「何か暇ー」
「あーそうだねヒマだねー」
「もう千紗都ったら。自分ばっかり本読んでるんだから」
「じゃあどっか行こうか?」
「雨降ってるじゃない」
「しばらく雨だねー」
「うっとおしいね」
「ね、何かやろ」
「何かって言ってもなあ」
「千紗都もてなして。ほら何かあるでしょ」
「ないよなにも」
「使えないヤツー」
「アンタねえ、ひとん家に勝手に押しかけておいてそれはないでしょ」
「だって家にいても暇だったんだもの」
「で、お涼もヒマだったと」
「ええ」
「お涼それ好きだね」
「うん、おいしいから」
「後引くわよね、アト」
「でも食べすぎると胃がもたれるんだよなあ」
「もう。もたれるじゃなくて、もてなせ千紗都」
「じゃあ海見に行こうよ、海」
「海ってこんな雨の中行ったって仕方ないじゃないの」
「そうね。寒くて風邪引くわね」
「風邪引くって、そりゃお涼、そんな格好してりゃ寒いでしょうに」
「だって出かける時は暑かったのよ。でもそういえば今は寒いわね」
「そう? わたしはムシムシすると思うけど」
「そういえば蒸し蒸しもするのよね」
「変な天気」
「ホント変な天気ね」
「ずっと雨続くのかなあ」
「ずっとこの調子なんでしょう?」
「うっとおしいよね。誰かさんみたいに」
「そんなことより何かやろうよ」
「だから外行こうよ。家にいてもしょうがないから」
「外行くって、千紗都さっきから家着じゃないの。そんなこと言ってホントは外出る気ないんでしょ」
「行くならちゃんと着替えるよ。でも、別にこれでもいいけどな」
「それ中学の時のジャージじゃないの」
「ヘヘヘ、残ってたヤツ丈切って短くしたんだ。いいでしょコレ」
「テレンテレンじゃない」
「あ、お涼バカにした。そういう生意気なこと言う奴には足攻撃だ」
「きゃっ、止めてもう言わないから」
「まったくもう。お涼はいつもそうやってお高く留まってるんだからさ」
「え、そうかしら? そんなことないわよ」
「そうよ。お涼のはお高いんじゃなくてクールなだけよ」
「あ、柚実まで味方かよ」
「別に味方とかそんなんじゃないわよ。ねー、お涼」
「ええそうね」
「クールな反応だねえ。それにしてもお涼好きだねそれ」
「え? ああ、ついおいしくてね」
「そんなことより千紗都何とかしろ」
「何とかって、アンタねえ。じゃあ何やりたいか言ってごらんよ」
「え? そんなこと急に言われてもなあ。何か楽しいことよ何か」
「そうね、ジメジメして嫌な天気ですものね」
「そう。こうパアッと明るくなるようなさあ」
「明るくなるって言ったって、梅雨明け待つしかないんじゃないのー?」
「だから例えよ例え」
「あー。今年の夏は海行きたいなー」
「今年って、わたしたち毎年行ってるじゃないの」
「早く夏来ないかなー、夏」
「夏よりも今何かしようよ」
「海行って泳いで、スイカ割って、砂遊びして、他に何かあるかなあ」
「人の話聞きなさいよ」
「あっ。そうだ、じゃあ怖い話する?」
「えっ! いやよそんなの」
「怖い話って夜じゃないと気分出ないんじゃないの?」
「大丈夫。とっておきの話があるんだよ。これがさ」
「いや、やめて。そんなこと言うならわたし帰るわよ」
「あ、やっと帰ってくれる、よかったー。柚実さんおかえりー」
「あーすごいやなヤツ。お涼どう思う? せっかく親友が訪ねてきたのに帰れって言うのよ」
「そうね、それはちょっとひどい言い方よね」
「あ、お涼まで柚実の味方だよ。まいったねこりゃっ……て、お涼ほんと好きだねえ」
「ええおいしいものね」
「もー、千紗都が意地悪するー」
「別にイジワルなんてしてないって。わかったよ泣くなよ、あやまるからさ。ゴメンゴメン、柚実ちゃん機嫌直してよ」
「じゃあ何かしよーよ」
「まったくまたそれかよ。じゃあ寝よ。みんなで寝よ」
「やだよそんなのつまらないー」
「まったく子供か。アンタってヤツは」
「もう、柚実もそんなにワガママいうんじゃありませんよ」
「お。やっとお涼がこっちについた。これで安心できるよ」
「あーお涼裏切り者だー」
「え、別にそんなんじゃないわよ」
「あれ? 歌舞伎揚げもうなくなってる」
「あっ! お涼全部食べちゃったでしょ」
「そうだったかしら。まだ残ってると思ってたけど」
「こら! ごまかすな」
「もーお涼ったらー。わたしも食べたかったのにー」
「アタシだって一枚しか食べてないよ」
「変ね、そんなに食べていないのに。二人とも食べたんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ」
「でもきっとそうよ。読書に夢中で、いつの間にか食べちゃったのよ」
「じゃあお涼、その後ろで束になっている空き袋はなにさ」
「え、そんなものないわよ」
「隠すなコラー」
「きゃっ。ちょっと千紗都」
「ホレホレ。これでどうだ」
「イタイイタイ千紗都アタシは関係ないって」
「えーいアンタも同罪だホラホラ」
「いやっ、やめなさいって千紗都。もうふざけすぎよ」
「へへへへへへよいではないかよいではないか」
「ちょっとそこ、乗っかんないでってあっ!」
「や、くすぐったいって、ダメッ。あっちょっホンッあはははははは」
「ほらークロールだぞー。みんなでおよごー!」
「ごめんなさいごめんなさい、あやまるからもーやめてー」
「きゃーおたすけー」
「おらおらー」
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