月雄×崎山「Face」
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散らかった六畳一間の俺の部屋。
その小汚い部屋の、俺の前で見せた、崎山香織の"女"の顔。
それは、堪らない程の愛しさを感じると同時に、やるせなさをも感じた。
「……寂しいの」
酷く酔った崎山が、俺の部屋を訪ねてきたのは、終電も過ぎた深夜のことだった。
「崎山、どうしたんだよ」
俺はというと、寝入りばなを起こされて不機嫌だった。
「何だよ、また借金の催促かよ……」
「違うわよ。……寂しいのよ、とっても……」
酒の匂いをさせながら、顔を真っ赤にして……目は、今にも泣き出しそうだった。
いつもの、強気でアタシが一番だ、なあの崎山からは想像も出来ないくらい、
その夜の崎山は随分弱気だった。
「崎山? どうしたんだよ……っ、ぅわっ!」
……いきなり、抱きつかれた。
「崎山? おい……」
おい、何なんだよ一体。
崎山は想像していたより全然柔らかかった。もっとごつごつしてんのかと、思ってたのに。
「……月雄ぉ、……あのさ、頼みがあるんだけど」
「あ……?」
「……あのさぁ……こないだの借金、アレ半分帳消しにしてあげるからさ……」
「何だよ」
「……抱いてよ……」
女に抱いてくれと頼まれたのは、正直初めてだった。
それでも、ここ最近そっちは疎遠だったし、崎山は口は悪いが、
いい身体してんな、ってずっと思ってたし……だから、ヤった。
プライドの塊みたいな崎山が、俺みたいなヤツに抱いてくれなんていうのは
きっと何かあるんだ。そうじゃなきゃ、おかしい。
そう思いながらも、現実の前にはそんな冷静な判断は、中途半端なままだった。
敷きっ放しの小汚い布団に崎山を横たえて、服脱がせて。
「んんっ……」
キスしながら、その白い身体中、思うが侭に撫で回し捏ね回した。
「ぁ、あぅ…ん、」
酒が入っているせいか、崎山の反応は早かった。
想像していたよりずっと大きな胸の、尖った頂点を吸い上げ、舌で転がした。
「月、雄っ、……やぁ、気持ちいいっ……」
よほど感じるのか、首を振って悶えて。
空いた手を脚の間に滑り込ませれば、そこはもうどうしようもないくらいに、蕩け切っていた。
「すっげ、……崎山、ぬるぬるじゃねぇか」
「ぁあ、っ、言っ、わないで……」
繁みを掻き分けて、既に固く尖った淫芽を摘み上げれば、ビクッと身体が小さく跳ねた。
感じてるときの崎山の顔は、いつもと違って"女"そのものだった。
それも……極上の。
「ここ、いいんだろ? なぁ、」
クリトリスを摘んで苛めながら尋ねると、崎山の顔が快感に歪む。
「ぁあッ、そこ、そこッ!」
俺にしがみついて、色っぽい声上げて。
……やべぇ……滅茶苦茶、綺麗だ。
そう思うと、俺のペニスはもう我慢できなくなってきた。
トランクスから竿だけ出して、抱え込んで一気に突き上げた。
「っ、あ・ああああっ……!!!」
崎山が仰け反る。
その崎山の、熱を湛える泉が俺を包み込み、更に奥へと引き込んでいく。
「……崎山っ、すっげ、いい……」
……畜生、すぐ出しちまいそうだ。滅茶苦茶、いい。
抱え込んだ腰を固定して、ガンガンに突き上げる。
崎山は相変わらず俺にしがみついて、消えそうな声を上げる。
「いぁぁっ……、月雄ッ、ふ、あ、ア、ああッ……!」
崎山は自分から腰動かして、もっともっと、快感に溺れようとしている。
……まるで、何かを忘れようとしてるみたいじゃねえか?
そのときふと、そんなことが脳裏をよぎった。
「崎山ッ、……」
「月雄、もっと、もっと……も、ッ……ぉ…ッ!」
「崎山ッ、……さ、や…ッ」
「つき……ぁッ、い、いく……ッ」
尋ねる間もなく、快感の頂点を迎え、俺は崎山の中に……出した。
「……なぁ、崎山」
「何?」
セックスの後、背中を向けて寝ているいる崎山に、尋ねてみた。
「……何かあったのか?」
「別に何も無いわよ……ちょっとヤりたかっただけ」
「なんだよ、それ」
答えになってないじゃねえか……。
崎山はこっちを向くと、俺の頭を抱きこんだ。
「……女をやってると、いろんなことがあるのよ。アンタみたいな男にゃわかんないだろうけどね」
……やっぱ、いつもの崎山じゃん。
なんだよ……抱かれといて、その態度。
ま、こっちのほうが崎山らしいけどな。
「……ちょっと失恋したの。それだけよ」
「失恋?」
「そ、この崎山香織様の魅力をわかりもしないで、二股かけた馬鹿な男がいたのよ。それだけ……」
「…………それ、十分理由じゃねぇか」
「うるさいわね……」
……失恋、か。
「じゃあさ、崎山」
崎山の胸に顔を埋めたまま、……思い切って聞いた。
「何さ、月雄」
「……俺でよかったら、付き合ってやろうか?」
―――ゴン。
「いてッ!」
返事は頭にゲンコだった。
「調子に乗るんじゃないの、誰がアンタみたいな、金の無い男とっ」
「……痛ぇ……俺のテクニック、結構いいだろ? 崎山っ」
「……アンタ早漏だよ」
「げ……」
「馬鹿なこと言ってないで、とっとと借金、残り半分返しなっ!」
そのまま崎山は俺の部屋で眠り、次の朝、麗一が来る前に何事も無かったかのように帰って行った。
「……失恋、ね」
崎山とセックスをした布団に寝転び、一人考える。
あんな顔をした崎山を見たのは初めてだった。
忘れられない……崎山の、とても綺麗な顔。"女"の顔。
思い出すと、胸が締め付けられるのは、きっと……。
……俺が、崎山を好きだから。
「……次の次の恋人辺りでいいから、俺を選んでくれねえかなぁ……」
ポツリと呟いて、短い眠りに落ちた。
崎山と恋人になってる、夢を見た。
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