が唐突に「船旅したくない?」と電話を掛けてきたのが昨夜。したくないと答えたが、早朝からチャイムは鳴らす電話は掛ける、挙句大声で何度も何度も人の名前を呼ぶので黙らせるために玄関に出たところを肯定と取られ、出掛ける準備をさせられた。どこへ行くのかと訊けばフェリーに乗りたいから松山へ遊びに行こうよとのたまった。
「断る」
「え、なんで? 楽しいよ」
「我にとっては楽しくもない。人の家で勝手に冷蔵庫を開けるなと躾けられなかったか、下賎な」
「毛利君料理しないよね。お惣菜買ってばかりだと体によくないよ、ただでさえ顔色あんまりよくないんだし」
「必要な栄養は取っている。いらぬ世話を焼くな」
「サプリじゃん。ダメだって料理で取ろうよ。じゃなくて! 最近フェリーって使わないよね、なんかワクワクしない?」
「せぬ。船など島へ渡るのに使っておろう」
「違うの、五人乗りのボートとかちっちゃい客船じゃなくって車も載せられるようなジャンボフェリーってロマンじゃない?」
「思わぬ。一人で行け」
 遠回しな誘いでは無駄だとようやく覚ったか、は数度瞬いてから俯いた。むう、と口を尖らせてから顔を上げてこちらを見る。
「あ、あの、あのね。あたし毛利君と行きたい! 一緒に遊びに行ってください!」
 言い終えてから見る間に頬を染め、瞳を逸らしたいのを耐えているのかほんの僅か潤んでいる。ひとまずは許してやろうと口を開いた。
「――よかろう。付き合ってやる」
「ありがと毛利君!」
 の表情がぱっと明るくなって大きな瞳を嬉しそうに細める。こちらの些細な反応ひとつひとつに一喜一憂する様が何ともいえず楽しいのだ、と思うけれど決して表にはしない。知られてしまっては楽しみが半減してしまう。
「調べておるのだろうな」
「うん、もちろん! 行きはね、呉を11時、松山に12時50分。そんなに掛からないんだって、驚き」
「帰りはどうするのだ」
「えっとね……。終便が21時半だからその1便前、19時半発はどうかなって思うの」
「道後は行かぬのか」
「行きたいなって思って調べたらね、お風呂だけでも入れるみたい」
「わざわざ四国へ行っておきながら日帰りか、程の知れた輩の考えそうなことよ」
「も、毛利君?」
 困惑しているに向かって、威丈高な態度を崩さぬまま呆れたように溜息を吐く。口端だけに笑みをのせて視線はカレンダーに遣す。視界の隅でも同様に視線を動かしたのを見て取れば、あっと小さな声が上がった。そのままバタバタと慌てて玄関に向かいながら早口で捲し立てる。
「ごめんね毛利君やっぱあたし一人でフェリーに乗ってくる! お土産に坊ちゃん団子買ってくるから月曜日に持ってくるねそれじゃお邪魔しました!」
 靴を履いて後ろ手にドアノブを回し、次の瞬間には出ていけるようなに、ことさら莞爾と微笑んでみせた。
「それは残念だ。たまには二人きりで旅行もいいものだと思ったのだが。まあよい、土産は要らぬ」
 帰るなら帰れ、我はもう一度眠る、無表情にそう言えば途端に音が出そうなほど顔を赤らめた。言葉が見つからないのか口を小さく開閉するだけで何も言わない。状況を判断できるようになって一番に出てくる言葉はおそらく、罵倒と肯定だ。
 ぱちん、と両手で頬を押さえたは嬉しいのか悔しいのかなんとも言えないような表情を浮かべて、言った。
「毛利君のいじわる。あたし、一緒に、行きます」
 ありがと、と感謝を述べて気の抜けたようにふにゃりと目尻を緩ませるのが、思っていた以上に可愛らしかった。









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2009/05/20
男の子にはリードしてほしいなって思ってあんまりはっきりものをいうタイプじゃない女の子と、はっきり言うまで話を聞いてやらない毛利と。
毛利は何事にも駆け引きを楽しむタイプなんじゃなかろうかと思います。その上、絶妙な塩梅で自分の思い通りにするんじゃないでしょうか。イメージですが。
言葉遣いが非常に難しいです……。あんまり自分では操作しないので今一つ判りかねます。
よしわたり



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