坂の尾道 2010/03/16(火)


もはや一年以上前になってしまい申した……。
前日とはうって変わって晴天の春らしいお天気。歩くのも楽しみです。
尾道といえば坂と文学の町。私の中では原田知世版『時をかける少女』の町です。どんなところだろうと福山から山陽本線の鈍行に揺られて尾道駅に到着。正面にはすぐ向島があって、背後は緩い丘に家が並んでいます。


よーし歩くぞー! 古寺巡りの看板が出ていたので、それに沿ってうろうろすることにしました。宗派がいろいろでそれもまたおもしろそう。
人慣れした三毛。ふてぶてしい。


うっは! こういうところを上り下りします。ワクワクが止まらないぜー!


古い井戸。下からだけでなく、ここからも汲み上げられたんでしょうか。


石門がお出迎えの持光寺。平日でひとが少ないせいもあってか、お寺は掃除の人がいればいい方でほとんど無人でした。別にいいんだ、由緒はこうやって看板立ってるから……。


左のが本堂ですね。でも右側の建物は鈴があるから神社っぽい?



これはなんぞな……。鞆の浦でも同じものを見た。ネコよけ? 泥棒よけ? 昔の民家にはこういうのあったと父の証言を得ましたが用途は不明のまま。


白いモクレンがきれいです。


つぎのお寺を目指しましょう。
わかりにくいですが、クレーンがあるのは向島で、間に尾道水道が通っています。


日当たりもいいし天気もいいし、いたるところに満開の花が。石垣から生えるのなんて楽勝だぜといわんばかり。
春の陽気に誘われて、トカゲもちょろりと顔を出す。




昔の洗い場ですね。さすがに今は使われていないようですが、古い町なのでところどころでこういった昔の生活の場を見かけました。


はいはい石垣石垣。角度といい処理といい……たまんないね! 隙間をコンクリで埋めていないこと、角と内側で組み方が異なること、削りに機械の跡が見られないことからそれなりに古いものだと思われます。


比較的新しい石垣はこういうものだ。
可憐な白い花。植物の名前もどんどん忘れてしまったので、いつか図鑑を買おうとたくらんでいます。ごついやつ。


のどかだなあとニコニコしながら上っていきますよ。


ホトケノザくらいはわかる。


廃墟とまではいかなくても、打ち捨てられた人家はかつてあった生活感を想像させられてもの悲しくなります。それが魅力なのかな。



これは卒業式とかのでかい生け花でよく見る……!


海福寺。このあたりも河野・村上が強かったから所縁があって寺紋が折敷三文字なのでしょうか。
三ツ首様は撮ってません。忘れていました。義賊が死んでも人々の病を癒すなんてイイハナシダナー。



ちっちゃいポンポンした花がかわいい。


お次は光明寺。三つ巴はよくある寺紋ですね。鬼瓦も好きなんだ……。



ここの境内には尾道市の天然記念物、蟠龍(ばんりょう)の松があります。でかい。古い。龍みたい。
蟠龍とは、とぐろを巻いた龍という意味だそうです。たしかに、見ようによってはそう見えます。樹齢はどのくらいなんだろう。



古さの中に新しさ。新しいお家は珍しかったです。


うねうねと続く坂道と階段です。お年寄りが普通にヒョイヒョイと上り下りしているのですよ。強い。


吉備津彦神社。神紋は五瓜。ベッチャー祭なる奇祭が毎年11月3日に行われます。お面を被った氏子が子供を追いかけまわして泣かせるらしい。怖い。



宝土寺。立ち葵にちょっとびっくり。これ、お寺じゃなくて自治会の集会所ですといっても通用するんじゃ……といらぬ心配をしてしまう。



こ、これは……! 備前の大甕じゃないか! ぶさいくな形がたまりませんなあ。
住職さんが趣味で陶芸をしているらしく、ご自由にご覧くださいと離れを開放していたのでちょろっと覗かせてもらいました。……よしあしはわからん。


線路を挟んで坂と町に分かれているので、一旦下りてきました。白い花は太陽光で色が飛ぶので、見たまま写らなくて苦労します。


ムラサキカタバミ、……?、ボケ。春ですなあ、春ですねえ。



また坂道を上っていって、志賀直哉旧居へ行きました。
1912年、父親と喧嘩したり都会が嫌になったりで尾道に移り住んだはいいものの、三軒長屋の一室で見晴らしはいいが、ガスは通っていないし畳は古いしで都会っ子志賀直哉は最初苦労したそうです。それでも暮らすうちにいいところだと実感して、友人を呼ぶこともあったとか。尾道を舞台にした作品に、「清兵衛と瓢箪」、「児を盗む話」、「暗夜行路」があります。



他に誰もいなかったので係のおじいさんがはっちゃけてくれました。そんな感じの説明をしてくれたあと、こっそり座敷に上げてくれて「今からテープ流すけどそこから見える景色そのままだよ」と「児を盗む話」の一節を聞かせてくれました。
「景色はいい所だった。前が展けて、寝ころんで居て色々な物が見える。直ぐ前に島がある。其処に造船所がある。朝からカーンカーンと槌の音をさせている。同じ島の左手の山の中腹に石切り場がある。松林の中で石切りが絶えず歌を唄いながら石を切り出している。その声が市の遥か高い所を通って直接に私のいる所に聞こえてくる。夕方、私は延び延びした心持で縁へ腰かけて、そういう景色を見ている。遥か下に、商家の屋根の物干しで、子供が沈みかけた太陽の方に向いて棍棒を振っているのが、小さく小さく見える。その上を五六羽の白鳩が忙しそうに飛び廻っている。六時になると後の山寺で時の鐘をつく。ごーんとなると直ぐゴーンと反響が一つする。又小さいのが遠くから帰って来る。静かな日には四つにも五つにもなって反響して来る。その頃になると前の島の山と山の間から三角に一寸頭を見せている百貫島の燈台が光り出す。三十秒位にピカリと光って又消えて了う。造船所の銅を溶かしたような火が水に映る。十時になると多度津通いの連絡船が汽笛をならしながら帰って来る。舳先の赤と緑の灯、甲板の黄色く見える幾つかの電燈、それらを美しい縄を振るように海に映しながら進んで来る。もう市からは何の騒がしい音も聞こえなくなって、船頭等のする高話が手に取るように聞こえてくる。」
「直ぐ前の島」は尾道水道の向かい、向島のこと。順に石切り場、造船所跡。


これは近代文学史上、白眉の風景描写と名高いとか。今でもその風景が残っているし、目を閉じれば昔の様子も易々と思い描けそう。しばらくおじいさんと盛り上がって、短編集を買ってしまいました。お釣りに記念硬貨をくれたりして、とってもいい人でした。ありがとうおじいさん!

さて、次は文学記念室です。振り返ればしまなみ海道が見えたよ。



尾道ゆかりの文学者の展示品があるんですが、建物だけで私はもうときめきが止まりません。時代の違う二軒の平屋を繋いでいます。眺めはいいし日当たりはいいし、坂を上ってこなければならないのが大変なだけで、それ以外は最高だよなあ……。
四枚目にちょっと写っているのは歌人の山下陸奥。




一番大きく取り上げられていたのは「放浪記」の林芙美子でした。「放浪記」にも尾道が出てくるそうです。未読のため引用できず。
彼女の書斎を再現した部屋とお気に入りのお人形。女の人らしい小物や鏡台がすてき。


食事をしなくても胸がいっぱいでしたが、喉は乾く。喫茶店を見つけたので入ってみたら古民家を改造したお店でこれまたきゅんきゅん。やっぱり眺めは最高です。


清見オレンジジュースあらしぼり! 果肉も入っていて濃くてうまうま。


そろそろ17時です。陸と海上の温度差から、海沿いの町は朝と夕に風が吹きます。肌寒くなってまいりました。あとはもう千光寺にお参りして帰ろうと足を速めます。陽も傾いてきてる……。


スイセン、カラー、……? 何の芽だろう。




天寧寺。篆文は読めないんだ、すまない。梅鉢ですな。流水紋? もセンスいい。




千光寺ロープウェーのりばの左手に鳥居発見、突撃。艮(うしとら)神社といいますが、どこに対しての艮(北東)なのか。神紋は丸に亀甲花菱。あってる?


おっきな楠がありました。草も生えてて若々しい。樹齢は2〜300年くらいでしょうか。


ロープウェーで一気に上っていきますよ。お客さんは私一人だけなのにニコニコとガイドしてくれるお姉さんすてき。とてもよい眺めです。



頂上から文人の詩歌が刻まれた石碑の並ぶ文学のこみちを通って千光寺へ行きます。ものすごく……山道です……。


子規さん!
 のどかさや 小山つづきに 塔二つ


ビニールシートェ……! 本堂も鐘楼も朱塗りです。
それにしても、すんばらしい眺望。尾道といえばこれ! です。



伝説の玉の岩。いわれがあったんですけどすっかり忘れてしまいました。


鏡岩。昔、玉の岩や太陽、月の光を反射させていたと伝えられているそうです。ほんまかいな。


それでは、帰りましょう。
玉の岩が見えるよ!


夕方の町はノスタルジックでわけもないのに泣きたくなります。
左下のわっさわっさ繁った木は艮神社の楠です。



これでもまだ尾道のお寺の半分も回れていません。多くのお寺の宗派が鎌倉仏教で、室町時代に開かれているのが興味深いところでした。
映画や歴史の資料館も行きたかったし、できれば向島にも渡りたかった……。じっくり腰を据えて巡ろうとすれば、とても一日では足りないくらいです。尾道ラーメンを食べ忘れたのもショック。またぜひ行ってみたい。


おまけ
ある意味歴史を感じるパンフレット。40ページにわたって尾道と周辺のみどころをがっつり紹介してくれています。無料。


おのみち文学の館パンフ。文学記念室、中村憲吉旧居、志賀直哉旧居、文学公園の説明あり。文学のこみちのガイドももらった。石碑があちこちにあります。


千光寺ロープウェー半券。





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2011/05/24
天王屋よしわたり



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