『涼しい部屋』
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エアコンは静かに音をさせながら、二人きりの部屋を涼しくする。
窓の外は雲ひとつない快晴。どこまでも青い空。
こんな日に部屋に閉じこもっているのは惨めだという人がいるけれど、むしろ贅沢なんじゃないかと思う。
掃きだし窓の傍に引っ張ってきたガラステーブル。テーブルの上に広げた夏休みの課題。
英語の問題集はジュリエッタに任せた。
向かい合わせに座ったジュリエッタは私から見れば凄いスピードで、問題集をこなしている。
さっき飲んだフルーツジュースで、お腹は一杯。自然と眠気に襲われる。
「マキ、寝るな」
テーブルに突っ伏した途端、ジュリエッタの言葉。
「……だって涼しいしお腹一杯なんだもん」
「ちっとも片付いてないだろう、数学」
私が自分でやると言い張った数学の問題集。一ページだけやってもうお手上げ。
「起きたらやるし」
「………仕方ないな」
ジュリエッタはまた問題集に戻った。私は目を瞑る。
「このお代は高いぞ、マキ」
「どうぞお好きなだけ持っていって」
最初は苦手だと思っていたのに。
今はとても自然に隣にいる。こんな風に頼ったり甘えたり、我がままを言ったりして二人だけの時間を過ごしている。
「起きたらインスタントでいいからラーメン作ってくれ、マキ」
「……お腹壊してもいいんなら作るわよ」
「ああ、いいさ」
「勇者ねぇ、ジュリエッタって……」
心地よい眠気。
私はゆっくりと、夢の世界へ。
涼しい部屋。
二人だけの、涼しい部屋。
(END)
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