「かくれんぼ、それとも鬼ごっこ」
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制限時間内に捕まえられたら、深道の好きにしていいわよ。
誰かひとりだけのものになることを好まない小さな悪魔は、そういうと俺を挑発した。
いわゆる女としての狡賢さは、姉のほうより妹のこの子のほうがずっと上だ。
ストリートファイターとしての力量で言うなら、不等号は逆を向くだろうが。
決して誰かのものにはならない。ひとところにじっとしていない。
潤んだ目は、甘える口元は、果たして本当なのか、それとも女優である母親譲りの演技なのか。
わからない男は、悉く堕ちて行く。
「時間制限はあるのかな?」
「そうねぇ……ま、一時間くらいかなぁ」
「逃げ果せる自信は?」
「……相手が深道じゃ、五分五分ってとこかな」
俺相手に逃げ果せる自信が半分もあるなんて、……子供だな、と思う。
「じゃあ、今からスタートね」
背伸びして、俺の頬に口付けると、みおりちゃんは雑踏の中に消えた。
俺は目を閉じて100数えた後、この渋谷の溢れるほどの人ごみの中から、たった一人のみおりちゃんを見つけなければいけない。
さぁ、ゲームの始まりだ。
捕らえた後はどうしてくれよう。
何処へも行かないように、鳥篭にでも閉じ込めてしまおうか。
そして背中の羽をもいで。
俺だけのものにしてしまおうか。
(END)
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