『TONIGHT』







砂漠の夜は、闇と共に空虚さが支配する。
それゆえに、人は人を求め、一夜を共にする。
「……ペル」
人気の少ない、深夜の宮殿。
ビビ様の部屋。
秘密の逢瀬は、毎夜のように続いていた。
「何でしょう、ビビ様……」
隣にうつ伏せ、顔を俺のほうに向ける人の、何と美しいことか。
シーツを泳ぐ長い髪も、すべらかな背中も。
高貴な人は、どのようなときも高貴なのだ。
そう、こんな、人が欲だけの塊になる時でさえ。
その髪を、背中を撫でる。
「お疲れですか?」
「そうね、ちょっとだけ……」
心地良さそうに、ビビ様は目を瞑る。



ビビ様といると、限りなく満たされる。
そう、身も心も。
そしてもっと満たされたいと、願う。
時に、この高貴な人をたまらなく汚したいと、思ってしまう。



「んっ、……ぅ、」
明け始める夜を惜しむように、身体を三度、重ねる。
ビビ様は俺の上に跨り、俺にキスをする。
「……欲しいわ、ペル。もっと……して」
「わかりました、ビビ様」
目の前で揺れる豊かな胸の先端に吸い付けば、ビビ様は白い喉を見せながら仰け反る。
「あ、うっ…」
ちろちろと蛇のように先端を舐めながら、秘裂へと手を這わせる。
こりっと尖る赤い実を苛めるように嬲り、欲しさのあまりはしたなく口を開く女の入り江へ指をねじ込む。
「んはぁ・ッ!……ぁあ……」
ばさりと乾いた音を立て、長い髪が闇を踊る。
「ああ……ペル……ペル、」
腰をくねらせ、もっともっととビビ様は乱れていく。
飲みこんだ指を離さないとばかりに。
「ビビ様、ビビ様の中はとても温かい……」
「ふ、ぅ……ッ」
そこはとても柔らかく、淫らに温かかった。
指を動かせば、ねちっとした粘性の音を立てる。
浅く、深くを繰り返し、ビビ様が腰を摺り寄せればわざと逃げるように、動きを弱くして欲情を煽る。
「んっ、ペ、ル……ッ」
「……はい、ビビ様」
分かっていながら、あえて言わない。言わせたい。
高貴なこの人に、淫らな言葉を。
それは、ゾクゾクするほどの快楽。
「言ってください、ビビ様?」
「ん、ぁ」



「……指じゃなくて、……ねぇ、入れて……ペル、私の中に、ペル自身を……入れて」
頬を紅潮させながら、覆い隠す言葉で訴える、ビビ様。




「ぐちゃぐちゃにして……犯して……お願い」
ビビ様の口から、このような言葉を聴くたびに、俺は口の端が自然と緩んでしまう。




「わかりました、ビビ様……」
繋げる行為によって、身体は満たされる。
しかし心はもっともっと満たされたいと願う。
最初はビビ様の誘いにただ従うだけだった行為。
それが……今は、どうだろう?




染みのように、黒い部分が、俺の中にじわじわと広がってゆく。




悲鳴のように軋むベッド、その上で俺に跨り、腰を振るビビ様。
「あぁッ、あぁッ、……ア・ああ……ッ!」
使えるべきはずの人は、俺の望むがままに乱れ、淫らな花を咲かせる。
「も、っと、ペル、もっとぉ、っ……」
「ビビ様、もっと欲しいですか?」
「欲しいッ、欲しい、のぉ……ッ」
繋がった部分は火の様に熱く、ビビ様は狂ったように乱れ続ける。
髪も、乳房も、尻も揺らし、白い肌に汗がにじむ。
「中にッ、出してぇ……」
「宜しいのですか? ビビ様」
「いいッ……あ、も、駄目……イク、ッ……、………」





目の裏で飛び散る火花。
堪らない開放感。
俺が仕えるべき筈の、その人は。
俺と、俺が与える快楽の海へ、その身を惜しげもなく投じ、汚される。


「ペル……ッ」
俺の放った白いものに塗れ、ビビ様は満足げに微笑む。
その時でさえ、ビビ様は美しい。



もっと、汚したい。
もっと、もっと。
俺はビビ様に手を伸ばす。
「ビビ様、」



空虚さが支配する、砂漠の夜。
夜の闇のようなこの黒い部分は、朝になっても晴れることは……ないだろう。
おそらく、きっと。



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