→中学一年生ゾロ子ちゃんの親友ナミ。
「チョコバナナケーキ」
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あの子、ちゃんとひとりで出来るかなァ……なんて、さすがに余計なおせっかいだわね。
それに……今日はさすがに、あの二人の世話は焼いてらんないのよ。
だって今日はバレンタイン。
チョコレートを渡して大好きな相手に想いを伝える日。お菓子会社の陰謀だろうがなんだろうが構わないけど、私の本日一番心を悩ませているバレンタインのポイントは、告白がチョコにのっかってるってところにあるのよね。
だってそうでしょ?
あの大食らい、チョコだろうが何だろうが、差し出されたお菓子はなんだって食べちゃうにきまってるんだから!
今日の私は、あからさまにでっかい紙袋を持って歩いてる。
いくらなんでも、ここまであからさまにチョコレートを持ってくる生徒は他にはいない。校門に先生が待ち構えているかもしれないと思って少し緊張したけど、どのみちそうなったって計画のうち。
伊達に、普段優等生で通してるんじゃあないのよね。
……幸い、教師には誰にも見咎められずに教室にくることができた。
「はよー!!」
「きゃあっ!」
後ろから急に飛びついてきたのは……ルフィ、その人。
「もう、ケーキが崩れちゃうでしょ!」
言ってから、ちょっとしまった、って思う。
「ケーキ!? これケーキなのか!? なんでケーキあるんだァ??」
……もう少しもったいつけたかったんだけど、ま、いっか。
「うまほー」
紙袋に頭、突っ込んで、ニオイかいでるその姿を見ていると……さすがにちょっと自分でも「コイツでよかったのかしら」って疑問に思うわ…………。
でも、まあ、理屈じゃないし。
「いいわよ、もともとアンタにその……あげようと思って持って来たんだからっ」
「ホントにか!?」
「うん。先生に見つかると叱られたり没収されたりするといけないと思って、どのみち朝のうちに食べてもらうつもりだったの」
「わー! チョコのケーキー! わはー2個も入ってるぞ! スゲー!!」
「いいのよ、全部あんたのだから」
言う間に、もう食べ始めてる、なんだかちょっとかわいいなァ……なんて、結構末期症状?
先生に見つかってたら、「放課後、職員室に持っていくケーキなんですぅ〜」とか言うつもりだったんだけど、しかもその分もあるから2個なんだけど。1個はお昼休みまでなんとか隠せば……。
「今日はいっぱいチョコもらっちゃったなァ」
…………なんですって……?
「も、もうもらってたの!?」
コイツの下駄箱、きったない上履き2足もつめこんであるから、早朝下駄箱作戦は絶対無理だと思ったんだけど!
「んー来る途中とか、廊下とか」
ポケットをさぐると、出てくる出てくる、10円のや30円のや、大袋の中から一個だけ、って感じのチョコ。つまり、義理チョコ……っていうか、おそらく、自分たちのオヤツのなかから目の前を走っていくおさるに放り投げただけ、ってチョコの山。
なるほど……上級生どころか、同学年の女子にも「カワイー」とか言われてたもんね、あんた……。
この時期は、チョコを安売りしたりもするから、わりとみんな、おやつに持って来てるし。小動物(大動物かしら)にエサあげてる感覚なのかしらっ。
「……この紙袋あげるわ。とりあえず、入れときなさいな」
「ありはほー」
……お茶も持って来て上げるべきだったかしら。
徐々に、クラスメートたちが教室に入ってくる。朝の挨拶に生返事を返しながら、あたしはぼんやり紙袋の中のチョコを見ていた。
……義理以下でも、ちょっと、嫌かなァ……。
「なにコレ? すごいねー、ルフィいっぱいもらってるねっ」
クラスメートの一人が、覗き込んで、驚きの声をあげる。やにわに、カバンからなにやらオヤツの箱を取り出して、小さな包みをその中にぽいっと。
「ごりやく、あるかもしんないからー」
「な、何? それ」
あきれるあたしを他所に、他の女子まで寄って来て、ぽいぽいとお菓子を放り込む。
中には本当にただのオヤツ……アメやらガムやらまで放り込んでいる。
ルフィは、特に関心はない、様子。
みんなは、一斉にぱんぱん!と手を叩いて。
「今日という日に勝利しますようにっ」
「告白が通じますように〜」
「上手くわたせますよーにっ」
「ルフィ大明神さま〜」
あたしは開いた口がふさがらない。何が起こってるのかしら。
「なんでルフィが大明神なのよ……?」
「さあ? なんとなく……」
「うん。勝ちを運んできそうな気がするよね」
「じゃ、大明神さま、おそなえもの食べといてねー」
……おそなえもの……。
「よかったわね、今日はいっぱい食べるものがあって」
ため息つきながら、最後のひとくちを放り込むルフィに言う。
「うー。腹いっぱいでもう食えねェ……」
「そ……そりゃそうでしょ。2個いっぺんに食べる馬鹿がどこにいるの!」
もう、どこに隠そうかとか、いろいろ考えてたのよ、私は!
腹の中に隠さないでよ、まったく。
「腹、イッパイだからさ、今日は」
紙箱をかたしている私に、机に突っ伏したルフィが呟く。
「……もう、他のは入んねェよ」
急に、変なこと、言わないでよ!
「ウチに来たら、試作品の残りとか、もっといっぱいあるから」
「おぉ。行く、行くっ」
だから。
その紙袋の中身を食べるのは、今日でない日にしてね?
----2004.02.15. AKITOH. Sandy Sandy Sait.----
ルナミ可愛い〜〜〜(はぁと)
ナミの、「義理以下でもちょっと嫌」ってのにうんうん、と頷いたレディ達は多いかと。
朝の、先生が来る前に教室で隠れて食べるって言うシチュもイイ!!
皆さん覚えがありますよね??
可愛いカップルのバレンタインでした。
あきとー様、有難うございます!
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