エース×モーダ「ミルキータイム」
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"あの続きは、大人になってから、好きな男とするんだぜ……?"
あの人はそう言って、私の額にキスをした。
そばかすだらけの、泳げない海賊さん。
あの人が流れてきたのは、いつも水を汲んでいる、小さな川。
水をしこたま飲んで気を失ったあの人は、桟橋の脚に引っかかってた。
引き上げて水を吐かせて、引きずりながら家まで連れて帰った。
目を覚ましたその人は、海賊で。エースと名乗った。
「あんな浅い川、溺れる人なんてめったにいないのよ?」
私がからかうと、エースはミルクを飲みながら困ったように頭をかいた。
「しょうがねェだろ、俺能力者だから泳げねぇんだよ」
ある人を探して旅をしているんだ、とエースは言った。
エースが探しているのは黒ひげっていう人。
街に住んでる黒ひげ先生っていうお医者様とは違う人みたい。
海賊ってもっと恐い人だと聞いてたけど、エースはそんな風じゃなかった。
命を助けてくれたお礼だといって、頼んでもいないのに牛小屋の掃除や暖炉の修理をしてくれた。
私の家は、お父さんもお母さんも海軍の基地に出稼ぎに行ってて、今はいない。
私は一人で牛の世話をして、ミルクを売って生活していた。
だから、男手はとてもありがたかった。
「何でも言ってくれよ、モーダ」
そばかすだらけの顔に煤と干し草をたっぷりつけて、エースは笑った。
お父さんもお母さんもいない私。
話し相手は、牛たちだけ。
優しくされたのは本当に久しぶりだった。
「もういいのよ、エース」
エースは暖炉の前に座り込んで、壊れかけた椅子の脚を直していた。
慣れた手つきで金槌を打って、やすりを掛けて、買った時みたいに綺麗にしてくれた。
「いや、いいんだよ。ついでだから」
私がもういいと言っても、エースは手を休めない。
只でさえ溺れてその上気を失っていたんだから、もっと寝てないと駄目なはずなのに。
エースは目を覚ましてからずっと、牛小屋と家を往復して、色んなことをしてくれた。
「……ありがとう、エース」
「気にすんなって。他にも壊れてるモンねぇか? 何でも直してやるよ」
「うん……」
見かけによらず器用なんだ、エース。
……エースには弟がいて、二人でずうっと暮らしてたんだって。
だから小さい子を見ると、ほっとけないんだって。
……ホントに優しいんだな、エースって。
「モーダの親爺さんとお袋さん、海軍基地にいるんだって?」
「うん、海軍の買出し船……ずっと……出稼ぎなの」
コーヒーを入れてると、エースが聞いてきた。
「モーダ、親爺さんとお袋さんに会いたくないか?」
「……そうだね、会いたいな……寂しいもん」
生活は苦しくて、だからお父さんとお母さんは出稼ぎに行ってる。
でもお父さんやお母さんがいないのはやっぱり寂しかった。
ミルのハンドルを回す手が、ふと止まる。
お父さんやお母さんの顔を思い出すと、鼻の奥がツン、と痛い。
「……モーダ? どうした?」
エースが声を掛けてくれた。
誰かに優しくされたのは、本当に久しぶり。
街からとても遠いここで、私は一人ぼっちだったから。
強がってた自分の心が、何だか脆くなってしまって……。
「……ううん、なんでもないの……」
気がついたら、涙がボロボロ零れてきて。
「よしよし、……」
しゃがみこんでしまった私の背中を、いつの間にかエースが優しく撫でてくれていた。
「寂しい時はよ、泣いた方が楽になれるぜ……」
抱き込まれたのは、エースの胸。頭も撫でてくれた。
エースの身体は傷だらけで、お酒と海の匂いがした。
腕には物騒な刺青……背中にも、大きなのがあったっけ……。
見た目はとても恐そうなのに、どうしてこんなにエースは優しいんだろう……。
「エース……ッ、」
しゃくり上げると、エースが笑った。
「こんな小さいのに一人でよくがんばってるよな、モーダは」
「……あり、……とッ……エース……」
褒めてもらったのも、久しぶりだった。
「寂しい時は泣きたいだけ泣いて、誰かにすがるのが一番いいんだぜ、モーダ」
……その時のエースの声、ちょっとカッコよかったんだ。
ふと、優しく髪を撫でてくれてた手が、私の顎をつかんでぐっと持ち上げて。
「エー……ッ」
「……こんな風に、な……」
近づいてきた。エースの、顔。
「―――……!」
……キス、された。
薄くて熱い唇が、私の唇をふさいだ。
割り込んできたのは――舌?
理解できない。でも多分そう。
エースの舌が、私の口の中を自由に動き回る。
「ァ、ッ……」
逃げようとしたのに、逃げられない。
エースが私をしっかりと抱きしめてるから。
「ん、ふぅ……ッ」
思わず漏れた私の声……やだ……すっごい、やらしい……。
わかんないよっ……今、私何してるんだろう……。
キスって、こんな風にするの……?
長いキスの後、固い床の上に転がされた。
エースの顔は相変わらず優しくて、でもされてることがよく分からなくて。
私の頭の中はわくわくと混乱していた。
「エースッ、」
「ちょっと、じっとしてろ……」
小さな声で言うと、エースの手が私の服の裾から入ってきて。
「あ、ッ!」
遠慮もなしに掴まれた……胸を、丸ごと。
「やだ、エース、ッ……!」
エースは手の中にある私の胸をこね回し始めた。最初は痛かっただけなのに、段々くすぐったくなって、
それから……気持ちよくなってきた……。
「あ、ぁ……ーーッ……!」
かすれた声が、自分の気持ちとは反対に、勝手に出てしまう。
抑えようとしても抑えられない。エースの肩にしがみついて、思い切り爪を立てた。
嘘、嘘、嘘。
こんなトコが、こんなコトが気持ちいいだなんて……嘘……でも、気持ちいい……。
すっごくエッチなことをしてる、そのことだけは分かった。
エースはそばかすだらけの頬を赤くしてでも優しい顔で、私をじっと見つめて……胸を揉みながら。
何を考えてるんだろう、エース……どうして、こんなことをするの……?
考えるよりも、気持ちよさのほうが上を走ってた。
しばらくして服を捲り上げられた。胸は、散々揉まれたから腫れたみたいに赤くなってた。
「や、っ」
その先ッぽの、ピンク色の……尖ったとこに……エースが吸い付いた。
「あぁ、っ!、駄目ぇ…」
まるで赤ちゃんがお母さんのおっぱいを吸うみたいに、ちゅぅって音を立てて。
ミルクなんか出ないのに……吸ってる……揉まれてるときより、もっと気持ちいい……。
頭の中が、どんどん白くなっていく。訳が分からなくなっていく。膝を立てて、脚に力を入れて。
飛んでいきそうな意識をちょっとでも元に戻そうとした。
「モーダ、すっげェかわいいな……」
「……ッ、」
そんな風に男の人から褒められたのなんて初めて。
勿論、こんな風に胸を揉まれて吸われるのも……。
バサッという音。スカートも捲り上げられた。
エースの手が、今度は太股を撫で回す。
「や、っ!」
逆らう私の脚をたやすく捕え、肩に担いだ。
「エース……」
「気持ちよくしてやるよ……」
エースの言葉を追うように、ショーツの隙間から……エースの手が、入ってきた。
「や、あ、ああ……ッ!!」
おしっこが出る辺り。その辺りを、太い指が何か探してるみたいに行き来する。
「エースッ……、やだぁっ、汚いよぉ……ッ」
「あぁ? んなこたぁ気にしねえ……」
エースが指を動かすたび、ねちゃねちゃ、粘った音がする。
「アッ・アッ……」
私もそのたびにこぼれる声を我慢できなくて。
エースは楽しそうに、指を動かして……こっちもさっきの胸と同じで。
痛かったのが、どんどん気持ちよくなっていった。
「エース……エースぅ……ッ」
「モーダ、気持ちいいだろ? な……?」
尋ねられて、うなずいた。
粘った音はどんどん大きくなって、その上酸っぱい匂いもしてきた。
「ぁあ……ッ、い、……ッ」
「これは大人のやり方だけどな、……寂しい時とか、やなコトがあった時はこうやるんだぜ?」
……大人の人はこんなことするの? こんな風にするの……?
そんなの、初めて知った……。
「ん、っ」
エースがも一回キスしてきた。今度は、さっきと違って、私も舌を使った。
エースの舌に、自分の舌を絡めて……これ、きっと、大人のキスなんだ。
「ん……ぅ、っ、エー……っ」
下から聞こえてくる音と、キスの音。
その音を聞きながら、エースにされるがまま……与えてくれる気持ちよさに、……溺れた。
「なぁ、モーダ」
「ん……なぁに?」
汚れた床の上、エッチなことをした後、エースの胸に抱かれてちょっとだけ眠った。
エースに名前を呼ばれて、目を覚ました。
「……海軍G2支部、っつったっけ……親爺さんとお袋さんのいるトコ」
「うん、そうだよ……それが、どうかした?」
「あー……どうかするっつか、ん……ちょっと思い当たるコトがあってよ……」
「思い当たること?」
「ああ、……その海軍G2支部、俺行ってみようと思ってんだ」
天井を見上げながら、エースは言った。
「えっ?……海賊がそんなとこ行ったら、捕まっちゃうよ?」
びっくりして飛び起きた私の肩を、エースは諭すように撫でた。
「平気……捕まったりしねぇよ……それより、俺の探してる黒ひげに関する情報が、そこに行けば何か得られるかも知れねえんだ」
「エースの、探してる人の情報が?」
「そう。……それでな、俺にアイデアがあるんだ。
モーダ、これから俺が言うとおりのことを、手紙に書いてみな……」
「手紙……?」
エースは再び寝てしまった……やっぱり疲れてたんだ。
私は寝ているエースのそば、エースが言った通りの手紙を書いた。
起きたエースに、私はその手紙を託した。
「んじゃ、行ってくるぜ。モーダ」
「お願いね、エース……気をつけてね」
炎を上げて進む船に乗って、エースは海軍G2支部へと向かう。
小さな港で、私はエースを見送った。
エースの手には、私の書いた手紙。あんな手紙で、本当に大丈夫なのかしら……。
「エース、本当にその手紙で大丈夫?」
「ああ、任せとけって!」
エースは胸板をドン、と叩いて自信満々。
「捕まっちゃ駄目だよ、エース」
「大丈夫、心配しないでいいよ」
海軍の基地に自分から向かう海賊なんて、聞いたこともない。
「親爺さんとお袋さんと、きっと会えるよ、モーダ」
「うん……」
エースとは短い時間だったけど、本当に楽しかったし、嬉しかった。
エッチなこと、初めてして……ちょっと……ううん、かなり……ドキドキしたし……気持ちよかったし。
「――モーダ」
エースが、私を抱き寄せる。
「エースっ……」
大きな胸に、抱かれた。
ああ……すっごい、ドキドキしてる……。
「……あの続きは、大人になってから、好きな男とするんだぜ……?」
そう言って、エースは私の額にキスをした。
それは甘い甘い、ミルクみたいな時間の終わりの合図だった。
次第と小さくなっていくエースの船。見えなくなるまで、私は手を振った。
あの続きって……何? エース、ねえ、一体、どんなことをするの……?
私が大人になったら、エースはもう一度此処に来てくれる?
そして、あの"続き"を教えてくれる?
だって、私が好きなのは……。
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