『Mamma mia』




Pazienza、と耳元で囁かれた。
どんな意味? 喘ぎながら春麗が聞き返すと、デスマスクは「今のお前だ」と言った。
「我慢って意味だ」口の端を軽く上げ、デスマスクがにやっと笑う。
デスマスクが軽く腰を突き上げると、春麗の顔が歪みかける。
「ッ、」
「足りないだろ? でもお前はそれを言わない」
「だって……そんなの、」
言えない、とばかりに春麗はかぶりを振った。
それでも身体は小刻みに震え、蠢く花弁はデスマスクにしっかりと絡みつき捕らえて離さない。
「あう……ぅ」
「欲しいものは欲しいって言わないと駄目だって、言っただろう?」
低く囁くデスマスクの声は人懐っこく、聴覚を甘く蕩かした。
「我慢はよくない」



黒髪が波打つ。
涙交じりの声で、春麗が喘ぎのけぞる。
身体はこんなに欲しがっているのに、欲しいと言えない、中途半端に大人になりかけた少女。
国を飛び出して自分についてくるなんて大胆なことをするくせに、瑣末な部分で控えめだ。
これじゃまるで、本末転倒。
こんなことは、幾らでも欲しいといっていい……言って欲しい。イって欲しい。
「ぁん、……あ、あ、あ………」
春麗は声を堪えながら、目じりに光るものを浮かべる。
揺れる小柄な身体。腫れのような胸。
中はこんなにこなれているのに、とデスマスクは今にも達しそうな自身を制しながら、舌打ちする。
「春麗、……春麗、」
名前を呼びながら、デスマスクは春麗を揺さぶる。全身で揺さぶる。
黒髪と銀髪が混ざり合い、白濁と白濁が混ざり合う。
揺さぶっても揺さぶっても、我慢はとうとう飛び出しては来なかった。





隣で眠る幼い顔を撫でながら、”Mamma mia”とデスマスクは呟いた。
なんてこったい、と。


(END)






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