『寝ずの番で無くても、ボクは眠れない』







ずっと解けない問題がある。
それは解けないままのほうが、多分いい筈。



知らなくていいことが、この世にはたくさんあるって。
身をもって教えてくれたのは、ルフィだった。



「あれ、綺麗だね……ルフィ。ほら、あの星」
「ん? ああ、ホント……」
綺麗な星がこんなに見られるんだから、寝ずの番も悪くない。
この海域の夜空の美しさは格別だった。
二人で狭い見張り台に座って、降ってきそうな星達をぼんやり眺める。



隣に座るルフィ。ボクはいつも、ルフィに聞きたいことで一杯だ。
こんな時のルフィは無防備で、でもいつも目だけは笑ってないんだ。
聞けない。ボクが聞きたいことはどれもこれも、聞いちゃいけないような気がしてならないから。
なのに聞きたいことだけが、どんどん溜まっていくのはどうしてなんだろう。
見てしまったことは、見なかったことにした方が良かったんだろうか。
この間の島、いつものように自由行動になった時、ルフィは一人で真っ先に飛び出していって。
追いかけたつもりなんかなかった。
ただ、おいしいケーキのお店があるらしいってロビンが教えてくれたから。
島の賑やかな通りを歩いてたんだ。
そしたら、見てしまった。
ねえ、ルフィ。
あれは、誰?
隣にいたあの人。ルフィよりずっと大きな身体のあの男の人。
葉巻を咥えた背中に背負った正義の二文字。
ねえ、あれは海軍の制服じゃないの。ねえ、ルフィ。



どうして海兵なんかと、一緒に歩いてるのさ。



何で腕なんか組んでるのさ。
何で宿に入ってくのさ。


ねえ、ルフィ。


船に戻って、でも誰にも聞けなくて。
ボクの心に仕舞おうにも仕舞えないことがまた増えていく。
ルフィが帰ってきたのは次の日の朝早く。ひどく疲れて、葉巻の匂いが、染み付いた身体で。
ねえ、ルフィ。
聞きたいことはたくさんあるのに。
その目の下の傷のことも。一人のときにとても悲しそうな顔をしていることも。
一杯、聞きたいのに。
何も聞けないまま、聞きたいことだけが増えていく。



そうしてボクは、寝ずの番でなくても眠れない夜を過ごすんだ。





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