「土曜の午後」




今日は土曜日。
みおりちゃんと二人で、朝から買い物に出かけた。
帰りの電車は思いのほか空いていて、俺たちの乗った車両には他に誰も乗っていなかった。
「あー、いっぱい買っちゃったなぁ、」
シートに並んで腰を下ろし、手にしていた荷物を両脇に置いた。
「ホント、すげえ荷物」
二人分の買い物袋は結構な量だった。みおりちゃんは欲しかった服とかマンガとか。
俺もスニーカーにナップザックにと、両手にいっぱいの買い物をした。
「家帰ったら、ピザでも取ろうか。みおりちゃん、何が好き?」
「ピザかぁ、何でもいいよ。もうお腹ぺこぺこだし……」
「何でもいい?」
「うん、深道弟に任せる」
涼しくて人気の少ない午前中に済ませとけと思って、開店時間に合わせて行動したんだけど、
買い物が予想より長引いて、ランチタイムを過ぎた今も昼飯はまだだった。




……昨夜、みおりちゃんは俺ん家に泊まった。
エアマスターは友達ン家にテスト勉強で泊まりに行ってて、俺ン家も丁度誰もいないし。
どうせ、今日会って一緒に出かけるんだし……ってことで。
金曜の夜を、二人っきりで過ごした。
………当たり前のことだけど、………した。




「ん……?」
電車が動き出してすぐ、みおりちゃんが俺に凭れ掛かってきた。
「みおりちゃん?」
……寝てる。よっぽど眠たかったのかな。
そりゃそうだよな、結構歩き回ったし。
スウスウ、静かな寝息を立てているその顔は本当に可愛い。
昨日みおりちゃんは学校から帰ってすぐ、ランドセル置いて俺ン家に来たから、一緒に過ごしてもうすぐ24時間になる。
昨夜は俺も頑張っちゃったりなんかして、みおりちゃん多分寝不足の筈。
来てすぐにシて、飯食った後またシて、それから風呂ん中で……、それから……。
―――相手はまだ小学生だってのに。俺たち新婚さんじゃねえかよ、完璧。
「……俺、ロリコンじゃないはずなんだけどなぁ」
呟いて、みおりちゃんの小さな頭を撫でる。






―――何を今更。






俺に掛かってくる体重は余りにも軽くて、彼女の幼さを嫌と言うほど示してくる。
一線を越えてしまってから、早数ヶ月。
せめて5年は我慢するつもりだったのに。







……その我慢、一ヶ月と持たなかった。








待ちきれなかったのは、俺のほう。








「……可愛いな、やっぱ」
その小さな身体を抱き寄せ、狭い額に口付ける。ちゅっ、て音がした。
「心配しなくても、責任はちゃんと取るからよ、お姫様」
あのエアマスターとあの佐伯四郎に頭を下げるのは、かなり勇気がいるけれど。
頭下げたらそのまま地面に埋められそうな気もするけど。






「……帰ったら、も一回しても……いいかなぁ?」








昼下がりの静かな街の中を電車は走っていく。
俺と、俺の小さな恋人を乗せて。
非凡で平凡な、土曜の午後の風景。





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