金次郎×カイ「mail to me」
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駅前のケータイショップで、古い機種が「新規契約1円」で出てた。
それを見て真っ先に頭に浮かんだのは、アイツの事。
アイツ、今時携帯持ってないんだよな……ゆえに連絡は家の電話と手紙、だったりする。
ホント、今時。
北海道と東京の遠距離恋愛。お互い高校生で、なかなか逢えないし。
金次郎の家の電話には、必ずといっていいほどお父さんが出るし。
別に何か言われたことは無いけど、やっぱ緊張するし気も遣う。
「………ちょっと早いけど、誕生日プレゼントってことにしてやろうかな」
―――アイツ用に、携帯一台買っちゃった。
勿論、私との連絡の為に。
数日後、学校から帰る途中に携帯が鳴った。
慌てて携帯を取り出してみると、案の定アイツから。勿論、家の電話からだけど。
「もしもし、金次郎?」
『カイか? ……携帯、さっき届いた。……ありがとな』
電話の向こうの声は照れくさそうだった。
「ううん、平気。こないだタイトルマッチで優勝したから、今私のフトコロ結構温かいんだぜ?」
『そっか……すまない』
「金次郎の誕生日のプレゼントってことにしといてあげる。ちょっと早いけどね。
早く操作覚えて、メールでも電話でもいいからしてくれよな?」
『ああ、……頑張ってみる』
「……待ってるからな」
不器用な金次郎のことを思って、操作方法の比較的簡単なやつにしたんだ。
ついでに、分厚い取説にインデックス付けてあげて、必要なところにはマーカーでライン引いてあげて……。
私のメールアドレスと電話番号は、勿論金次郎の携帯に入れてある。
家に帰って、待つこと数時間。
携帯を前に、金次郎からの連絡を待っている。
「カイ、飯だぞ」
兄ちゃんが部屋に呼びに来たけど、何かご飯食べる気もしなかった。
「後でいいよ、先食べてて」
なんて、そっけない返事しちゃった。
「……遅いなぁ、金次郎。操作方法わかんないのかな?」
金次郎ん家の電話に掛けて確認してみようかとしたとき、ようやく携帯が鳴った。
Eメール受信
北枝金次郎
(non title)
「遅いっ!!!」
時計を見ると、下校途中の電話からたっぷり4時間! 4時間掛かってやっと送られてきたメール。
「……アイツ、マジで機械オンチだなほんと……」
ぶつぶつ文句垂れながら、金次郎から送られてきたメールを開いた。
件名:non title
From:金次郎
―――――――――――――
カイへ。
愛してる。
金次郎より。
「……………」
たった3行の、金次郎からのメール。
コレだけ打つのに、どのくらい時間が掛かったんだろう。
素っ気の無い文面から伝わってくるのは、不器用なアイツの気持ち。
「……ありがと、金次郎………」
たった3行。でもとっても、嬉しかった。
即行返信したんだ。
"私もだよ"って。
そしたら、今度は着信があった。金次郎から。勿論、携帯から。
「……もしもし、金次郎?」
『カイか?』
「メール、すっごいうれしかった。……改めてメールで言われると、なんか照れるな……」
『……言うほうも照れるんだぞ、メールとはいえ……』
「ふふっ、それでメールが遅かったんだ……」
『ああ、……』
―――それからは毎日のように、金次郎と携帯で二人きりの時間を過ごしている。
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