てやっ、と目の前にある背中をグーで殴ってみた。もちろん、本気じゃない。硬い筋肉のついた背中をした人は私の攻撃に振り返ると、「何?」といったように首を傾げた。
「え、と。なんか殴りたかったから?」
特に意味もなかったのでそう答えると、ますます訳が分からないと口をへの字に曲げられた。それが余計に悔しくて、ボクシングっぽいポーズで彼の前に立つ。鍛えられた腹筋めがけてシュッシュッと口で言いながらパンチを繰り出した。
「ワンツーパンチ!」
ジャブ、ジャブ、ストレート。全く動じる様子もない相手に、なんだか気分がよくなってきた。ジャブ、と見せかけて。
「アッパー!」
あごを狙った攻撃は、呆れた表情を浮かべた彼の手によってあっさり止められてしまった。ぶう、と口を尖らせて睨み上げる。
「………………」
言外にバカなことやってんじゃないよ、とたしなめられた。最初は全然読み取れなかった言葉を、時々わかるようになったのが嬉しい。だから思わず笑ってしまった。ポン、と私の頭に手を置いて歩き出した彼の顔。
「!」
一瞬だけ笑った! 追いかけてって覗き込んだ時にはもう無表情に戻っていたけど。私はこの、皆が恐れる赤い髪をした忍の人が、ちっとも怖くない。もっと仲良くなっていろんな表情が見れたり、会話ができたらいいなあと思う。
「風魔さん」
話しかけるときちんと私を見てくれる。えへへ、と緩む頬。
「好きです」
「わかってる」というように、ぽんぽんと軽く頭を撫でてくれるのも、照れ隠しにすぐに消えてしまうのも。好きで好きでたまらない!
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2010/11/11
短っ!
風魔をポカポカできたから満足です。
よしわたり