100の命令
※スカあり。銀さんが悪い男です。
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『お前さぁ、ちょっとココ行ってくんない?』
あやめが銀時に小さく畳んだ紙片を渡されたのは数日前のこと。
『ココから帰ってきたら、おつきあい考えてやるよ』
そう言った銀時は意味ありげな笑みを浮かべていた。
”おつきあい考えてやるよ”
その言葉にあやめは飛びつき、銀時の笑みの意味も考えず、紙片の中身も見ずに頷いた。
紙片には、真選組屯所の住所と、真選組一番隊隊長・沖田の名前が書かれていた。
夜の屯所。
皆寝静まっている時間だったが、沖田の部屋には明かりがついていた。
「今日は失敗はなしですぜィ」
畳に横になり、暢気に煎餅を齧りながら沖田は言う。
あやめは沖田の目の前で、下衣を取り去った格好で畳にしゃがみ、尿道口へ空のペットボトルを宛がう。
「わかってるわ……」
「じゃあ早くしなせィ」
沖田の目の前で、この空のペットボトルに排尿をすること。それが沖田からあやめへの今日の”命令”だった。
あの日以来、あやめは屯所の沖田の自室に住んでいる。
沖田からの”命令”に従うためだ。勿論、他の隊士達には内緒で。
昨日はこの排尿に失敗した。ボトルから尿を少し零し、畳を汚してしまった。
沖田からは汚い言葉で罵られ、尻を思い切り叩かれた。
また失敗すれば沖田に叱られ、痛い思いをする羽目になる。銀時のところへ帰れる日も延びてしまう。
そう思うと、あやめの呼吸は乱れそうになった。
「ん、……」ようやく位置を定め、呼吸を整え下腹に力を入れる。
ジョロジョロという音をさせながら、あやめの尿がペットボトルの内部へと注がれていく。
今日は畳を汚さずに済みそうだ。
尿の勢いは次第に増し、音は激しくなっていき、ボトルの内部を叩く。
決して上品とは言いがたい音。漂ってくるアンモニア臭。
あやめの膀胱が楽になるにつれ、手の中のペットボトルは重くなり、熱くなる。
「随分濃い色だァ」
ビールみてェ、と沖田が笑いながら言う。
「……ッ、」
恥ずかしさに、あやめの顔は真っ赤に染まった。
沖田があやめに100の命令を一つずつ下す。
あやめがその命令にちゃんと従い、100の命令を全てこなせばあやめは銀時のところへ帰れる。
こなせるまでは帰れないし、帰さない。
そういう約束が、あやめの全く知らないうちに沖田と銀時の間で交わされていた。
半分近くまで入ったペットボトルに栓をすると、沖田は「よく出来やした」とあやめの頭を撫でた。
その顔にあやめがほっとしたのも束の間、脱いだ下着にあやめが手を伸ばそうとすると、
「じゃ、今度は全部脱いで股ァ開け」と次の命令が飛んできた。
「これは後で土方さんの部屋にでも放り込んでくるとして」
ペットボトルを部屋の隅に積んだ座布団の上に放り投げ、沖田はあやめにホラ早く、と促す。
「……さっきので22個目。100にはまだまだですぜィ? さっちゃん」
サディストの笑みを浮かべ、沖田はあやめを見下ろした。
全裸になり、あやめは畳に尻を落とし後ろに手を突いて脚を開いた。
薄い産毛が生えているだけの女性器が、もう何度目になるのだろう、沖田の目の前に晒される。
たわわな揉み応えのありそうな両胸の先端は桃色をして偉そうに上を向いている。
男なら誰しもむしゃぶりつきたくなるような胸だ。
「何回見てもいい身体でさァ、アンタ。くのいちなんて勿体ねェな」
沖田はあやめの脚の間に立つと、ホラ、と右足を上げあやめの眼前に突き出す。
「脱がせろよ、口で」
「……は、はい、」
あやめは沖田の靴下を軽く咥える。沖田は今日は一日警邏に出ていたといい、ずっと革靴の中にあった足の匂いに咽そうになる。
沖田が足を後ろに引くと、するっと靴下が脱げた。
「咥えてろィ」
言うと、沖田は足の親指を、あやめの秘裂へと遠慮無しに押し込んだ。
「ッ…!」
「おーおー、あったけーなぁ」
遠慮無しに押し込んだ親指をグリグリと動かし、あやめの膣を掻き混ぜる。
浅い場所ばかりをもどかしく掻き混ぜられ、あやめの下半身が疼きを覚える。
『……これは銀さんがしていること、これは銀さんの足、これは銀さんの声、銀さんの命令……』
あやめは目を閉じ、自分に言い聞かせた。そうしないと、感じるどころか心が折れてしまいそうだから。
グチュグチュと粘った音がそこから聞こえる。
『これは銀さん、銀さん……』
念仏のように心の中で唱えれば、羞恥心はゆっくり薄れていき、マゾヒズムが頭を擡げてくるからだ。
『銀さんだから……銀さんだから……』
「足でこんなに感じちまって、チンポぶっ込んだらどうなっちまうんでィ?」
「…ッ、……ぅ……」
咥えた靴下を落とすまいと、あやめは堪えた。男臭さが鼻と喉に堪える。
身体は素直なもので、沖田の足の指の動きにあわせ細い腰が自然に動いていく。
「ん、じゃあ離せ」
沖田の言葉と共に、足の指が離れた。あやめは口を開く。靴下があやめの胸をすべり畳に落ちる。
「綺麗にしろィ」
新鮮な空気を吸うべく深呼吸をしようとしたあやめに突きつけられたのは、今まで膣を弄っていた沖田の足の指。
粘った愛液をべっとりとまとわりつかせたそれを、あやめは舌を伸ばし、舐める。
酸っぱい。愛液特有の味と足の匂いが混ざり合っていて喉が焼けそうになる。
「ん、……ふ、」
フェラチオを思わせる舐め方と、あやめの口から出入りする赤い舌。
泣き黒子、眼鏡、我慢しているといわんばかりのその顔。
全てが沖田の加虐心をそそった。
『旦那ァ、反則金いつ払ってくれるんですかィ? 原付で速度違反とノーヘル、忘れたとは言わせませんぜィ』
『あァ? んな金ねーよ……っていうかそれさぁ、物納って駄目?』
未納と大きく赤で書かれた交通違反の罰金納付書を持って沖田が万事屋を訪ねたのは数日前。
『延滞つきまくってますぜィ? 物納ってどーせ万事屋か下のスナックの無料券でしょうが』
『ちげーよ。もっといいもんだよ』
女だよ。それもとびっっっきりのドM。銀時は沖田に耳打ちした。
『……くのいちでさ、名前はさっちゃんって言うんだけどさ……』
銀時の耳打ちが一通り終わると、沖田は頷いて納付書を破り捨てた。
沖田はあやめを四つん這いにさせ、先程まで足で弄っていた場所に後ろから挿入した。
遠慮なく一気に奥まで貫き、深い結合にあやめは面白いように嬌声を上げた。
「あぁっ、ん、! はァッ!」
長い髪を乱れさせながら、あやめはのけぞる。
「やぁっ、深ッ、あぁぁっ!!」
「深い? 深いほうがいいんだろィ?」
揺れる乳房を沖田の手が乱暴に鷲掴みにし、硬くなった乳頭を痛いほどにつまんだ。
あやめの中は蠢きながら沖田自身を奥へ奥へと誘う。
「もっと締めろィ、腰振れ」
「んんんっ、あぁっ!」
緩急も無い激しいピストン運動に腰が砕けそうになりながら、あやめは言われるがままに腰を振る。
『銀さんが、銀さんが……』
あやめは自分自身に必死に言い聞かせた。
「あ――当たってるッ、奥まで、あ、あ、あぁ!」
膣の奥深くに沖田を感じ、あやめの声が裏返る。
「奥いいんだろ? さっちゃん、雌豚だもんな?」
沖田はあやめの耳元でこの雌豚が、と罵り、子種欲しいだろィ? と尋ねる。
「欲しいッ、ですぅッ……」
快感が全身を支配するにつれ、あやめの身体の奥深くがクッ、と開いていくのが分かる。
「さっちゃん、雌豚の分際で真選組の子供産むのかィ?」
「う、産ませて下さいっ! 産ませて下さいッ」
声を枯らしながら哀願し、緩まることの無い沖田の責めにあわせて懸命に腰を振った。
あやめの中は沖田を離すまいと締め付けた。
「毎晩種付けしてたら、終わる頃にゃ孕んでるかもなァ」
「あぁぁぁッ……孕ませてくださいッ、お願い……ッ……!」
沖田の手があやめの恥毛の間に伸びる。包皮から顔を出し充血した淫芽を指の腹で擦った。
「ははっ、ビンビンになってんじゃねえかィ」
「ひッ、ぁぁっ、そこ、やぁああっ!」
待ち侘びた刺激に、あやめの背中に電流のように快感が走った。
無遠慮に淫芽に触れる沖田の指遣いが、快感の頂点をあやめの目の前に突きつける。
「やじゃねェよ、雌豚ッ」
沖田自身が一層締め付けられる。もう限界だ。
「――孕んじまいなァ」
沖田があやめの淫芽をぐ、っと強くつまむと、あやめは嬌声を上げ大きくのけぞり、果てた。
「ぁ……ああ……ッ……」
脱力したあやめの身体が崩れ落ち、沖田が中で射精した。
沖田はあやめの身体を清め、特別製だという鉄製の拘束具で手足を固定し、寝床代わりの押入れに半裸のまま放り込んだ。
拘束具と名のつくものの大抵から忍者は抜けられるが、この拘束具は天人からもたらされた特別製で、くのいちと言えども外すことは不可能だった。
「んじゃ、また明日。おやすみなせェ、さっちゃん」
「……おやすみなさい」
あやめの額に口づけ一つ落とし、沖田は押入れの襖を閉じる。僅かな優しさが、あやめの心をかろうじて繋いでいる。視界が闇に染まった。
「また明日、か……」
100には程遠い。一体いつ、ここから出られるのか。銀時に会えるのか。闇の中、あやめは声も上げずに涙を流した。
銀さん、と呟く。
ここから出て銀時に会って、約束どおりおつきあいを考える、と銀時が言うわけは無い……分かっている。
思いがかなうどころか自分はただ利用され売られただけだ。
それでも諦めることは出来なかった。
襖の僅かな隙間から明かりが漏れ、朝が来たのだと分かった。
ス、っと襖が開き、隊服姿の沖田が顔を覗かせた。
「今日はとっつァんに呼ばれてんでさァ。まぁでも今日はそれだけだからそんなに遅くはならねぇと思いますぜ」
朝食、と拘束したままのあやめにやきそばパンを食べさせ、牛乳を飲ませる。
「いい子にしてなせェよ。本庁の傍に美味しいケーキ屋があるんで、なんか買って来まさァ」
額に口付けを一つ落とすと、沖田は襖を閉じて去っていった。あやめの視界が再び闇に染まる。
沖田が戻ってくるまでの日中は、ただ帰りを待つだけだった。
散々弄られた夜の疲れはまだ取れず、あやめはいつしか再び眠りに落ちていった。
「……勝手に漁っちゃっていいんですか? 副長」
「うるせぇ、責任は俺がとる。見つからなきゃ全員減俸だぞ」
額に青筋を立てた土方と、気乗りしない風な山崎が沖田の部屋を訪れたのは、沖田が出かけて一時間ほど経ってからだった。
二人が探しているのは、数日前に取調室から無くなった拘束具。
忍者でも抜けられないという天人からもたらされた拘束具は非常に高価なもので、警察全体でも数えるほどしかないものだ。
対攘夷志士用にと近藤が松平に何度も頭を下げてやっと真選組に一つ回ってきたものだ。紛失届け一つでは済まない。
沖田が取調室から拘束具を持ち出したのを見た、という話を土方が耳にしたのは今朝のこと。
「ここで見つからなきゃあとは池の水全部抜け」
「……はぁ……」
山崎は仕方ないな、と沖田の箪笥の中をそっと開ける。身内を疑うのはどうも気が乗らないのだ。
「ったく、総悟の野郎。汚ぇなぁこの部屋。何だこの匂い。ションベン臭ぇぞ」
「あーあー、沖田隊長の箪笥の中ぐちゃぐちゃじゃん。何これペットボトルなんか入ってる」
苛立ちを隠せない土方は、部屋の中をうろうろ歩き回るとやはり散らかった文机の上の紙を手に取った。
「何だぁこりゃ。……22、ペットボトルに小便。23、裸になってM字開脚……って馬鹿かアイツは! 中学生か!」
数字と品のない言葉を書き連ねた意味不明の紙を投げ捨てると、土方はイライラした手つきで咥えた煙草に火をつけた。
「箪笥の中は無いみたいですね……となると、押入れかな?」
「天井裏も調べろよ、押入れから入れる」
「わかってますって」
山崎は押入れの襖を開けた。
「まぁ多分無いと思いますけ……」
言葉の最後を失った山崎の動きが止まった。
「どうした、山崎……」
山崎の方を見た土方の目に飛び込んできたのは、押入れの中で眼鏡の女が、半裸で眠っているという光景。
その女の手には件の拘束具。たわわな胸も露に、申し訳程度にかけただけのタオルケットがずり落ちそうになっている。
「……ふ……ふくちょ……これ……」
山崎は恐る恐る、土方に振り返る。
「――成る程な」
土方はあまり驚いている様子は無かった。
「こんなところで使ってやがったか。どーりで最近、総悟の野郎仕事の後の付き合いが悪いわけだ……」
紫煙をふっと吐き出すと、土方は山崎の隣に立つ。
「副長……これ……ど・どうしましょう……」
「どうするってお前、そりゃ――決まってんだろ」
山崎は慌てていたが、土方は口端を上げ、ニヤリと笑った。
「――することっていやぁ、一つしかねえよ……」
「……ン……沖田さん……帰ったの……」
男達の声に、あやめはゆっくりと目を覚ました。
(幕)
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