『red curtain』
|
教皇の間の、天井から吊り下げられた赤い幕。
その幕の中に二人で隠れて、束の間の逢瀬の代わりにする。
女神と黄金聖闘士。聖域の何処へ行っても人目がある。
隠れることの出来る場所は限られている。
古びた赤い幕の中は、埃っぽい匂いがした。
軽いキスと抱擁の後、
「何日ぶりかしら」と、沙織は聖衣を纏ったまま自分を抱き締めるミロに問いかけた。
「三日ぶりです」
ミロは迷う事無く答える。
「……随分、長く感じたわ」
「私もです」
「たった三日なのに……」
けれど、離れて過ごした三日の間、互いに互いを渇望した。
女神と黄金聖闘士。互いに任務に終われる日々。
「お嫌でなければ」
と言いながら、ミロの唇は沙織の首筋を辿り、鎖骨へ到る。
「……ん、ゃ、」
そのくすぐったさに、沙織が僅かに身を捩った。
「今日はそのおつもりではないのですか?」
ミロの舌が辿った後は唾液で濡れ、そこにミロの髪が軽く張り付く。
「そのつもりだわ、だって……、」
沙織は背伸びをしてミロの耳元に唇を寄せ、そっと囁く。
ずっと会いたかったから、と。
『アテナがいらっしゃらないのです……』
遠くで女官の声がする。それに続いて、神官が沙織を呼ぶ声がする。
沙織は探される身の様だ。
「アテナ、エスケープとはまた大胆なことを」
「今日の進講は退屈なの」
ミロは白いドレスの肩紐を下ろし、柔らかな沙織の乳房に頬を寄せ桃色の頂を唇で挟む。
「ぁ……、」
零れる吐息。切ない声が、狭い空間に響く。
「ッ……、ふ……あ」
沙織はふらつきそうになりながらミロにしがみつき何とか耐えた。
痺れのような甘い疼きは、ミロが触れ口付けた箇所からじわじわと全身に広がっていく。
特別刺激的なことをされているわけではない。むしろ、場所を鑑みてか今日のミロは随分と手柔らかに沙織に触れている方だ。
跡を付けることもなく、確かめる程度で。
けれど、数日、たった数日会えなかっただけで、沙織の身体は飢え、敏感になっていた。
「アテナ、声を抑えて……」
「わかってる……でも、」
声を抑えられるほど耐えらなかった。
待ち侘びた温かさと感触。匂い。視線。声。
「―――ミロが好きだから……」
―――アテナ、お口を塞がせて頂きます。
ミロが沙織に口付ける。
声が漏れないように。幕の外では、神官や女官達が沙織を探しているのだ。
そして慣れた手つきでドレスの裾を捲くり、脚の間に触れる。
湿ったそこはミロを待ちきれず、熱い涙を垂らしていた。
「ん……」
口付けが深くなる。
ミロの指は口をあけて涙を流すそこを更に開き、かき混ぜる。
ミロの指を離すまいと絡みつくそれを、高みへと導いていく。
「……ッ……!」
沙織が乱れる。
ふらつく細い身体を片手で抱きしめながら、ミロのもう片方の手は止まらない。
たった三日。会えなかった、触れられなかった。
「――………あ」
それだけで飢えた身体はあっけないほど簡単に、堕ちる。
消えそうな声と共に、沙織が脱力する。
「アテナ……」
力が抜けた沙織の体を抱きとめ、ミロは紅潮した沙織の頬に愛しそうに頬ずりをし、囁く。
幕の外に漏れ聞こえぬ様、小さな声で。
―――今度は私の番ですよ、と。
そして沙織の胎内に、たっぷりと注ぎ込まれるミロの白濁。
それはあたかも蠍の毒のごとく、全身を麻痺させる悦楽。
今日が終われば次に会えるのはまた何日か先のこと。
それまで、この毒はもたないだろうけれど。
「貴女は私に触れられたかったように、私も貴女に触れたかったのです……」
飢えていたのはミロも同じだった。
教皇の間の、赤い幕の奥で数日おきの逢瀬。そこで繰り広げられる淫靡な行為。
このことを知る者は、当の沙織とミロ以外、”まだ”いない。
|
戻る