『緊縛』


「サンジ君ー、お風呂空いたわよー」
「は〜い…」
その日、ナミさんの次、俺に風呂の番が回ってきたのは、日付が変る15分前だった。



 男嫌いの俺にとって、女しかいないこの船はまさに天国だ。
その上ナミさんとロビンちゃんはまさに好みのタイプ(注:他は激しく除く)とくれば、ここは正しくパラダイスな訳で。
 …強いて注文をつけるとしたら、島に上がるたびに何処へともなく消え、男と葉巻の匂いを着けて帰ってくる、冷蔵庫泥棒のクソゴム船長と、あとは風呂の番のことくらいだ。
 クソゴム船長のことは今はおいといて。



 全員が女、ということは、ある程度予想はしてたけど、とにかく皆が皆、長風呂だってこと。
 長っ鼻なんか軽〜く1時間半は出てこない。よくのぼせねえもんだ。
 マリモは自分の鍛え上げた身体を鏡で見てポーズなんかとってるし…ナミさんは半身浴に凝ってるし、
ロビンちゃんはお風呂でする美肌マッサージなんてのを習慣にしてたりするわけで。
 今日みたいに風呂の順番が遅い日は、日付が変る前に眠い目擦りながら風呂に入るなんてことも、
しばしばだったりする。
「ふあ〜〜〜…」
欠伸をかみ殺しながら着替えを用意し、バスルームへ向かう。
バスタオルとパジャマと下着。それと「あるもの」を忘れずに…。



深夜のバスルーム。薄暗い照明が、雰囲気出してていいかも知れない。
「んっ、…」
しゅ、しゅ。しゅ。
化繊の擦れる音がして、薄い皮膚にそれ―――着替えと一緒に持ってきた「あるもの」―――が。
深く、食い込む。
太股に、細いウエストに、申し訳程度の膨らみしかない白い胸に…。
パンスト…パンティストッキングを、幾つも持ってきて、自分の身体に巻きつけた。
少しきつめに幾重にも巻いて、きゅっと食い込ませた。
「ふぅ…、ん」
ちょっと痛くて、でも…気持ちいいんだ、なんでか…。
魚人の「クロオビ」って奴との戦いのとき、アイツの帯にぐるぐる巻かれたとき。
ほんのちょっと、「気持ちいい」って…思っちゃったんだ…生きるか死ぬかって時だったのに…。



 戦いが一段落したある日、確かめてみた。やっぱり風呂場で、服を脱ぐときに。
試しにネクタイを、自分に巻いてみて…そしたらなんか、痛いのにちょっと気持ちよくて、
ネクタイに食い込んだ自分のウエストがたまらなくヤラシく見えたりなんかして…
そのまました一人エッチは、いつもよりやけに燃えちゃったんだ…。
それ以来…一人で時々、こうやって…するのが好きなんだ…。
なんか、誰かに無理やり縛られて、されてるっぽくて――――…。



男は嫌い。女は好き。エッチなことは、もっと好き。



湯気で煙った鏡に映る、蓋をした浴槽に腰掛ける自分の姿。
細く伸びたパンストが食い込んだ俺の体。小さな膨らみに食い込んだ様は自分ながらドキドキする。
…クソゴムやマリモみたいにもっとでっかい胸なら…いや、あそこまでいかなくてもせめて長っ鼻くらい
あったら、もっとやらしく見えるのに…。
そのまま、興奮に赤く尖った胸の先端をつん、と触る。
「ああっ…!」
びくん、と仰け反る体。
ショーツは穿いたままで、…それを、お尻にきゅっと食い込ませた。勿論前も、おなじようにした。
「んあ…やぁ…っ」
細い、白いショーツの脇から金色のアンダーヘアーがはみ出して、もっと食い込ませると、
ショーツに染みのようなものが広がって…ピンク色の秘肉もはみ出してきた…。
「ああん、…ヤダ…」
食い込ませたショーツの上からも、クリトリスは判った。鏡で姿を確認しながら、布越しに、
ちゅ・と押しつぶした。
「あーーー…っ…!」
思わず声を上げてしまうほど…気持ちいいんだ…。
俺…もしかしてその気があるのかもしれない…なんて思いながら、自分の縛られた姿を楽しみながら、
クリトリスを、ちいさな胸を…弄り続けた……。
「っ、はぁ…ん、あ…あ、」
肌に食い込む痛みが、だんだんと気持ちよくなっていくんだ…。
上気していく自分の顔。この上なくエッチな顔…。 快感が増すに連れて…全身が、性感帯になったみたいで。食い込んでる背中もどこもかしこも、
たまらなくよくなっていくんだ…。



「駄目…もぅ…、駄目ぇ……!」
胸を離れた手が、食い込むショーツをきゅぅっ、と一気に上に引っ張りあげる。
クリトリスと布が擦れる。
その絵から更にきつくきつく擦ったら…――――――!!



「ア・あああ…――――――――っ………!!!」



 火照った体を湯に沈め、ふう、と一息ついた。
体のあちこちに赤く残る、パンストの跡。
「………」
これで満足してる間は、男嫌いは治りそうにない。ま、治す気もないけどね…。



風呂から上がって、ジュース飲もうと思ってラウンジに行ったら、クソゴムがバスタオル抱えて
眠そうな顔して椅子に座ってた。
「サンジぃ…上がったのか?」
「ああ…なんだ、ルフィ。まだ起きてたのか?とっとと寝ろよ」
「…んん?…だって俺、今日仕舞い湯なんだぞ…あの日だから」
「あ。そっか…そりゃ悪かったな」
ふあああ、と特大の欠伸をして、ルフィは椅子から立ち上がった。
そう、女しかいないから、ブルーデーのことも開けっぴろげなわけで。
…ルフィがあの日ってことは俺もそろそろかな…。
「腰痛くてしょ〜〜〜がないんだよ…サンジぃ、あとで湿布貼ってくれよ…温かい方な」
「ヘイヘイ…早く入ってこいよ」
「あ、それと…」
「何だ?まだ用か?」



「…お前、一人でする時の声、でかすぎだぞ…」



「…声?」
「丸聞こえだぞ、んじゃあな」
とルフィはでかい胸ぼよんぼよん揺らしながらラウンジを後にした。ぱたん、と扉が閉まった。



「―――――は?」
何のことだか理解するのに、たっぷり5秒…。
理解した後に沸いてくるのは、この上ない恥ずかしさ………。



「人のオナニー聞いてんじゃねえっっ!! このクソゴムーーーーーッッ!!!」




 
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