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『魔境の池』
「それでは貴鬼、留守を頼みますよ」
「はい、ムウ様。お気をつけて」
幼い弟子に留守を任せ、ムウは館を後にした。
数日分の食料と僅かばかりの薬草を入れた袋を背負い、岩と砂利だらけの山道を歩く。
館の前で小さな手を懸命に振る弟子の姿はあっというまに霞の中に。
聖衣修復に必要な材料である銀星砂を採るため、ムウが目指すのは館から半日ほど登った、標高七千メートル付近だった。
次第と空気は薄くなり、景色はますます見えにくくなっていく。二時間ほど登ったところで、ムウは一旦休憩を取った。
ムウの住まいのある場所でさえ魔境といわれるが、このあたりはその比ではなかった。なにしろ、聖闘士中最強と謳われるムウのテレキネシスやサイコキネシスもここでは使えない。
何かしら未知の力が働いているのか、館から十分ほど歩いた地点から、力が使えなくなる。
ムウが聖闘士一と謳われるその力を使おうとすると、それを何かが封じるのだった。
テレポートさえできれば、ほんの、1,2秒でたどり着ける山の頂まで、半日を掛けて自力で登るしかない。
ムウの師であったシオンもそれは同じで、やはり自力で山を登っていた。
「ふぅ……」
いかに黄金聖闘士といえども、女の身に、この険しい山は堪えるものがある。
揺れる豊かな胸は邪魔でしかなく、月のものも近いせいか腰の辺りがだるい。
こんなとき、女であることはハンデなのかもしれない、という後ろ向きな考えが脳裏をよぎり、疲れているのだと気づく。
ムウは迫り出した岩に腰を下ろし、背負っていた袋から干し肉を取り出すとそれを噛んだ。
幸いにも天候は荒れる気配は無く、無事に済めば明日か明後日には山を下りられるだろう。
「……おや、あんなところに」
ムウは腰を下ろした岩から数メートル離れた場所に、小さな池があるのに気づいた。
水辺には高山植物の花が咲き、蝶がその花の蜜を吸っている。
「こんなところに池なんてあったのでしょうか……」
前に来たときには無かったと記憶しているが、前といってももう半年も経っている。
その間には大雨も嵐もあった。きっとそのときにでもできたのだろう。
「あれは……」
優雅に羽根を動かしながら花の蜜を吸う蝶。それはこのあたりでも珍しい種類のもので、捕まえて帰ればきっと貴鬼が喜ぶだろうとムウは思った。
音を立てずにゆっくりと腰を上げ、そろりそろりと蝶に近づく。
そっと両手を広げ、蜜を吸う黒い蝶を捕らえようムウが腰をかがめた……まさに、その瞬間。
「―――!?」
何かが、ムウの身体に後ろから絡みついた。
蝶が飛んでいく。あ、と手を伸ばそうとしたが、伸ばせない。
「何っ……これは……!」
ムウは自分の身体に絡みつくものに気づき、思わず声を上げる。
それは……今まで見たことの無い生き物だった。いや、これは果たして生き物なのだろうか。
蛇のような不気味で細長い生き物が、何本、何十本とムウの身体に巻きついていた。
紫でもない、灰色でもない。はっきりしない色のそれらは、ぬめぬめとした粘膜質で表面を覆われていた。
ムウの手首ほどの太さのそれらが、ムウの足に、腕に、腰に絡みつき、衣服の上を這いずり回っていた。
ぬたぬた、ぐじゅぐじゅと品の無い音を立てながら、それらは蠢いている。
「く……ッ!」
魔境と呼ばれるこの地で、珍しい花や絶滅したはずの生き物を見かけることは時々あったが、こんな形のものを見るのは初めてだった。
「何だ、これは……ッ、離れなさいっ!」
驚いている暇は無い。ムウは絡みつく触手を引き剥がそうとした。しかし腕にも足にも絡みついた触手がそれを許さなかった。
小宇宙を燃やそうにも、力が入らない。
「やめ……ッ…、あ……!」
一本の触手が、衣の脇の隙間から入り込み、ムウの乳房の上を移動した。
「いや……」
豊かな乳頭の上をぬめりが這い、その感触にムウの口から消えそうな声が零れた。
「あ……あ、」
その触手を皮切りに、脇の隙間から、首筋から。次々と触手たちがムウの衣服の中に入り込んでいく。
「いや、あ、あ……ぁ……」
背中を腹を、そして胸を、触手たちは何を思うのか自在に這いずりまわった。
その感触。
「……や……ッ」
たとえるのなら、それは舌で舐められる感触に一番近いかもしれない。生暖かく湿っていて、強すぎず弱すぎず。
粘液がムウの衣に染みを作る。衣服が不自然な形で押し上げられる。全身、ほぼ全身に触手は行き渡っていた。
ムウの両手と両足は相変わらず戒められたままで、自由にならなかった。
刺激に硬くしこった乳頭の上を触手たちが移動し、更なる刺激を与えられた。
下腹部が疼く。子宮が収縮するのを感じる。それはムウ自身暫く忘れていた、女の悦びだ。
異形の生き物によって与えられる刺激に、ムウは抵抗するどころか立ってすらいられなくなり、その場に膝をついた。
一体どこから、何のために。
そんな、基本的な疑問を考え解決する余裕さえ、ムウには無かった。
触手たちは、件の池から次々と這い上がっていたのだった。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
膝をついたムウは、生まれたままの姿となって、名も知らぬ無数の触手たちにその白い身体を陵辱されていた。
粘液でべとついたムウの衣があちこちに散らばり、風で遠くへと飛ばされていく。
「……ぁあ……ッ、ん、うああ……」
荒地に仰向けになり、白い喉を晒し大きくのけぞった。
強制的にM字に開かされた脚の間に、何本もの触手が所狭しと入り込んでいた。
胎内で蠢くその感覚。ずっと以前に、聖域で交わった男のモノよりも、もっと荒っぽく予測できないその動き。
「は……ぁあ……ん」
腰をもどかしげにくねくねと動かし、より深く迎え入れようとする。
赤く充血したクリトリスにも勿論触手の刺激は及ぶ。小指の先ほどに勃起したクリトリスが、ムウの歓喜を現している。
押しつぶすように、その上を触手が這う。強く舐められているような感触に、ムウの声が更に裏返る。
「あ・アッ……、も……っと……」
ついには、その得体の知れない触手状の生物に、ねだる言葉さえ口にしていた。
柔らかな二つの乳房は、その上を這うものによって自在にその姿を変えていた。
首筋、耳の裏、脇の下、膝の裏。足の指にまで彼らは絡み、這い、蠢く。
「もっと……もっと深く……ぁあああ……」
それが何のためなのかは分からない。ただ、それがムウを喜ばせていることだけは確かだった。
もう、抵抗することはムウの頭の中には無かった。
それどころか、考えることすら出来なくなっていた……それほどの快感だったのだ。
尽きることの無い絶頂が、幾度も幾度もムウを襲う。
ジャミールでの隠遁生活の中で、すっかり忘れかけていた、否、忘れようとしていた女としての悦び。
聖衣修復師としてのムウは、もうそこにはいなかった。ただ異形の生き物にその身を預ける女でしかなかった。
「あ……あぁ……、また……い…く……」
ムウの身体が僅かに硬直し、秘裂と触手の隙間から透明な体液が飛沫を上げる。歓喜の飛沫だ。
これが何度目のオーガズムなのか、ムウ自身覚えていなかった。
いつ終わるとも分からない快楽の渦の中、菫色の長い髪は乱れ、紅潮した頬を歓喜の涙が伝った。
(END)
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