『ドキドキ。』
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ドキドキ。
そっと、手を伸ばす。
僅かに襖を開ければ、銀時が大鼾をかいて寝ている。
それが狸寝入りではない事を確かめると、神楽は襖を閉めた。
夕方、街ですれ違った。
あちらは部下を何人も引き連れて警邏なのか仕事中で、お、とだけしか言わず、神楽も、ん、とだけしか言わなかった。
たったそれだけ。
けれど、胸はドキドキ。
頬は火照る。
あの男がそうしてくれるように、神楽は押入れに敷いた布団の中で、己の手を膨らみの少ない胸に、寝巻き越しに当てる。
そしてそれをじれったく、膨らみの根元から頂へと滑らせる。
「……ぁ、」
思いつめたような声が、それだけで出てしまう。
鼻の奥に残る煙草の匂い。すれ違った時にかいだ匂い。
股の間がもぞもぞする。
じれったくて、もう片方の手を内腿にはさんだ。
いつもなかなか触れてくれない場所。
思い切り、むちゃくちゃにしてくれてもいいのに。
「ゃ、ぁ」
破瓜の時の血の多さに驚いたのがまだ尾を引いているのか、胸は触れられてもこちらに触れられない日もある。
「さわっ、て、も、っと、」
あえぐ声と絡み合うように、ここにはいないあの男を思い浮かべて呟く。
内腿に挟んだ手は、じっとりと湿った場所を行ったり来たりしながら、あの男が触れるときにそうするように、どこまでもじれったかった。
あの男はまだ仕事をしているのだろうか。
部下と呑みに出かけているのか。
それとも、自分と同じように――。
あの男のことを考えながら、神楽の踵がシーツをすべる。
枕の下を探れば、あの男がいつだったか呉れた、ピンク色のローターが指に当たる。
これだ。
手繰り寄せ、卵形の先端を股の間に当て、スイッチを入れる。
「ぁあぁ――……!」小さく上げた悲鳴。誰にも聞こえない。
ドキドキ。
胸の高鳴りは、止まらない。
ねぇ、はやく、来て。
(幕)
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