「俺なー。実はこの世界の人間やないん」
「…」
「魔法の国の王子さまで、訳あってこっちに居るんやけどなー」
「梗夜…。ひとつ良いことを教えてやる」
「ん?」
「俺の好みは柊みたいな従順な奴だ。魔法使いは好みじゃない」
「一年の!?」
「マジっスか先輩!!」
勢い良く教室の扉が開いて、柊が現われた。地獄耳だ。
階段を駆け上がったらしく、息が上がっていた。
「せせ先輩、今のは告白っスね?!」
嬉しそうに笑う柊に、海斗はにっこりと微笑んだ。
ガッツポーズをして喜ぶ柊を尻目に、梗夜はぽかんと放心している。
「そうだな…。三回まわってワンと言ったらジャーキーをやろう。梗夜はいらんからどっかいけ」
梗夜を手で追い払いながら、海斗はもう片方の手で柊の頭を撫でてやる。
柊と梗夜の表情の温度差は凄かった。
「ジャーキーより先輩のくちび…」
ごすっ。鈍い音がして、梗夜の肘鉄が柊の顎にヒットする。海斗に放たれたついでのストレートはあっさりと避けられてしまった。
「…海斗のアホッ! ハゲッ! ハゲてしまえっ!!」
半べそをかいて、梗夜は教室を飛び出した。大人気ない。
◇
「海斗がいじめるー!」
泣き付く梗夜を朔馬がなぐさめる。
「今授業中だぜ…?」
背後でハードル走をするクラスメイトの視線が痛い。
(そういえば、今日はエイプリルフールか…)
よしよしと頭を撫でてやりながら、朔馬は溜息を付いた。
(いらないって言われたんだから喜ぶべきだと思うんだけどな。……四月馬鹿どもめ)
◇
「そのまま明澄川に飛び込んで、浮かんでこなかったらなんでもしてやろう」
「はいっ! ……え?」
本日の勝者は海斗。
Back to Top / 2007.04.04
エイプリルフールに上手い嘘が付けなかったので(謎の理由)、SSを一発書きしてみる。
「ハゲてしまえ」を書けて満足。なんかバカップル。本編ではまだ友達以上恋人未満だから違和感。