『BAD WITH FOOL』




”オリーブの木と、オリンポスの神々が息づく土地には、
おろか者と天才は生まれるが、本当の悪人はいない”


そんな言葉を聞いたのは、遥か遠い昔の話。
デスマスクがまだ子供の頃だった。


「オレはおろか者で、その上本当の悪人だな……」
デスマスクはひとりごちた。
その腕の中には、静かに眠る春麗。
引っ越したばかりのアパートの部屋はまだどれほども片付かない。
二人が横たわるベッドの周りは、開封を待つ箱が山積みだった。
「本当の悪人はいないなんて、誰が言い出したんだ」
自嘲気味に、デスマスクは小さく笑った。
偽教皇・サガの悪事を知りながら、粛清の名の下、多くの人を殺し……そして、
このいたいけな少女の心を、身体を、自分のものにしてしまった。
「なぁ、春麗……オレはおろか者で本当の悪人だ」
腕の中で眠る春麗に、デスマスクは語りかける。
ぐったりと疲れているのか、春麗は目覚めない。


「けれど、お前を誰よりも愛してる」

細く小さな春麗の身体を、デスマスクはきつく抱きしめた。

(END)





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