新歓コンパに来い来いとあちこちから声がかかるものだから無駄に日頃愛想を振りまいて人脈を広げている自分は断るわけにもいかず、毎日のように飲み屋をはしごして同居人と顔を合わせることもほとんどなかった一週間。週末はどこもかしこも徹夜で騒ごうとするから、さすがに肝臓がヤバイんでと断って帰らせてもらった。手帳にびっしり書き込まれた飲みの予定を見せたのが功を奏したらしい。まあ、水増しはしてあるけど。
 日付が変わる前に家に帰れたの何日ぶりだっけ、と感傷に浸りながら鍵を挿し、玄関のドアを開けた。
「ただいま……」
 このままベッドにもぐり込みたい。が、そんなことをしては二度と同居人に注意をできなくなる。やってみせ言ってきかせてさせてみせ、の精神だ。重い頭を壁にもたれさせつつ靴を脱ぎ、のたりと視線を上げたところでおかしなものを見た。
「……お、おかえり」
 明らかに動揺しまくったちゃんが目を泳がせながら廊下に立っている。あれ、俺様今日帰れないかもってちゃんと伝えたよねしかもここ俺ん家だよねなんでいるの、と疑問を浮かべる前に彼女はリビングに消えた。
「真田君っ佐助今日は帰ってこないんじゃなかったの!?」
「そうでござるが……」
「帰ってきちゃったよ! どうしようなんて言い訳しよう!」
 よく見れば玄関には数人分の靴、漂うアルコール臭、ひそめられてはいるけど室内からは確かな気配。一体何やってるの。ああもう、酔いも醒めたよ。


「言い訳は聞きません。人ん家で騒ぐなら家主の了承得るのが一般常識です」
 学生の一人暮らしばかりだ、少しでも広い場所で集まるのは理解できるしそれが自分の家なのだというのも知っている。だが、最低限一言断りは入れてほしい。常識が欠落しているなら叩きこんでやるまでだ。特にそこの伊達。
「真田がいいって言ったんだぜ」
「ここの家主は旦那じゃありません」
「なんと!」
「白々しいよ旦那。あと知らない女の子勝手に入れるの止めてくんない割とマジで。ここ男の子の家なんです」
 さも今知りました、みたいな態度を取った旦那を睨む。本気で怒っているのが判ったのかすぐに正座に戻った。そして、見知らぬ顔に溜息を吐いた。
「雑賀孫市ってんだ! よろしくな」
「からすめ、お前が言うな」
「いって!」
「慶次……いい加減懲りないのか」
「はいそこ勝手に話進めない。雑賀さん? こんなのと仲良くしてていいの?」
 慶次とかすがのやりとりは今更だけど、女の子も既に馴染んでいるような感じがして微妙に顔が引きつった。こんなの、とは自分も含まれるここにいる全員。どうしようもない奴らのこと。無駄だと判っていても訊かないわけにはいかないでしょうが。すっと目を細めた雑賀さんはフフ、と含んだように笑うだけで何も言わない。強敵だ。
 隅の方では酒盛りが再開していた。全員正座させていたはずなのに抜け目のない。
「こんなのってなんだおい、猿飛は失礼な奴だな」
「なんで私に言うの、長曾我部君は」
「貴様こそ何故我に言う」
 首を傾げてなんとなく、と声を揃えたちゃんと長曾我部が爆笑する。酔うとなんか意気投合する二人が嫌い。特に長曾我部。あと毛利はこっち見ながら言うな。
「もうヤダ、皆で出てってくんない?」
 さめざめと両手で顔を覆って泣き真似をしながら追い払う仕草をした。旦那とちゃんだけ傷付いた顔したけど残りの奴らは無視して飲み食いしだした。本気で追い出しにかかろうとすれば苦笑いを浮かべた慶次がコップに入ったお茶を差し出してきたので、仕方なく受け取って話を聞いてやることにする。
「まあまあ。今日は孫市と鶴姫ちゃんの歓迎会してたんだよ。未成年がいるから居酒屋入れないだろ? だからファミレスでやってたんだけど、鶴姫ちゃんは門限があるから風魔が送ってってくれてさ。その時にお開きにしとけばよかったんだけど、物足りないって言っちゃって」
「ちょっと待って、歓迎会ってこのメンツで?」
 風魔もいたなら集まれる全員だ。驚いて問えば慶次はきょとんとした。
「そうだよ。言わなかったっけ?」
「言われてない」
 初耳だ。今日の予定を訊かれた覚えはあるが、新歓が入っていたからそれを言った。事情を説明してくれていれば友人もいない新歓なんて断っていたのに。じっとりと恨みを込めた視線で先を催促する。
「で、そうしたら『佐助はおらぬが某がなんとかする!』って幸村が。今日は佐助いないから頑張ってくれてたんだ」
 だから怒らないでやってくれよ、と両手を合わせて慶次は頭を下げる。今までの話を聞いていたのか、近くにいたかすががちらりとこっちを見てすぐに興味なさげにテーブルに肘をついた。
「真田はや私が手伝うと言っても頑として聞かない。料理もするし皿洗いも率先してやっている」
 何故か旦那をかばっている二人だけど、話が少しおかしい。ちょっと冷静になろうとお茶を飲む。
「俺が怒ってるのは旦那にじゃないぜ?」
「え?」
「違うのか?」
 本気で不思議そうな二人に目の前が真っ白になりそうだ。









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2011/05/17
きっとこのあと佐助は女の子の膝に寄っていってぐずぐず言う。そんで毛利が空気読んで一同引きつれて帰る。その後メールで貸し一回ってなんでか女の子の方に来て真っ青になる。
みんなアホなんですという話。
よしわたり



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