「先生! よくわからない人が勝手に上がって……!」
「おい! いるか!」
 それまで静かだった空間がにわかに喧しくなる。弟子たちの戸惑いの視線を受けては肩を落とした。
「客人が来たようだから今日はここまで。続きは明日にしよう」
! てめえに用がある!」
「勝手に上がらないでくださいよー!」
「わかっているさ、元親。まあ座って待て。――この男は私の客だよ、気にしなくていい」
「先生……」
 納得のいかない様子の弟子達をなんとか宥めすかして帰し、は紙が広がった部屋を片付ける。投げて寄越された煎餅座布団を尻に敷き、元親はぐるりと部屋に視線を巡らせる。元親も多少は理解できる算術の式から高度で複雑なものまで。この女の頭の中はどうなっているのか考えるのはとうの昔に諦めていた。その才能を長曾我部のために貸してくれるというならそれでいい。

 一通り片付けを終えたのか、文机に肘をついたが半眼で元親を見ながら言う。
「用件は先の文の通りかい?」
「……ああ。火器はサヤカ……雑賀の許へ使いをやった。あんたには機巧の設計をまた頼みたい」
「以前私が設計してやったものをこれ以上ないほど悪趣味に改造したのはどこの誰だったかな? 私の持つ! 算術の全てをして! 美しくかつ実用的に設計してやったのを! かくも悪趣味極まりないガラクタにしてくれたのは!!」
 ドン、との握り拳が机を叩く。うすら笑いを浮かべたその背後に鬼の形相を見たような気がして元親はぶるりと首を振るう。額を流れた冷や汗を拭ってなんとか落ち着かせようと両手の平を前に突き出した。
「わ、悪かった! あれはすまなかった! ちいとばかり魔が差しちまってよう……」
「それで済むとでも思っているのかな? 私ほどの算家はこの土佐、いや四国には他にいないだろうねえ。そうだ、毛利殿のところへでも行ってみよう。使える駒なら存外良い扱いをしてくれるやもしれないからね」
「ま、待て! お前の頭を毛利にくれてやるわけにゃいかねえ! どうしてもってんならこの俺を倒してから行きやがれ!」
 片膝を立てて威勢よく啖呵を切った元親に冷やかな一瞥をくれて、は苦笑した。
「土佐の国主は元親、あなただ。土佐の領民たる私はあなたに従うよ。先の奇襲による軍の壊滅、この私の耳にも届いている」
 呆気にとられた顔をした元親は、と目を合わせてから少し首を垂れた。
「……頼む」
 の才を仇討ちのための道具として使うのだと割り切っているのならば、元親は一介の算家のに頭を下げないだろう。そういう男だからこそ、も手を差し伸べるのかもしれなかった。

「さあて、今度はどんなものを造ろうか」
 くるり、の手の中で細い筆が回る。ざっと広げられた大きな紙は白く、ここになんだって描いていけるようだった。にかっと隻眼を輝かせた元親は欲しいものを訊ねられた子供のように答えるのだった。
「船だな! 水陸両用の船だ!」
「面白い発想だね、それから?」
 ぱっと顔を上げたも興味津々に頷く。元親の言葉を端的に記していく白紙の上に試作案が定まるのは、もう少し後のこと。









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2010/08/31
アレがロマンだというのはわかる。が、デザインだけは理解できない。なんだその鬼瓦みたいな顔は。帆を張る必要はあるのか。足のつき方もおかしい。総合的にアニキはデザインセンスゼロだなと思いました。
もっとcoolに行こうぜ! ……いや、やっぱりそのままでいいです。
よしわたり



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