息も出来ない(ゾロ×ロビン)




"愛しさと切なさで、息も出来やしない恋だなんて。
そんな想いは、初めてだった"




『夜というのは、どうしてこんなにも短いのかしら』
たった一度の約束で、ロビンと夜を共にした、その夜明け間際。
格納庫の小窓から見える小さな空が白みだした時刻。
ロビンが去り際に残した言葉。
それはそのまま俺の気持ちと同じだった。
全然、足りやしなかった。




禁じられた恋だった。
何故ならロビンはルフィの"女"だからだ。
異性というものを意識したことのないルフィが、初めて意識した異性…それがロビンだった。
子供のような無邪気なルフィの、ロビンに対する想い。
恋と呼ぶにはあまりに幼い、けれど止まる事を知らずに寄せた想いは、 裏の世界しか知らなかったロビンには眩しく、そして何より新鮮だったのだろう。
俺が惚れた時はもう遅かった。
とっくに二人は男と女の仲だった。
ルフィは仲間であり、それ以前にこの船の船長だ。ルフィには恩もある。
ロビンを奪うようなことは出来やしねぇ。
男としてのプライド。仲間という横の関係。船長と船員という縦の関係。
その根底にある、単純なニンゲンとしての欲望。
何もかもが渦巻き、混乱した。
あきらめようとしたが、あきらめ切れなかった。この想いを吐き出さずにはいられなかった。
悩みぬいた挙句。
……俺は、思い切ってロビンに己の胸のうちを明かした。
たった一度。一度でいい。決して触れはしない。
俺と、夜を共に過ごして欲しい。それだけでいいと請うてみた。
ロビンは戸惑いを隠せない様子で、暫く考えさせてくれと言い、……三日の後、俺に了承の返事をした。




夜の格納庫。それが、俺とロビンがたった一夜を過ごす場所として選んだ密室。
船員達はみな、寝静まっている。
「……あんまりじろじろ見ないで。恥ずかしいわ……」
今宵は満月だった。
満月の明かりはそれと同じ、円形の小窓から差し込み、埃っぽい格納庫はほんのりと明るかった。
俺の目の前で、一枚一枚。
ロビンは服を脱いでいった。
俺がロビンに強請ったのだ。
『……お前が脱ぐところを、お前の裸を見てみたい』と。
「……綺麗なんだ。……じろじろ見るなって言う方が無理だ…」
俺の言葉に、ロビンは頷いた。
秘めたる部分が少しずつあらわになっていくその様。
一枚一枚、身に纏っているものを脱ぐロビンを、俺は床に座り食い入るように見ていた。
触れることは決してない、その愛しい想い人の裸体を。
ロビンにしても、ルフィを裏切れるのはこれが限界ギリギリのラインなのだという。
あの眩しい、無垢な幼い恋人を裏切れるのは、ここまでなのだと。
化繊は優しく拒みながらてろりと肌を滑り、埃まみれの床に落ち、その下にある、薄褐色のロビンの裸体をあらわにしていく。
柔らかな胸も、人形を思わせる細い腰も、鳥の産毛のような薄い恥毛も、……何もかも。
ロビンは一糸纏わぬ姿になると、ゆっくりと俺の至近距離まで来た。
そして、言った。
「……剣士さん、……ごめんなさいね、あなたの気持ちに、これだけしか応えられなくて……」
見上げると、羞恥に頬を紅く染め、今にも泣き出しそうなロビンの顔が俺を見下ろしている。
「……俺は、剣士なんて名前じゃねえ」
愛しい、愛しい女の顔。
お前のそんな顔を見ていると……息も出来やしねぇ。
「……俺は、ロロノア・ゾロって言うんだ」
「ゾロ、……」



愛しさと、切なさで。




背徳の行為はどこまでが許されるのだろうか。
何が? 何が、一体どこまでが許されるのだろう。
そもそも、背徳とは?
「……ゾ、ロ、」
誇りだらけの床に仰向けになり、ロビンが大きく脚を開く。
「……恥ずかしいわ……やっぱり、……」
脚の奥に息づく、神秘的な場所。そこを、俺はじっと見ていた。
ここにいつもルフィは喰らいつき、貪り、突き立て掻き回し、思うが侭に欲望を吐き出しているのかと思うと…… 悔しさは否応無しに俺を襲う。
見るだけだ、触れてはいけない。決して。指一本すら。
それは俺の最後の理性の砦なのだ。
そう言い聞かせながら、じっと……女の秘密が全て詰まった箇所を、触れたい気持ちをぐっと抑え、瞼に焼き付けた。
ぬらぬらと光る淫らな蜜。
蠢く性器と、その不思議な形。
「……見るために開けてるんだろう……?」
「ええ、そうよ……そうね、……でも、そんな熱い眼差しで見られたことは、今までないわ……ルフィにさえ……」
はぁ、とロビンはため息をついた。
「……見られているだけなのに、……心がこんなにも痛くて、身体がこんなにも熱くなるなんて……初めてだわ」
「そうか……なら……覚えていてくれ。」
誰よりも熱い眼差しでお前を見、そして触れることさえしなかった、ロロノア・ゾロという男を。





短い短い夜の間。
俺は、瞬きさえすることも忘れ、ただロビンの身体を見ていた。
そして瞼に焼き付け続けた。
細い腕の先も、背中のすべらかなラインも、肌を覆う産毛の様も、……くるぶしの小さな黒子さえ、余すところなどどこもなく。
明日もし、この目が光を失ったとしても、俺は恐れも泣きもしないだろう。
何故なら、愛しい人の身体を見ることが出来たのだから。
瞼の裏には忘れたくても忘れられないほど、鮮明にそれは焼き付いているのだから。
やがて空が白みだす頃、ロビンは衣服を纏い、格納庫を出て行った。
その頬には、一筋の涙が流れていた。
「……人に愛されて、それに答えられないなんて、なんて切ないのかしら。……そんな時が私に来るだなんて……思いもよらなかった」
「……ロビン、俺は、」
「ゾロ……」
キィ、と軋む音を立て、格納庫の扉が開く。
朝靄が流れ込み、薄暗い船室が明るくなる。
「夜というのは、どうしてこんなにも短いのかしら」
それがロビンの、去り際に残した言葉だった。
「……ああ、短いな……」
「……さようなら……"剣士さん"」
振り向きもせず、ロビンは立ち去っていった。



夜がもっと、長ければ。
ルフィを裏切ることも、己の最後の砦を崩すことも、獣になることも、そしてそれを後悔することも、 良心の呵責に苛まれ、苦悶した挙句、開き直ることさえも。
何もかも、出来ただろう。きっと。いや、それどころか。
息も出来ないこの思いを、ロビンに対する恋心さえ、断ち切ることだって出来ただろう。




一人残されたのは俺。
短い夜は明けた。また、一日が始まる。
――生きていこう。
たった一度の短い夜の、思い出だけを生き甲斐に。
息も出来ない、ロビンに対するこの想いを、ずっと、抱えたまま。
ロビンをこれからも、俺なりに愛し続けていこう。
そう決意した。



朝靄が少しだけ朝の空気に溶けた頃、俺も格納庫を出た。




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