・テーマは佐助と主人公、二人の自己の摸索です。
話の中で深刻になっているのは佐助だけですが、主人公も悩んでいます。佐助と出会ったこと、段々と打ち解けていくことでこれまで目を逸らし続けていたことに向き合っていくことになります。


・逆トリップなのですが、少し趣を異にしています。
私自身は詳しくないのですが、量子力学的多世界多元宇宙論を想定しています。wikipediaの「エヴェレットの多世界解釈」のページを読んでいただければおおよそ理解できるかと思います。
主人公の世界と佐助の世界は重なり合っている状態です。どちらかの分離によって生じたわけでも、どちらかが正しいわけでもありません。ただし、佐助と主人公をはじめとして、話中の登場人物はそれを認識することはありません。読者のみがそれを知りえるのです。
佐助が同一時間上に複数の自己が存在することに悩み苦しんでいるのは、その世界の重なりによるものです。この世界の重なり合わせは収束しません。よって、佐助は二つの世界における自己の乖離にさらに悩まされていくこととなります。そのため、いずれ収束を迎えなければなりません。それは話の中で述べていきます。


・テーマとは別に、阪神・淡路大震災を背景に置きました。
軽々しく取り扱うべきではない問題であること、今現在も苦しんでいる被災者の方々がいらっしゃることは承知しております。私は幸いにして被災せず、親類縁者・友人知人にいたるまで全員無事でした。そのような人間がフィクションとはいえ、話に出していいものか、随分と悩みました。
あの震災で建物や道路は倒壊したり使えなくなったりしました。多くの人が亡くなりました。多くの教訓を学びました。自然の恐ろしさを目の当たりにしました。日本は火山や地震、台風といった自然災害が特に多い国ですが、あれほどの規模の災害を私が身近に感じたのは初めてでした。雲仙岳の噴火、奥尻島の津波の時は私はまだ幼く、それがどれほど恐ろしいものか理解が及びませんでした。
今、震災の爪跡はほとんど残っていないほどにまで街も人々も復興を遂げました。それでも忘れてはならない出来事です。
過去を見つめ、学ぶことによって未来に活かす。そのための最良の例だと判断しまして、話に出しました。
主人公が異邦人である佐助を助け、シェアを許しているのは彼女にそれなりの背景があってのことだと説得力を持たせるためだと言ってしまえばそれまでです。ですが、フィクションでも生きている人間として話の中に存在しているからには、彼女にも人生があります。見ず知らずの死にかかった人間を助けるようなことをするくせに、簡単に心の内を明かすタイプではありません。それはなぜか。理由があるからです。


・被災だけではない過去を主人公は持っています。
自己の確立、死生観というようなものは一人一人違っていて当然です。私は書き手として思想や観念を押しつけることはしません。こういう観点もある、その一つを提示するだけにすぎません。この話を読むことでそういったものを鵜呑みにするのではなく、自ら考えてみてください。
「私」とは何か。自己の境界はどこなのか。他者の死、自分の死について。決して堅くも重苦しくもなく、日常に生きていてふと疑問に思ってもいいことなのではないでしょうか。考え方の違う友達、教師、上司、部下。否定から入らず、疑問を持ってみると耳に痛かったことが案外そうでもなかったということもあるでしょう。
死は誰だって恐ろしいけれど、誰にも訪れるものです。悲しい、不安、恐ろしい、タブーである。そういったマイナスの思考から一歩踏み出してみるのもひとつの経験ではないかと思います。


・この話はフィクションです。
話中で佐助が戸籍と携帯電話の取得をしましたが、現実にはそう簡単にできるものではありません。私の調査、知識不足によって混乱を招くような表現をしてしまっています。申し訳ありません。いずれはきちんと調べて書き直しをします。
また、佐助はアルバイトをしている設定ですが、話でも出てくる通り騙しだまし日常生活を送っている佐助にアルバイトが可能なのか、という疑問も生じてきます。そのあたりも一度全て書き終えてからきちんと思案します。


・話が進むにつれ、佐助はある病気に特徴的な症状をみせるようになります。
居眠り病ともいわれる、ナルコレプシー(Narcolepsy)の主徴である睡眠発作、就眠幻覚を患います。結果的に佐助はナルコレプシーではないのですが、収束への予兆として「眠り」を鍵としているこの話に適していると思い、それらしい描写をしています。
ナルコレプシーは主に発現する症状はわかっているものの、明確な原因はまだわかっていません。主徴である睡眠発作が試験や会議といった緊張を伴う場面で緊張が緩んだ時に発症するため、病気であることを見逃され、診断が遅れてしまうことがあるそうです。
災害と同じく、病気も軽々しく話に使ってよいものではないことは充分に理解しています。話に出すことで、現在治療中の方、または身近に同病の方がいらっしゃる方は不愉快に思われる箇所があるかもしれません。また、知らない方には間違った知識を与えてしまいかねません。ですので、数冊ではありますが医学書を引き、きちんと自分の中で理解をした上で書いていますが、もしおかしな点がございましたら、遠慮なくご指摘ください。


注意事項は随時増えていきます。
ここまで目を通してくださってありがとうございました。


資料・参考文献
講談社、(1996)、『家庭医学大辞典(第二版) マイドクター』、pp.1497-1498、講談社
小学館・家庭医学館編集委員会(編)、(1999)、『家庭医学館 ホーム・メディカ』、pp.1049-1050、小学館
杉本恒明・小俣政男・水野美邦(総編集)、『内科学(第八版)』、pp.2129-2130、朝倉書店
松村明・山口明穂・和田利政(編)、(1994)、『旺文社 古語辞典(第八版)』、旺文社




2010/04/12
2010/06/06 加筆
よしわたり




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