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波乱、波乱、波乱
……奈々さんの旦那が帰ってくるらしい。
ツナの親父というより、奈々さんの旦那と言ったほうが俺にとってはしっくり来る。
「手紙が届いたの、帰ってくるみたい……」
絵葉書を手に、うつむく奈々さん。
俺は何も言えない。
俺は今まで、聞かなかった。聞けなかった。
だって奈々さんが言わないんだから、言えないのかと思ったから。
奈々さんも今まで、言わなかった。言えなかった。
だって―――……
うつむく奈々さん。
言葉を失う俺。
どうしたらいい? どうしたらいい?
「……そうっすね……まぁ、ご馳走作ってお迎えるのが筋ッすかね……」
俺はそれだけ言って、何もせずそのまま帰った。
そして次の日。
ツナからも聞かされ、何も知らなかったかのように振舞う。
「へー、よかったじゃねーか。親父さん帰ってくるなんて」
ああ、俺の声、上ずってる。
どうしたらいい?
なぁ、誰か教えて。
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