「約束のキス」




ペルと初めてのキスをしたその夜、私は熱を出した。
それは私にとって、異性との初めてのキスだった。
恐らくは、ペルにとっても。
ペルの冷たい唇の感触は私の唇にずっと残っていて、あの時のことを思い出すと、そのたびに頬が赤らんだ。




あんなときは、女の子の方が思い切りがよくて大胆なんだって。
恋愛小説に書いてあった言葉は、その通りだった。
じゃあもっと、大胆になったら?
もっと、大胆になったら―――……?




それから数日後の、ペルの勤務の日。
ペルは執務室でデスクワークのはずだった。
私は小さな決意をし、昼食の後、ペルのいるであろう執務室へと向かった。
「ペル、いるかしら?」
ノック無しで執務室に入ると、思ったとおりペルはそこに一人でいた。
古いデスクに向かい、山と積みあがった書類に目を通しているところだった。
本当ならペルはデスクワークなどしない人なのだけれど、戦火で城に仕える者の数も減り、 管轄外であろうと、担当外であろうと、残された者達に仕事は片っ端から割り振られた。
「ビビ様、どうかなさいましたか? 外出でしょうか?」
「いいえ、……ちょっとね」
私は後ろ手に扉を閉めた。
「……ビビ様……?」
ペルは怪訝そうに私を見た。
私は唇を舐めた。


「ペル……カーテンを、閉めて欲しいの」



カチッ、と硬い音を立て、後ろ手のまま扉の鍵をかけた。 この部屋の大きな窓の向こうは中庭で、休憩時間なのか女官達の楽しそうなおしゃべりが聞こえていた。
ペルは少し戸惑った様子で、でも―――頷くと席を立ち、カーテンをゆっくりと閉めた。




”もっと、大胆になったら―――……?"





「ね、ペル……触って」
カーテンを閉め、私とペルは部屋の隅でキスを交わした。
そして私はペルの右手を取った。ドレスの上から、右手を……私の左の胸に触れさせた。
「はい、ビビ様……」
私の胸は年の割りに発達していて、豊かに膨らんでいた。
そして何より今、ドレスの下に本当なら着けていなくてはいけない筈の、胸を覆う下着を着けていなかった。
薄い布一枚。
それを隔て、ペルは私の胸に触れている。
その一枚は余りにも薄かった。
私の胸はペルの手のひらのぬくもりも、その手のこわばりも緊張も、小さな震えさえ―――何もかも感じることが出来た。
ペルにとってもそれは勿論同じこと。
私の胸の柔らかさも、頂点の僅かな硬さも、早鐘を打つ左胸の鼓動も。
白は透ける色だから、布越しに頂点のピンク色さえも見て取れるの……。
「すごく、ドキドキしているでしょう?」
「はい、とても……」
「柔らかいでしょう?」
「……柔らかいです……そして、とても暖かい……」
キスよりもう一歩踏み込んだ私達は、滑稽なほど緊張していた。



「ビビ様……私は今、自分の理性が吹き飛んでしまいそうで怖いのです……」
ペルは目を瞑り、私の胸に触れた手を僅かに動かした。
「あ、ッ……」
それは確実に私の胸の頂点を優しく苛め、私に性的な快楽をもたらした。
「ビビ様、ッ」
ペルが、私を抱きしめる。
「ペル……」
痛いくらいきつく、ペルが……私を抱きしめる。


嗚呼、駄目。
私の理性も、吹き飛んでしまいそうになる。
それでもいい……ペルが、そうしてくれるなら。
ペルにされるなら……私は。
だってそれは、私が望んだことだもの。



"もっと、大胆になったら―――……?"



その答えは、ひどく簡単だった。



「ペル……私……」
「……ビビ様、もうじきチャカが戻る時間です……これ以上は、此処では……」
「あ、……」
「ビビ様、……今夜、ビビ様の寝室にお邪魔しても宜しいでしょうか……?」
「ペル、」
「そして……この続きを、致しませんか……?」
ペルの言葉。
それは、あの疑問の答えだった。

"もっと、大胆になったら?"

もっと、大胆になったら。
そう。
その答え。
ペルも、大胆になるんだってこと……。

待ち望んでいたペルの言葉に、私はゆっくりと頷いた。




そして私達は触れるだけのキスをした。
それは約束のキスだった。




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