「プロポーズ」








夕暮れの土手を、二人で歩いた。
「ワイなぁ、家建ててんねん」
「知ってるわよ……皆知ってる」
「家、もうすぐ出来上がるんや」
「ふうん」
「閑静な住宅街や……交通も便利やし、安い店も近くにあるしなぁ。バス停、目の前やで?」
「へぇー」
「金掛けたでぇ……ワイ専用のトレーニングルームもあんねん」
「何それ、本格的じゃん」
「玄関にはシャンデリアやろ、風呂はジャグジーつけんねん。リビングには虎の皮の敷物敷くつもりや。本物やで?」
「うっわ、趣味悪っ!」
「うっさいわ、ステイタスや、ステイタス!」


ランニング途中だった屋敷と、練習帰りのあたし。
ジャージ姿の二人は、夕焼けを背に並んで歩く。


「……あのさぁ屋敷。新築祝い、ナニがいい?」
「新築祝い? いらんいらん、そんなもんいらんわ」
「あら、コーヒーカップくらいならあげるわよ」
「少女趣味の可愛らしいコーヒーカップやいらんわ」
「……虎の皮の敷物よりましよ。……あっそ、いらないならいいわよ。後でくれなかった、とかってケチつけないでよ?」
「つけへんつけへん……それよりなあ、カイ」
「うん」


「―――……一緒に住まへんか?」
「え、」


夕暮れの土手。
ジャージ姿のあたしと屋敷は立ち止まる。
「トレーニングルームもあるし、交通も便利やし安い店も近くにあるしバス停目の前や……玄関はシャンデリアやし……閑静な住宅街やで」
屋敷の顔は、冗談じゃなかった。
真剣な顔だった。
「あの、屋敷。ちょっと、それってさ、」
恐る恐る……尋ねる。
「それって、屋、」
屋敷、と言おうとして。
「ん―――」
唇を……塞がれた。


それって、屋敷。
もしかしてプロポーズってこと?



言いかけた言葉は屋敷からのキスで遮られた。
それは問いかけそこねのあたしの疑問への回答だった。
その通り、っていう意味の。

(END)




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