「Foolishness×Foolishness」








(side カイ)
薄暗い照明、有線じゃなくてジュークボックス。
古い自販機は外国製。味があっていいかも。
こういう雰囲気は嫌いじゃない……でも慣れてない。



「……なぁ、カイ。せぇへんのか?」
椅子に座ってボーっとしてたら、屋敷に声を掛けられた。
「えっ?」
「え、やあらへんがな。さっきからワイばっかり突いてるやん」
「あ、うん……」
「ビリヤード、やったことあるんやろ?」
「あるけど、そりゃ」
差し出されたキューを受け取り、渋々立ち上がる。
……ビリヤード場なんかホント久しぶり。





柄にも無く、お化粧なんかしたりして。
慣れないグロスはちょっと気持ち悪いし、ビューラーで瞼、思い切り挟んじゃったのがまだ痛い。
いつもは何処に行くにもジャージなのに、デニムのミニスカにカットソー。胸元も脚もスカスカする。
それでも私なりに精一杯の、背伸びをしたつもり。
屋敷に「遊びにいこか」って誘われたから、新調したんだけど。
……悪い気はしなかった。寧ろ、誘われるのを待ってたから。
思いっきり、頑張ったの。
なのに屋敷は、会ったとき「お、ほな行こか」って言っただけで、似合ってるとも何とも言わない。




……この浸透頸馬鹿。
女心のわからん奴め。




誘ったのはそっちのほうなのに。
この態度ってどういうことなんだか。
この後、ご飯食べる、そこまでは決まってる。
その後は……どうするんだろう。
期待も覚悟も、一応してるんだけど。 兄ちゃんにも、遅くなるって言ってあるし。
考えると、柄にも無く赤面してしまう自分がちょっと情けなくもあるんだけど……。




手玉を手に、私の代わりにベンチに座った屋敷を見る。
もしもご飯食べて何も無しでサヨナラだったら、絶ッッ対、ラリアット食らわせてやるんだから。





(side 屋敷)
……かなり参った。
待ち合わせ場所に先に着いてたカイ見て、脳天に来た。マジ可愛いいやんけ……。
確かに可愛いとは前から……せやから惚れたんやけど……思てた。
飾り気の無いトコもそれなりにええけど、普通の女の子みたいな格好したらもっと可愛いんやろうなぁ、とも。
せやけどこういう格好ホンマに拝めるとは思てなかったから……掛ける言葉、あれへんわ。
「お、ほな行こか」
しか言われへんかって……我ながら情けないな。





なんとなく来てしもたプールバー。
つまらなさそうな顔してボーっと座ってるカイを、玉突きながら時々横目で見る。
生脚も結構ええなァとか、乳も意外とでっかいとか……本人の前でゆうたらきっと卍固めやろけど……。
グロスで濡れた唇、マジで色っぽい。ホンマ、キスしたい……。





―――あーいう格好してるっつうことは。
それなりにそれなりっつうことでええんやろうか。
……飯食うた後は……そういう場所に誘ってもええんか?
いや、ええやろ。普通は。そういうサインやろ、あの服は。あの化粧は。
今までの経験からしたら、少なくともそうやった。それでええ筈や。
けど、……遊びやのーて、本気で惚れてるから、やっぱり緊張する。
マニュアルは頭ン中に完璧に入ってんのに、どうにもその通りに行動しづらい。
……怯えとるんか? 屋敷俊……柄にも無い。




「ビリヤード、やったことあるんやろ?」
「あるけど、そりゃ」
交代でベンチに座って、カイが玉突く番。
それなりにメリハリのある体のライン。着てる服の下。……アカン、考えたらなんかドキドキしてきた……。
ああ、もう……女抱くんなんか初めてちゃうやろが……。
あっちは初めてかもしれへんけど……。




「どしたの?」
「へ?」
……ワイ、挙動不審やったかな。
カイが心配そうに覗き込んできた。
「何か悶えてない? おなかでも痛い?」
「いや、ちゃうけど……」
「変なの……」
笑って、ジュース買って来るとカイは入り口の自販機のトコに歩いていった。
その後姿見ながら、頭を掻く。




……アホ、オマエのこと考えてんねん。
オマエに惚れとるから悩んどんねん。
ちょっとは気づけ、……プロレス馬鹿。




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