『もしも願いが叶うなら』
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『もしも一日だけ、誰かと代われるとしたら……あなたは誰と代わりたいですか?』
ゴールデンタイムのバラエティで、視聴者アンケートなるものをやっていた。
頭の弱そうなアイドルが、道行く人たちにインタビューしてる。
それを受ける街行くサラリーマンやOLは、聞けば誰でも知っているようなタレントや女優、
スポーツ選手の名前を挙げている。
「もしも一日、か……」
もしも一日、誰かと代われるのなら。
オレは迷わずツナを選ぶ。
そんでもって、思いっきり奈々さんに甘えるんだ……息子の特権、ってやつで。
奈々さんの膝枕で耳掃除。爪も切ってもらおう。
お魚の身、ほぐしてもらって。お醤油も掛けてもらおう。
風呂で背中流してもらうのは……アリ? っつか、セーフ?
「いやぁね、ツナったら。甘えん坊なんだから」
奈々さんなら、なんだかんだと言いながら、全部してくれそうな気がする。
もしも願いが叶うなら。
「……やっぱりツナだな、うん。決定」
テレビのチャンネルを野球中継に変えて、オレは来るべき日のための練習を開始した。
ツナの口調の練習を。
(END)
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