『IN THE WATER』


「まるで人魚じゃの」
優雅に滝壺を泳ぐそのしなやかな肢体を眺めながら、童虎はひとりごちた。
五老峰の大瀑布が作る滝壺に、長い髪が透明な水の中で扇状に広がる。菫色の花が咲いているようだ。




「ムウよ、そんなに楽しいか」
童虎が声をかけると、飛沫を上げ水面から半身が飛び出す。
「ええ、老師。だってジャミールでは泳ぐなんて、とんでもないことですもの」
ムウの白い肌に濡れた髪が張り付いている。瑞々しい肌が水をはじく様は若さの象徴だ。
飲み水さえ貴重な高地ジャミールでは、泳ぐことは贅沢だった。
たぷんと音を立てそうなほど豊かな二つの胸が水面に浮かんでいる。
「そうか。ならよい。いくらでも泳げ、ここはワシの庭じゃ。遠慮はいらぬ」
「老師もいかがです? せっかくお若い身体になられたのに」
「ワシはよい。昔散々泳いだからの」
童虎の修行時代、ここは今よりずっと僻地だった。
街までは遠く、娯楽と言えばここで泳ぐことくらいだったのだ。
滝壺の中の石の数を覚えるほど泳いだ、と童虎は笑う。
「あら、せっかく誘いましたのに」
ムウがぷ、と頬を膨らませる。
子供のようなそのしぐさに、童虎は思わず笑ってしまった。
「仕方ないのう、我侭なヤツじゃ」
「私の我侭は、シオン様に苦情を申してくださいな」
「ああ、また死んだらあの世で言っておくわ」
童虎はやれやれといった様子で立ち上がると、編み笠と上着と靴を脱ぎ、滝壺に飛び込んだ。



周囲を高い山々に囲まれていることもあり、夕暮れは早い。稜線に気の早い日が隠れようとし、あたりは薄暗くなっていた。
二人は時間を気にしながらも、まだ水からあがろうとしなかった。
滝壺で戯れるように散々泳いだ後、浅瀬で岩に腰掛けると、互いの肌を弄り合っていた。
腹から下を水につけ、背中を岩に預けたムウの柔らな乳房に童虎は頬をよせ、冷たい尻や腰を撫で回していた。
肌理の細かなムウの膚。豊饒という言葉を連想させる、成長した女の身体だった。
「お前は聖域に戻ってからというもの、手当たり次第男に手をつけているそうじゃの」
「手当たり次第ではありません、私にも好みがあります」
「すると、ワシは好みというわけか?」
「……そうですねぇ……一応」
「一応とは酷い」
ムウより一回り大きな童虎の身体は一分の隙もなく鍛え上げられ、細かな古傷が背中に、肩に、むすうにあった。
「老師、この傷」
その傷のひとつ、肩にある大きな刀傷のような痕を細い指でたどりながら、ムウは呟く。
「前の聖戦の傷でしょう?」
「ああ、……これは……そうじゃの。冥界でやられた」
「こっちは?」
左の二の腕の、小さな傷。
「これは修行中の傷じゃ。あそこから落ちた」
童虎が顎で示したのは、いつも童虎が座している滝の傍の大岩。
「そういうお前の身体には、傷ひとつない」
童虎の硬い掌は、ムウの乳房を肩を、確かめるようにたどっていく。
傷どころか染みひとつないムウの肌からは、聖闘士という言葉は連想できなかった。
「ふふ。シオン様には随分とお手柔らかな扱いを受けましたから」
「あやつものう、……おなごの弟子は初めてだと言っておった」
やがて日焼けした太い指が、ムウのゆるく開いた太腿の間にたどり着くと、「ん、」と鼻にかかった声を漏らす。
「老師、もう夕方です……」
「若いと一度火がつくととまらぬのでな」
ムウが軽く抗議するが、童虎はそれをあっさりとかわす。
淡い茂みを掻き分け、指を潜りこませる。
「んぅ……あ、」
ムウがくすぐったいのか、肩を竦めた。片側の乳房の頂の赤い尖りを口に含み、舌で転がす。
そのかわいらしい反応に、童虎の下半身がむくむくと欲望を擡げて来る。
「ムウ、」
童虎が名を呼ぶと、喘ぎ声が返ってくる。
茂みの奥では硬くしこった小指の先ほどの実が、痛いほど存在を主張している。
童虎が優しくそれに触れると、ムウの声が切なくなる。
「あ・ああ……ッ!」
白い喉を見せながらムウがのけぞった。のけぞりながら、童虎の肩にしがみついている。
最初は優しく触れていたが、次第に指の動きは踊るように激しくなる。
あ、あ、あ、と消えそうな声を上げ、濡れた髪を振り乱しながらムウが喘いだ。
水面に同心円状の波紋が広がる。
「……老師……あ、……ん、んん……」
腰をすりよせ、ムウが欲しがる。しかしあと一歩のところで最後の快楽を与えず、童虎が一旦ムウから離れた。
「……足を開け、目いっぱいだ」
童虎の命令に、頬を朱に染め、ムウがゆっくりと足を開く。
ちゃぷん、と水の音がし、形のいい膝小僧から先が空気に触れる。
水面が揺れ、菫色の茂みとその奥に息衝く淫靡な花が歪んで見える。
ムウは俯いている。欲しかったものが得られずもどかしいのか、唇をかんでいた。
水面から出ている乳房が上下にゆれ、荒い息をしているのだと分かり、童虎はほくそ笑んだ。
「欲しいじゃろう?」
激しい水音とともに童虎が立ち上がる。雄雄しい猛りが、ムウの鼻先に突きつけられる。
ムウは顔を上げ頷くと、突きつけられた童虎の猛りに細い手を沿え、先走りを滴らせる鈴口へと舌を這わせた。
「……ん、う」
慣れた手つきで肉樹を扱き、ふぐりをやわやわと揉み、赤い舌を絡ませる。
咽返りそうになりながらもその小さな口いっぱいに猛りの先端をほおばる様は、淫乱、としか言いようがない。
水で濡れた身体に、既に夜の帳が降り始めたあたりの空気は冷たいが、ムウの舌が絡んだ童虎のそこだけが熱かった。
十分な奉仕を受けると、もういい、と童虎がムウの顎を撫でて離した。
「老師、……」
口の端から糸を引きながら、切ない眼が訴えかけてくる。もう待ちきれないと。
童虎は頷くと、熱い滾りを待ち侘びるムウに身体を重ね、猛りで淫靡な花を貫いた。 水音に混じり、ムウの声が響く。
「あ、ああ、あ―――……ッ!!!」
一気に根元までムウの中に埋めた。
花襞は童虎の猛りを逃さないとばかりにしっかりとそれに絡みつき、もっと奥へ誘おうと蠢く。
「……ムウ、」
「ん、ふ……」
「良い締りじゃの……」
やっと与えられた快感に惚けた顔のムウの口を吸い、童虎は激しく腰を前後させはじめた。
しんと冷えた闇の中、水音をさせながら絡み合う二つの裸体。
熟れるにはまだ早いが豊かな乳房が、童虎の胸に押し付けられ、窮屈そうに潰れながら揺れる。
ムウが規則正しく喘ぎ、それにあわせて童虎が腰を動かす。
とっくに冷え切った筈の二つの身体はつながった部分を中心に熱を帯びていき、冷たい水に浸かっているにもかかわらず額に汗がにじんでくる。
口吸いは最初は啄ばむ程度だったものが、次第と舌を絡ませあい、生々しいものへと変わっていく。
つながった部分は否応なしに二人を昂らせ、理性を奪い、男と女から雄と雌へと、退化させる。
水中には半濁の粘液が滴り、ゆっくりと底に落ちていく。
「ムウよ」童虎は唇を離し、ムウの耳元に口を寄せた。
「男が欲しければいつでも此処に来るがいい……」
吐息混じりに、童虎は形のいいムウの耳元で囁く。
そしてその耳朶を軽く噛み、外耳を舐めあげる。
「あ、うッ……」
「好きなだけ、抱いてやる……」
「本当……?」
潤んだ目で見上げ、ムウが念を押す。
「ああ、本当……ッ、」
言葉の終わりが途切れる。その瞬間、熱いものがムウの中を一気に迸った。
叩きつけるようなその迸りを子宮で受け止めたムウもまた、言葉にならない声を上げ、頷きながら果てた。
肉樹を、花襞がぎゅうと締め付けた。




「すっかり遅くなってしまって……」
濡れた髪を絞りながら、ムウは遠くを見た。
闇に灯る明かりは、童虎の家の明かりだった。今頃は夕げの支度を整えただろう春麗が、まだ帰らぬ二人を待っているはずだ。
「なんて言い訳いたします?」
「……さあ、どうするかのう」
「無責任な人ですね、老師」
「誘ったのはお前じゃ」
お互い様だ、と笑い合うと二人は遠い明かりの方向へと歩き出した。


(END)



戻る



テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル