『祭りノ夜』
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闇夜に閃光。少し遅れて、腹の底に響く程の弾ける音。歓声。
花火を見に、出てきたのに。
このあたりでは一番遅い秋祭りの夜だった。
忙しいさなかだと言うのに、花火見たさに時間を作って屋敷を出た。アフロディーテと、ミロを連れて。
日本で見る花火はギリシャのそれとどんな風に違うのかしら、と出掛けにはそんな会話を弾ませながら、楽しみにして出てきたのに。
今、私たちがいるのはお祭りの会場からはだいぶ離れた、公園の木陰。
花火は夜空を時折明るく照らし、その音も歓声も、お祭りの屋台の賑わいさえも遥か遠くに。
秋の夜なのに、ちっとも涼しくないのは……風がないから? それとも……闇に紛れ、寄り添いあって息を殺しているからだろうか。
「ぁ……、」
太い木に凭れ掛かった私は、体中を弄られる。四本の手は自在であけすけで、強引だった。
「ん―――……ふ……、」殺した筈の息が漏れる。
ねっとりとした舌が……アフロディーテの舌が首筋を這う。ミロの唇が乳房にむすうの口付けを落とす。
乳房。ああ。
服を着ていたはずなのに。引きちぎられた真新しいワンピース。
首筋にあんなに吸い付かれて、きっとキスマークが付けられたはず。
胸元はこんなに大きく晒して、……いったい帰りはどうしたらいいのか……。
考えることは出来ない。だって、今は。
「ゃ…………っ……ああ……」
楽しくて気持ちよくて、そんなことはもうどうでもいい。
潤んだ目で乞いながら、私はわざとに吐息を漏らし、脚を開く。
四本の手は体中を撫で回しながら、探している。私の一番の部分を。
花火を見ると言い訳をして屋敷を出てきたのに、最初から二人とも……否、私自身もそのつもりだったのだ。
遠回りになるけれど、公園を通っていきましょうと言ったのは私。
少しくらい花火の時間に遅れてもいいでしょう、と頷いたのはミロ。
公園に入るなり、歩きつかれたから休みませんかと木陰を指したのは、アフロディーテ。
皆同じことを考えていたのだ。きっと。
頭の奥でぼんやり思い出しながら、私はただ二人が与えてくれる感触に快感に悦楽に浸る。
「ん・や……ッ」
下着をずらされ、同時に潜り込んできた、二人の指。めいめいに好き勝手に掻き混ぜる。
「あ……あぁ……」
ああ。
立っていられなくなる。
頭の中まで掻き混ぜられているようで。
すごく、イヤラシイ音がしてる。腰を無意識にくねらせる。
「沙織」
「沙織」
二人に名を呼ばれ、私は喘いで答えた。
身体が開いていくのがわかる。もっともっと、欲しいから。
「……もっと……ひどく……して」
そして口にする。おねだりの言葉を。
花火は、結局見られなかった。
秋の夜。
ちっとも涼しくない夜だった。
(END)
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