「ハードジェル」



……冷たい。
そう思ったら目が覚めていた。
というより、何時の間に眠っていたんだろう。
「おはよ、金次郎」
「……お早う、カイ」
目の前には笑ったカイ。その後ろには天井。カイが俺の上に馬乗りになってる。
頭がぼーっとしている……だいぶ長いこと、寝ていたみたいだ。
「こっちのほうが男前」
「え?」
言われて、直ぐには分からなかった。
「鏡見てみなよ」
カイは俺の上から退いたので、言われるがままに眠い目をこすりながら身体を起こし、 のろのろと洗面台の前に立った。
「あ――――……ぁ」
髪の毛逆立ってる。
それも、濡れてるみたいで。
恐る恐る触ってみるとカチカチだった。
「ジェルつけてみたんだけど、似合ってるじゃん」
「……冷たかったのはこれか……」
もう一回触ってみる。やっぱりカチカチの髪が、重力に逆らって上を向いている。
「似合ってるしカッコいい。なまらかっこいいよ、金次郎」
覚えたての言葉で、カイが褒めてくれる。
「……そうか?」
カイに言われても、いまいちよく分からない。
「金次郎の髪、さらさらで綺麗だけど、こういうのもイイと思うよ」
カイに言われれば、悪い気はしなかった。
ジェル、もうちょっとつけてみよっかと言われて、俺はうなずいた。



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