『栞』
栞を拾った。
教皇の執務室で、栞を拾った。
「あら、綺麗な花……」
押し花の栞。薄紫の小さな花は、この聖域の辺りでは見かけない花。
「誰が落としたのかしら」
執務室の、本棚と壁の間に落ちていたその栞の持ち主は、一体誰?
持ち主の可能性はすぐに絞られる。
だってこの部屋に入ることが出来る人間は、限られているから。
私……女神のものではないとしたら、もう二人しかいない。
「サガか……シオンよね」
気安く入ることが出来るのは”教皇”以外にいない。ここはそういう部屋なのだから。
十三年間偽の教皇を演じていたサガか、その前に二百年以上も本物の教皇であったシオンか。
きっとそのどちらかが使っていた栞だと思う。何かの拍子にあんな場所に落ち込んでしまったのだ。
「でも、これあまり古くないわ……割と最近のものみたい」
白い厚紙に薄紫の小さな押し花、パンチであけた穴に金色のリボンを通してあって。
誰が作ったのかは知らないけれど、丁寧に心を込めて作ったことが伝わってくる。
顔を近づけると、うっすらと匂いがした。サンダルウッドの匂い。
「………」
私はその栞を、元の場所に戻した。
この世界には、知らない方がいいことは沢山ある。
コレはきっとその一つ。女神としてではなく、女の勘でそう思ったから。
(END)
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