スーパーから出たら、雨が降っていた。
「あちゃー、降らないって言ってたのにね」
の隣で佐助が困ったねえ、と呟いている。天気予報だと一日晴れだったから二人とも傘は持ってきていない。ザアザアと降る雨は二人と同じように軒下で溜息を吐く人達なんて考えもしない。
「どうしよう?」
「んー……止むまで待つ?」
「止みそうだと思う?」
西の空を見た佐助は苦笑い。
「本降りにならないうちに走って帰る?」
「もう充分本降りだよ」
どうしようね、と再びがこぼして、佐助はうん、と一人頷いた。両手に提げたエコバッグを揺らしてを見る。
「ちょっとこれ持っててくれる? 重くて悪いけど。傘買ってくる」
「じゃあ私も」
「いいからいいから!」
に半ば荷物を押しつけるようにしてなぜか笑顔の佐助はスーパーへ戻っていった。自分ばっかりずるい、とが声を上げた時にはもう、佐助は中に入っていた。
「いやー、俺様の夢だったんだよねー! ちゃんと相合傘!」
にっこにこと締まりのない顔をした佐助と、いろんな感情が交じって複雑な表情のとが一つ傘の下。
「ほらちゃんもっと寄って? 濡れちゃうでしょ」
俺様両手ふさがってるから抱き寄せらんないし、と唇を尖らせる佐助に少しだけ内側に入る。時々すれ違う人の視線が微笑ましかったり突き刺さったり、いろんな意味で、痛い。
「こ、高校生じゃあるまいし……」
「高校生なら許されんの? じゃあもっかい高校生やり直す?」
「そういうわけじゃ……」
溜息雑じりに反論しようとした視界に嬉しそうに笑う佐助が映って、は思わず口を噤んだ。
「そしたら、俺様入学初日にちゃんに告白しにいく。他の女の子なんて目もくれないで。高校生のうちにしたかったあれやこれ、いーっぱいちゃんと一緒にやりたいな。きっと楽しいぜー! 運動部に入った俺様のマネージャーしてくれるとか? 文化部で二人同じ作業したりとか! あ、クラスが一緒になったら当然隣の席は死守しないと。忘れ物したら貸し借りしあって、昼休みには弁当一緒に食べて。放課後デートはかすがと旦那の邪魔に注意、ってな! 青春ー! ってことを思いっきりやりたい!」
佐助も照れくさいのか、前を向いたまま。その耳が赤くなっているのに気付いたも、急に顔に熱が集まってきたようだった。唇を噛みしめてみたり目をきょろきょろと動かしてみたり、深呼吸してみたりするけど効果はなかった。
「佐助、思いっきり恥ずかしいこと言うね」
「……勢いって大事だと思わない?」
あと雰囲気と。そう言ってへらりと笑いかけてきた佐助の、傘を持つ腕には手を回す。途端にびくりとする佐助。どことなく視線を合わせづらい二人。へへ、と緩みっぱなしの表情で佐助が言った。
「なんか、こういうのもいいね」
「青春、まだ遅くないと思わない?」
「うん」
くすくすと楽しげに相合傘で歩く二人の背後、雨の止んだ夕焼け空にうっすらと虹が架かっていた。
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2010/07/16
二人で夕飯のお買いものです。佐助は真田の分も作らなけらばならないので大量に買い込み。
書いていて何度も目を逸らしそうになりました。たったこれだけで。こういうの本気で苦手です。うわあああ……ムズムズする!
読む分にはこんな感じのって大好きなんですけど、書く分には……。
よしわたり