金×カイ「キスマーク」
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『……このくらい、いいよな?』
唇を離して、その後を確認してから金次郎は尋ねてきた。
事後承諾なんて、ずる過ぎない?
「……あの馬鹿……」
鏡に自分を映すたび、嫌でもそれは目に付いた。
鎖骨の脇に残された、赤い赤い……キスマーク。
先週末に会ったとき、金次郎のつけたキスマーク。四日たっても消えやしない。
「今日は練習があるんだけどな……」
試合用の衣装なら首まですっぽり隠れるけど、練習の時は普通のTシャツにジャージだ。
バンソウコウでも貼って……こんなとこにバンソウコウなんて、ちょっと不自然だよなぁ……。
貼っても汗ですぐ剥がれるよなぁ……皆に何て言われるか……。
「もぉ……金次郎の馬鹿馬鹿馬鹿っ!」
――今度来たら、ぜーーったい、四の字固めかけてやるんだからっ!
それでも……それでも。これは、確かな証。アイツと、私が過した、夢のような時間の証。
夢のような時間は、いつでも短くその終わりはあっけない。
ごくたまにしか東京に来ない金次郎と逢えるのは、待っている時間の何百分の一なんだろう。
『カイ、……』
『んっ、金次郎、っ……痛・っ』
その時間を共に過した、せめてもの証にと。別れ際、金次郎が私の首筋に付けたキスマーク。
『……このくらい、いいよな?』
つけた後に聞いてきて……私の髪を、撫でながら。
『次いつ会えるか、わからねぇんだしさ……』
いつになく優しい声と目。
……離れるのが辛いのも我慢してるのも、お互い様。
けれどそれを顔に出してしまう分、やっぱりアイツは年下の男の子。
「やっぱり変だよなー」
キスマークにバンソウコウを貼って、鏡の前に再び立って。
……あからさまに不自然……だけどそのままって訳にもいかないし。
野良猫に引っ掻かれたって、誰かに聞かれた時のために、ありきたりな言い訳も考えたりなんかして。
「……金次郎、やっぱ馬鹿だ……アイツ」
どうせなら腰とか、太股とか……もっと他に場所は幾らでもあるっての。
首筋にキスマークなんて、大昔のドラマじゃないんだから。
……ま、そこがアイツらしいんだけど。
「そうだ、今度は私が金次郎にキスマーク付けてやろうかな?」
アイツが友達皆に、冷やかされるような場所に。
私と短いけれど夢のような時間を過ごした、その証として……。
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