幸せな結末
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海の泡になることも、毒リンゴを齧ることも、ましてや100年の眠りに付くことさえ許されない。
俺の腕の中にいる王女様には、何一つ許されていない。
それどころか自らの手で悪者を倒すことが課せられているのだ。
哀れな彼女のささやかな願いを、ほんの少しの寄り道を。
倫理観を建前に糾弾し、非難する輩がもしもいるとしたら。
俺が全部、燃やしてやる。
俺達を暖めながら、闇夜を照らして燃え盛る炎。それは、今の俺の興奮そのままだった。
まだ誰も汚したことのない初々しい身体を、俺が初めて汚すのだ。
どうしたってやっぱり緊張するし、金を払って寝る女しか知らない男としては興奮する。
初めてでは快感よりも痛みが先行するだろうが、それでもいいとビビは言った。
痛みでもいい。寧ろ、痛みでいい。普通の女の子として見られた、その証が欲しいのだと。
砂の上に毛布を敷き、その上に俺のローブを敷いた。ビビを横たえてから、踊り子の衣装を脱がせた。
全裸になったビビの身体は早熟で、胸の膨らみは思った以上だった。
頂点の尖りは綺麗なピンク色をし、白磁の肌は透き通るようだった。
ウエストのラインは人形を思わせ、髪と同じ色の産毛が、三角地帯をうっすらと覆う。
裸になっても高貴な身分の人間からは、どこかしら高貴さが滲み出るらしい。
「……綺麗だ」
お世辞抜きで思った。
「綺麗?……私が?」
ビビが頬をほんのりと赤く染める。
「ああ、ビビは綺麗だ」
そのウエストに触れた。……なんて柔らかいんだろう。
「この綺麗な身体、……全部、いいんだな?」
「はい、全部」
「好きにしてもいいんだな?」
「……エースさんの好きに、してください……」
ビビがぎゅ、っと目を瞑る。唇が僅かに震えているのは、決して寒さのためだけではない。
今だけは何もかも、忘れさせてやろう。それが俺にできる唯一のこと。
俺はベルトに手を掛け、ビビの身体の上に、慎重に自分の身体を重ねた。潰してしまわない様に、苦しくない様に。
小鳥がえさをついばむように、短いキスを唇に何度もした。ちゅ、ちゅ、って音をさせて。
そしてそのキスを、首筋から胸元へと南下させていく。
「あぅ…」
これっぽっちのことでも、ビビには初めてのことで。くすっぐったいのか顔をしかめる。
ピンク色の頂点に軽く吸い付いたら、「いゃっ」とまるで子犬のように嬌声を上げて身体が跳ねた。
無意識に逃れようとするが、頂点を尚も吸い続ける。
「……あん、……い、……ッ」
ミルクの匂いがするのは気のせいだろうか。それとも女の胸は最初からそんな匂いがするんだろうか。甘い匂いがした。
柔らかい胸に顔を埋め、固くしこった頂点は俺の口ン中、舌で転がされている。
強く転がすたびに、ビビが声を上げる。
喘ぎ声というには少々色気のない声だったけれど。
抱え込んでいた手でもう片方の膨らみを弄れば、更に切ない声。
「……い、…ふぁ……あぅ……っ」
重ねた白い肌は、次第と熱を帯びていく。
「ビビ、気持ちいいか?」
「……あ、っ……多分、」
多分、なんて言われたのは初めてだったけれど、飾り気のないうぶな反応は大げさに喘がれるより余程刺激された。
「じゃあ、ここは……?」
固く閉じた両脚の間に、左の手をすべりこませる。
「あっ、やッ!」
瞬間、拒もうとビビの腰が引ける。
「嫌じゃねえ、っ」
逃れようとする身体を左手は追い、薄い茂みの中へ潜り込む。
「いやっ!」
誰にも触れられたことのない場所に触れられ、ビビが声を上げるが、そこはもううっすらと濡れていた。
「あっ、」
探り当てた女の柔肉。ねっとりと濡れはじめたそれを、指でかき回してやる。
「我慢してくれ、すぐに良くなるから……な」
「ふ・っ……」
ぎゅっと目を瞑り、未知の感覚にビビは耐えていた。俺が言い聞かせると、少しだけ抵抗と身体の強張りが収まり、
固く閉じていた脚が震えながら開いた。
身体を移動し脚を更に開かせ、生暖かいその場所に今度は舌を這わせる。
「……ん、っ」
ぴちゃぴちゃと水音を立てながら、少しきつめの性臭のするその場所を、恥垢ごと舐めていく。
「エースさん、そんなとこ、っ……汚いっ、」
ビビが慌てて起き上がろうとし、俺はそれを制した。
「汚くなんかねえ、……綺麗なもんだ」
それに、こうしないと痛みはもっと増すのだから。
出来るだけ、痛みは和らげてやりたいんだ。
誰にも知られたことのない柔肉は薄いピンク色をし、未知の訪問者に濡らされていく。
湿らせるようにそこを舐め続け、唾液をたっぷりと垂らしてやる。
「ぅあ……ッ、」
中指をそこに、ちゅぅ、と埋没させる。温かくて、濡れた内部はざらざらとしている。
「ヒ・ッ…」
「……温かいぜ、ビビの中」
「エース、さ…」
何もはいったことのない場所に初めて侵入した男の指。その感覚に、ビビが身体を強張らせる。
ぎゅっ、と俺の肩にしがみついてくる。
入り口の辺りを撫ぜ回し、小さく出し入れを繰り返しながら親指の腹でクリトリスを弄っていくと、確実に手応えがかえってくる。
「……ぁあ……っ」
喘ぐ声が次第とそれらしくなり、出し入れを繰り返すそこからは、俺の唾液ではないものが溢れ出てくる。
甘い痺れが、ビビの身体を覆い始める。
……なんて、可愛い顔で感じてるんだろう……快感に蕩け始めたその表情に、背筋がぞくぞくする。
「……もう、いいか?」
俺は自分の相棒をトランクスから取り出した。
この緊張に、俺の相棒は既に屹立し、中に入りたがっている。
「ビビ、入ってもいいな?」
「あ、……ッ」
ビビが軽く身体を起こした。屹立した俺の相棒を見て、……恐らく彼女もまた、初めてこんな状態の男性器を眼にするはずだ。
顔に僅かな怯えの色が見て取れる。
「結構痛いかもしれねえけど……我慢してくれるか?」
「……はい、っ」
ビビがごくんと息を呑み、再び俺の肩にぐっとしがみついた。唇を噛み、きつく爪を立てる。
小さな桃色の入り口に相棒の先端を宛がい、ぐ、っと一気に押し込んで……それでも、半分しか入らなかった。
「ひ、っ!!!」
鋭い痛みがビビの全身を駆け巡った筈。ビビが瞬間跳ね上がりかける。
「あ・あああああっ………!!!」
叫びを上げ、小さな身体が大きく仰け反った。文字通り裂くように、俺の相棒はビビの中に押し入った。
「……ッ、く、…っ」
―――結構、きついな……。
半分しか入らねえ……っ。
「……ビビ?」
俺にしがみつくビビを見ると、その目尻には涙が浮かんでいた。
ああ、……やっぱり泣かせちまったかと思う。ちょっとだけ、罪悪感に苛まれる。
「……悪ぃ、痛ぇよな、」
詫びのようにキスで涙を拭ってやり、小さなキスを雨のように無数に降らせる。
腰を抱え込んで体勢を整えて、少しずつ少しずつ……身体を揺らし始める。
立ち上ってくるのは血の匂い。破瓜の証だ。
「……エースさん……、ぁ……」
拭ってもなお、涙は後から続いてビビの頬を濡らす。苦痛に歪む美しい顔からは、国を思う王女の色は既に消えていた。
初めての男との体験に涙し、翻弄される、16歳の少女だった。
緊張と痛みと、ティースプーン一杯の興味。
それが、今ビビの中にある全てだった。
ゆっくり、ゆっくりと腰を動かして、ストロークを段々と大きくしていく。
「……ぁあ、っ……ハァっ、……、ビビっ」
締め付けというより拒否に近いそこは、気を抜くとすぐに脱落してしまいそうなほど侵入を許さなかった。
それでも突き上げを続けると、男は単純なもので相棒は血に塗れながらも確実に快感を得られる。
「……くぅ、…んっ……、エース、っ」
一方のビビは、快感は殆どないはずだ。寧ろ痛みだけかもしれない。
俺にしがみついて必死で痛みに耐えている。
彼女に優しい言葉を掛けてあげたいのに、何も掛ける言葉が見つからない。
もどかしくて歯がゆくて……申し訳なくて……。
「ん、ぅ」
切なげに僅かに開く唇を、キスで塞いだ。今度は貪るような、ねっとりとしたディープキス。
「……ん、ふ……ぅ」
ビビも慣れないながらも俺に答えるように舌を使ってくる。
甘い、キャンディーの味のするキス。
とろける様なこの時間と同じ味。
どのくらいそうしていたんだろう。
突き上げを繰り返しつづけると、俺にも限界が訪れてた。
「……ビビ、……ビビ、ッ」
中には―――駄目だ、中はまずい。外に……。
「エー、ス、さんっ、!!」
すぐそこまで終点が見え、スパートを掛けてピストンを短く激しくしていく。
「あぁ、も、壊、れ、るぅっ……!!」
肩に爪が深く食い込む。ビビは意識を失う寸前だ。
本当に壊してしまうんじゃないかと思うほど、思うほど……俺は強く強く強く――――……。
「ぅあ………あ、ア・……っ、ビビ……っ!!!」
―――間一髪、砂の上に吐き出した。
血で塗れた精液。一寸は中に出してしまったかも知れねえけど。
「……ふぅ、……」
大きく息をついて腕の中のビビを見たとき、はっとした。
下半身が鮮血で汚れ、ぐったりとしていた。
荒い呼吸を繰り返すたびに、胸と腹が大きく上下する。
「あ、……」
気の効いた台詞の1つとして掛けられなかった。痛みにただ耐えさせることしか、出来なかった……。
「……ビビ、大丈夫か?」
恐る恐る声を掛けると、ビビが目を開き、小さく笑った。
「……あ、……平気、です……結構痛かったけど、でも凄く……嬉しかった……」
「馬鹿、痩せ我慢するんじゃねえ……悪ぃ、加減するべきだったな」
「いいえ、本当に嬉しかったの。だってエースさんが、精一杯で、私だけを見てくれて……とても」
「ビビ……」
「本当に、何もかも忘れられたんですもの……世界中に、二人っきりの……素敵な時間を、ありがとう……」
ビビがにっこりと笑った。
その笑顔は、俺が今まで見たことのないほどの、満面の笑みだった。
汚れたお互いの下半身をタオルで拭い、服を着た。
次第と小さくなっていく火の傍に座り、夜明けまでの残りの時間を、他愛のない話をして過ごした。
俺は思いつく限りの色んな話をして聞かせた。
今まで旅をした国の話。魚人だけの国、機械文明の進んだ国、能力者だらけの国。
船に乗り始めた頃の、失敗話。それから、平和で牧歌的な俺の田舎……フーシャ村での小さい頃の話。
ビビは興味深そうに俺の話に耳を傾け、ふと会話の途切れた合間にはキスを繰り返したり、
お互いの身体に服の上から軽く触れたり、
……耳元で甘い言葉を囁きあったり。
まるで恋人同士のように。
そうしていくうちに時間は過ぎ、薪は墨になり、炎は燻りながら小さくなっていった。
馬車はカボチャに、御者はネズミに戻る時間が、近づいていた。
シンデレラが灰被りになり、普通の女の子は王女様になる。
「……もうすぐ夜が明けるんですね」
「ああ」
うっすらと、空が白んできた。辺りの景色がクリアになっていく。
「普通の女の子は、もうおしまいですね」
「……そうだな」
「また、王女様に逆戻りです……私」
名残惜しそうに、ビビの指が砂の上に投げ出した俺の指に絡んでくる。
「ビビ、」
「エースさん。私、もう大丈夫です。今日からは、ご飯もきちんと食べます。泣かないのは無理かもしれないけど、……でも、反乱は必ず止めます」
決意に満ちたその表情は晴れ晴れとし、昨夜あれほどあった哀れさは微塵もなかった。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫」
「……そうか、ならいいんだ」
ビビが思いのほか元気になって、正直ほっとした。
「ありがとう、エースさん……例え一晩でも、私を普通の女の子にしてくださって、愛してくれて……」
ビビの目が、また潤んだ。
「エースさんを愛せて、本当によかった」
ビビが目を閉じると、その白い頬を一筋の涙が伝った。
その瞬間、ジュッと音を立て、炎が消えた。一筋の白煙が立ち上る。
岩陰から、眩しい朝日が差し込んでくる。
「……もう、朝ですね……」
目を見開いたビビの顔。
それは凛とした、王女の顔だった。
「……生きろよ、ビビ」
「ええ……何があっても、必ず生きて見せます。反乱を止めて、クロコダイルの悪事を暴いて見せます。
……ありがとう、エースさん……」
触れるだけのキスをして、一夜限りの魔法は解けた。
急いでキャンプに戻ると、幸いにもまだ皆は眠っていた。ルフィが腹を空かして目を覚ましたのは、
俺達が寝床に潜り込んでほんの数分後だった。
その日を境に、ビビは元気を取り戻した。
不思議がっていたのはナミで、コックは理由はさておきビビが飯を食ってくれることを喜んでいたし、
ルフィ達も然りだった。
俺もまた、顔にも口にも出さなかったけれど、心底安心していた。
その三日後、ユバに辿りつくまであと一日か二日というところで、黒ひげがユバにはいないことを知り、
ルフィ達と別れることとなった。
後ろ髪を引かれる思いだったのは言うまでもない。
けれど、黒ひげがいないと分かった以上、ルフィ達と旅を続けるわけにはいかない。
反乱が止まり、アラバスタに平和が訪れることを心の中で祈りながら俺は西へと進路を変え、また一人で旅を続けた。
それから、更に四日後のことだった。
アラバスタの西にある小さな港町に俺はいた。
ここでも二日ほど黒ひげの情報を得るべく聞き込みをしたが、確たる情報は得られなかった。
また違う場所に向かう為、夜も空けきらぬ内に宿を出た。
港の朝は早い。
まだ太陽が顔を出す前から船着場は人でごった返し、市場は昼間さながらに賑わい、
仲買人が威勢良く競りのために濁声を張り上げている。
「小僧、1つくれるか」
「あいよ、100ベリーだよ」
市場の外で、山と積んだ新聞を売っている小僧から、今さっき刷り上ったばかりだという朝刊を買った。
インクの匂いのぷんとするそれを開くと、一面には大きく、堕ちた英雄の姿。
『元』英雄・サー・クロコダイル。昨日の夜、宿の食堂で耳に挟んだんだ。
クロコダイルの悪事が発覚、海軍によって捕らえられ、七武海の称号を剥奪されたことや、
……アラバスタのクーデターが収まったこと。
二年もの間行方不明だった王女・ビビが戻ってきたことなど。
食堂を我が物顔で陣取っていた船員達は興奮気味に、今しがた耳にしたばかりのニュースを
口角泡を飛ばしながら熱っぽく論じ、
俺はそのニュースに心底ほっとした。
余り飲まない酒を注文し、一人祝杯を挙げた。
『アラバスタの英雄と讃えられた"元"王下七武海・サー・クロコダイル』
『次々と明るみになる悪事の数々』
『アラバスタ乗っ取りを計画』
センセーショナルな見出しが躍り、その下には奴の部下だという連中の顔写真が小さく並んでいた。
どうやら一緒にとっ捕まったらしい。
かつての英雄は、海楼石の手錠を掛けられ、連行される哀れな姿を紙面に晒していた。
「英雄だって皆言ってたのにねえ、分からないモンだよ」
「やっぱり海賊は悪者なんだよ……」
ニュースがニュースだけに積み上げた新聞は飛ぶように売れ、
手にした人々は自分なりにそれについて率直な意見を述べていた。
ページを開くと、そこには国王と共に、ビビの真影が見開きで載っていた。
それは紛れもない、王女の姿をしたビビだった。
美しいシルクのドレスを身に纏い、輝くティアラを被り、
国王と共に大勢の家臣たちに傅かれている、「王女様」がそこにいた。
まるで童話の中から飛び出してきたかのように、美しい姿だった。
勿論泣き顔なんかじゃない。その顔は自らの手で勝利を得、喜びに満ち溢れている。
「……よかったな、ビビ……」
真影に向かってそう呟くと、俺は新聞を閉じた。
新聞をリュックに突っ込み、食料を調達して船に乗り込む準備をした。今度は東の島を目指すことにした。
水平線の向こうからは太陽がようやく顔を出し始め、海を赤く燃やしながら一日の始まりを告げる。
「……さて、俺も行くとするか……」
俺もまた、自分の使命を果たさなくてはいけない。黒ひげを討ち取るんだ。
黒ひげの首を取って親父の元に戻ったら、オヤジに願い出て休暇をもらい、一度アラバスタへ行こう。
ぼろくずのようになりながらも彼女が守りたがった、そして守り抜いた砂の国を見るために。
王女様には祝福の言葉の一つも掛けてやりてぇしな。
幸せな結末は、彼女の元にも訪れた。
いや、彼女が自ら勝ち取ったのだ。
俺の知るどんな童話の王女様よりも泣き虫で、そして強く美しかった王女様が。
「……今度はいつ会えるかな……」
そんなことを考えながら、船に乗り込んだ。
澄んだ青い空の中、太陽は眩しく光り輝いていた。
ビビが勝ち得た幸せな結末を、祝福するかのごとく。
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