「夢」
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――ああ。
眠れねえ……。
喉がからからに渇いていた。
ソファの中、何度目かの寝返りを打った。
深夜の男部屋。
俺のソファのすぐ側に、一つだけ主が不在のハンモック。
この船の船長。
今頃奴はナミと、この船のどこかでセックスの真っ最中の筈。
今日はロビンが寝ずの番だから、きっと女部屋だろう。
―――クソ、どんどん眼が冴えて来やがる…。
眠らなくては、と思うほどに眼は冴え、焦りだけが募っていく。
この船のどこかで繰り広げられている、男と女の秘め事。
男は俺の仲間。
女は男と同じく俺の仲間であり、密かな思い人。
悔しいことに、二人は皆の公認の仲。
見てもいないそれが頭の中に、明確なイメージとなって現われ、俺の思考を乱していく。
裸のナミが、白い肌を惜しげもなく晒して。
ルフィの上に跨って。
でけえ胸揺らしながら、喘いで、腰振って。
ぐちゃぐちゃした音がわざとらしく響いて。
『ルフィ、ん、ルフィ、ルフィ……、!』
泣きそうな声でルフィを呼んで。
オレンジ色の髪が、ばさばさと乾いた音を立てて。
『ナミ、すっげえいいぞ』
『ルフィ、ア・あ――――――――…ッ…!!』
一瞬身体を強張らせて、思い切りのけぞって…。
―――何考えてんだ俺。馬鹿じゃねえか。
ふう、とため息をつき、また寝返りを打とうとしたとき、天井の扉が開いた。
「いや〜、まいったまいった…」
件の船長のお帰りだ。
「ルフィ、お疲れ様だなぁ?」
珍しく疲れた風なルフィに、皮肉を込めて言ってやった。
「おうゾロ、起きてたのか。いやぁ、今日は疲れたぁ…」
ルフィはサンダルを脱ぐと「あ゛〜〜〜〜も゛〜〜疲れた〜〜!」と情けねえ声上げながらハンモックにうつぶせになった。
「疲れるまでヤルからだろ…発情期の犬じゃねえんだからちったぁ節制しろ」
「そうはいうけどなぁゾロ、求められりゃヤルしかねえだろ男はよ…。」
ついこないだまで赤ちゃんはコウノトリが運んでくるなんて真剣に信じてた奴が偉そうな口叩きやがる。
ナミとヤルまで女の裸なんざ見たこともなかったくせに。
クソ。腹立つ。
ハンモックからだらりとはみ出した細っこいルフィの腕。
ナミの身体を抱きしめた腕。
疲れた、腰痛えを連呼する口。ナミの身体中にキスを落し、どこもかしこも余すところなく嘗め尽くしただろう口。
ああ、腹立つ。
許されるものならとっくにぶった斬ってる。
ナミの男として、俺はこいつを絶対に認められねえ。
何だってこんな奴とナミが?
こんな奴、どこがいいんだか。
俺だって人のことは言えねえだろうけど,こいつよりはマシだと思う。
俺のほうが、何万倍もナミのコトを好きな筈なのに。
そう、ナミのことは俺のほうがこいつより絶対好きな筈。
「ああ゛〜〜…ちんこだりぃ〜〜」
「……」
もっと他に言い方はねえのかよ。俺はルフィに背を向けた。
これ以上奴を見てると、本当に斬りたくなってくる。
腹立つ。腹立つ。腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ…………腹立つ。
腹立つ。
とっとと別れちまえ、バカップル。
奪ってしまいたい。
ルフィから、ナミを。
そう、奪ってやりたい。
ルフィにとって一番屈辱的な方法で。
「……」
眠れねえなりに眼を閉じていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。
そして、夢を見た。
ルフィからナミを奪う夢を。
『ゾロ! ヤメロよ何すんだよ!!』
海楼石の檻の中。必死の形相のルフィが叫ぶ。
けれどルフィはそこからは出れない。
『畜生、開けろ…はぁ、だめだ力がでねえ…』
檻に触れれば力が抜ける。能力者の悲しい弱点。
『ハッ、開けろといわれて開けるくらいなら最初から閉じ込めたりしねえよ』
そういって笑う俺の足元に。
後ろ手に縛られたナミが、転がっている。
何かの薬で眠っているらしい。
『何のマネだよ! 何だってこんなこと!』
『判ってて聞くんだな、お前』
頭ワリィな。脳みそまでゴムか?
俺はにやりと笑うと、足元のナミの前に跪いた。
『お前の目の前で、ナミを犯るためだ』
『……!!!』
『お前の目の前で、ナミを犯るっつったんだよ』
俺はナミの服に手を掛けた。胸元を引っ張ると、ブラウスのボタンが弾けて飛んで、でけえ胸が現われる。
『止めろ、俺のナミに触んな!』
檻の向こうで必死こいて叫ぶルフィ。
『ハァ? 俺のナミ? 一人前の口叩くなお前』
クルーに気遣い一つろくにできねえ癖に。
そーゆーとこが気にいらねえんだよクソゴム。
『ヤメローーーー!!!ヤメロヤメロヤメローーーー!!』
檻の向こうのルフィの声、ああウルセエ。叫んだって無駄だよ。俺はやめねえ。
ルフィに見えるように位置を移動し、ナミのでけえ胸に舌を這わせた。
ちゅば、音を立てて乳首を吸い上げりゃ、そこは硬くなる。
『寝てるのに感じるんだな、ナミは』
『――――!!』
『へえ、おもしれえ』
両手で乳房をくにゅくにゅ揉んで、ちゅうちゅう乳首を吸い続けた。
ヤメロ、と狂ったようにルフィが叫ぶのにも構わずに。
乳房は手に吸い付くように柔らかくて、身体は女特有のいいにおいがする。頬を摺り寄せると、きめの細やかな肌がなんとも気持ちいい。
憧れの、ナミの身体。
下へと手を這わす。ミニスカートの中に手を突っ込む。
『…寝てるのに濡れてやがるぜ』
ホラ、見てみろ。
両脚をルフィのほうに広げてみせる。
『っ…!』
『ホラ』
ライトブルーのショーツのそこは湿り、特有の性の臭いを放っている。ショーツを一気に引き摺り下ろし、脚から脱がせてルフィのほうへ投げてやった。
『てめえはそれでシコってろ』
『ゾロっ…!!』
怒りに満ちたルフィの顔。
ああ、おもしれえ。
幾ら怒ってもお前そこから出られねえもんな。
なんていい気味だろう!
背中がぞくぞくする…俺、サドか?
ナミは相変わらず穏やかな顔で眠っていた。
その穏やかな顔と、反応する体のアンバランスはなんとも扇情的で、エロチックで。
ナミの恥部を晒す。アンダーヘアーは意外と濃い。
指で掻き分け、入り口を見つけてその辺で指を這わして突っ込んだ。
ぐちゃぐちゃと濡れた音が響いて。
『中、すげえな』
指に内壁が絡み付いてくる。入ってきた奴を逃がさないとばかりに。そして熱くて、どんどん愛液が溢れてきて、……最高だ…。
『とっとと入れちまおう』
『!!…やめっ…!!!』
檻の向こうのルフィの声が裏返る。
『ゾロ、頼むからそれだけは止めてくれよ!!本当に、なぁ、頼むから!!』
『やなこった』
それだけは止めてくれ、か。はっ、滑稽だ。
それだけは止めねえよ。
ズボンを下ろし、もうびんびんになってる赤黒い俺自身を解放する。
『立派だろ? お前より断然でけえだろうが』
ヒイヒイ言わせてやるから、見てろよ?
寝てるから何もいわねえか?
嘲りの言葉を投げかけると、ルフィが悔しそうに唇を噛む。
ナミを抱え込み、正常位で挿入した。
『っ、…キツ、い』
意外ときつかった。ルフィとやりまくってるからガバガバかと思ったんだけどな。ああアイツの粗末なナニじゃガバガバになんかなりっこねえか?あぁ?
『処女みてに締まるんだな…』
『……!!』
ルフィは何もできず、ただ唇噛んで見てるだけ。
裂くように押し入り、ゆっくりと腰を使う。
汚ねえくらいヤラシイ音を伴って、俺はナミの中を行ったりきたりする。
『っ、っ、…ぅ、』
スゲエ、いい。最高だ。
締め付けられるだけじゃねえ、吸い込まれそうだ―――。
出し入れするたびに胸が揺れ、恥毛同士がこすれあい、意識がどんどん惚けてきやがる…。
『中で、出しちまおう』
『!ゾロッ…!』
『出来ちまったって、ナミは今から俺のもんだからいいじゃねえ、かっ…!』
一瞬、眼の裏に閃光が走り。
俺はナミの中で出した。
幾ら眠っていても、流石に疲れたらしくナミはぐったりしていた。
赤黒いのを抜くと、二人分の体液がどろりと流れ出た。
『そういうことだから、…ルフィ、悪ぃな』
俺は身なりを整ええると、ナミの恥部をバンダナで拭い、細い体を抱き上げた。
ああそうだ、これ忘れてた。
ナミの唇を奪った。ちゅ、と音を立てて。
『世話になったな、いろいろと』
『ゾロ!何処行くんだ?!』
『お前にゃ教えねえよ』
『待てよ、ゾロッ!! 俺はお前をゆるさねえぞ!!絶対、ゆるさないからなぁ!!』
お前に許してもらおう何て思っちゃいねえよ。
ああ、そうさ。
俺は最低な男さ。それで結構。
ナミさえ、手に入れば。
俺はナミを抱きかかえ、わめき散らすルフィを檻の中に閉じ込めたまま、その場を去った。
これからは二人きりだ。
どこか遠くへ行こう。
ナミは、たった今から、ずっと、俺のもの。
目覚めたお前はきっと怒り狂うだろう。ルフィみたいにわめき散らすだろう。そして俺を罵り、憎むだろう。
けどな、ナミ。
泣きわめいたってお前はもう、俺のものになったんだ。
嫌でも俺しかいないんだ。
最低な、この俺しか。
お前のいとしいゴム人間は、あの檻の中、飢えて死ぬだけ。
鍵?
俺の胃袋の中さ。
ああ、なんていい夢だろう。
いっそ覚めないでくれ、永遠に。
いっそのこと、現実になればいい。
「――――?」
水の底から一気に体が浮上するような感覚。
眼を開ければ、そこは男部屋。
「――――チッ、いい夢だったのにな」
そう、夢だった。
最高に残酷で、最高にいい夢だった。
「―――折角手に入れたと思ったのに」
俺はハンモックに眼をやった。ルフィは涎たらして寝てやがる。
「ふん、」
いい気なもんだ。全く。
時計を見ると、まだ夜中。なんだ、結構寝たつもりなんだけどな。
俺はもう一度目を閉じ、そして考えた。
あの夢、現実に出来ねえかな。
海楼石、何処かの海の代物だってあの煙の大佐が言ってたな。何処の海だろう? 次に寄った島で聞いてみよう。
流石に檻は無理だろうが、こぶしくらいの大きさでコトは足りるはずだ。
それからチョッパーに、眠れねえっつって睡眠薬貰うか。
ロープは格納庫にあるな、と、一つ一つ確認していき、そしてはたと我に返る。
「…何考えてるんだ、俺」
馬鹿じゃねえの。
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