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『35号SSS(ルロビ)』
荒れ狂う海の向こう側には、エニエス・ロビー。
あそこに、ロビンがいる。
「放っといたらロビンは殺されるんだろうが!!! 死にてぇわけねェんだから助けるんだ!!!」
「それは勿論そうだけど……!!!」
身体が、頭が熱い。
ナミたちに幾ら宥められ、俺の理屈は只の我侭でしかないって頭のどこかじゃ分かってるのに。
身体は勝手に前へ前へと向かおうとする。
だって、直ぐそこに見えているあの島にいるんだ。
ロビンが、いるんだ。
黙ってじっとなんか、していられねぇよ。
話したいこと、聞きたいこと。
キスもセックスも、抱き合うもの名前を呼び合うのも。
ロビンと一緒にしたいことの、何もかもが足りない。
あの肌に、唇に、もう一度触れたい。
あの声を聞きたい。ロビン、って呼びたいし、ロビンに俺の名前を呼んで欲しい。
笑った顔、泣いた顔、拗ねた顔。一杯、見たいんだ。
ずっと一緒の船で旅をしたいんだ。
だから、俺は追う。
ロビンを追うんだ。
「ロビンはどこだァ!!!!」
気がついたら、勝手に飛び出しちまってた。
この広い海の最果てまで、俺はロビンと一緒がいい。
『フルーツ(スモたし)』
アイツの身体を、何かに例えろといわれれば果実だと俺は答える。
幼さを何処かに残したアイツの若々しさと初々しさは、熟れきっていない果実の青さと似ている。
甘さは足りない。時にほろ苦くさえあり、しかもその味は後を引く。
いつかどこかで食べた、遠い南の島から届いたという赤い果実に、確かに似ているアイツの身体。
ピロートークは、色気のある話題を持ってくるのが普通だろう。
なのに俺の腕の中、たしぎときたら。
「第二船隊の配置ですが、来週の会議に諮ってもいいと思うんです。
あれでは簡単に破られてしまう可能性がありますし……」
ベッドの中でまで仕事の話をする女は、後にも先にもたしぎが初めてだった。
「補給船の構成員も再編成をお願いしたいんです、それに……」
「……ルームサービスでも取るか」
「えっ」
たしぎの独演会をさえぎって言うと、俺は枕元の革張りのメニュー表を手にとった。
「ちょ、スモーカーさん。私は仕事の話をしているんですっ」
「……ああ、わかってらぁ。明日全部紙に書いて持って来い。小腹が空いちまって話が頭にはいらねえ」
「もうっ、スモーカーさんたらっ」
ぷ、と頬を一杯に膨らませ、たしぎは抗議の声をあげる。
「これにするか、……フルーツの盛り合わせ。甘い果物が食いたい」
「珍しいですね、スモーカーさんが甘いものなんて」
「たまにはな……たしぎ、お前も好きなものを頼め」
「はい、喜んで」
たしぎはサイドボートの上の電伝虫に手を伸ばした。
腕の中の果物は、少し甘さが足りない。
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