころか太陽が姿を消しそうな時間になってしまった。
パタパタと長い廊下を走り、咲人先輩のクラスへと急ぐ。
こんな時間まで待っててくれてるかなぁ……咲人先輩が優しい人でも不安になる。
今いる生徒っていえば、部活のある人くらいしかいない。
……咲人先輩…………。
ガラッと音を立てて教室の扉を開ける。
すると……窓際の机に腰かけ、こちらを振り返った人が。

「咲人先輩……」
腕組みして窓から見える部活の様子を見ていたらしい。
「こんな時間まで待ってるなんて……思ってなかったです」
思わず本音がポロリと零れる。
「待ってろって言ったのオマエだろ?」
「それはそうですけど……」
テクテクと机と机の間を縫うように咲人先輩に近づく。
「で、今回のは何?」
「リンゴのカップケーキです……でも、咲人先輩?」
あと一歩で咲人先輩の目の前に立つ時に……ふと立ち止まる。
「なんで、そんなに優しいですか?」
あたしの言葉にハッとしたように目を見開く咲人先輩。

だって……イヤなら跳ね除けちゃえばいいのに。
付き纏うなって言えばいいのに。
邪魔だって……もう来るなって……。
なのに……なんで、そんなに優しいの?

「……オマエには負けたよ」
ふっと苦笑を浮かべる咲人先輩。
その意図に読めず、疑問符だけが頭に浮かぶ。
「あの時の事、覚えてるんだよ……つーか、忘れられない」
「……なんで?」
忘れられない……って、どうして?
忘れたくても出来ないって事でしょ?
「オマエ、女の子に歩み寄ったじゃん……他の客は無関心だったのに」
そうだ……あの場所には少ないながらも何人かお客はいた。
だけど、誰一人として女の子に関心を持たなかった。
「オマエだけは、女の子に服着せたり話しかけたり……接してたじゃん」
「そうだけど……でも、それは」
「当たり前の優しさってイマドキ持ってるヤツいないからな」
それは多分、バイトを通して色々見てきた咲人先輩だから言えるセリフ。
あたしはバイト経験なんてないから……よくはわからないけど。
「だから……オマエを邪険に出来なかったんだと思う」

スッと腰かけていた机から立ち上がり、あたしの方に歩み出る。
そして……あたしの腕の中にあったカップケーキを取り出し、横の机に置く。
「咲人先輩……?」
「ホント、逢夢の熱意には負けたよ」
クスッと優しく微笑んだ咲人先輩が、あたしの頬に手を当てた。

初めて……名前で呼んでくれた……。
たったそれだけで、目頭が熱くなる。
「何、泣いてんの?」
「だ、だって」
頬に流れた涙を拭おうと手を上げようとした時……その手を咲人先輩によって止められた。
そして……咲人先輩の唇が頬を這った……。


やっぱり、あの時に泣いていた女の子はキューピットだったのかも。
咲人先輩の胸に手を当て、唇が重なった瞬間に思い浮かんだのは……。
女の子の微笑みだったから――


カーネリアン……好奇心を刺激して積極性を高め、行動へと駆り立てる。




沙羅さんより相互リンク記念小説を頂きました。
すっごいかわいいですよどうしましょう!
咲人先輩、かっこいいです。
子供に優しくしていたのを見て忘れられなくなったなんて、ロマンチックv 逢夢ちゃんと咲人先輩はきっと幸せになったことでしょう。
こんな出会いかたしてみたいなあ。
ほんわかあったかい話に癒された雛瀬です。
素敵なお話をありがとうございました。
カーネリアンって石気になる!(爆)
沙羅さんのサイトは↓よりどうぞ。

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