Junk 2
※下に行くほど新しいです。




●ミスフル。猪梅。

正午に家を出て、座席の硬い市バスに揺られること1時間余り。

家から一番近いと猪里曰くのバス停で降りて、徒歩30分。

撫で肩のせいか、直ぐにずり落ちてくる紙袋の紐を何度目かに直し、塁はため息をついた。

「……どこが一番近いんですの……」

両脇は緑豊かな水田。まっすぐな、本当にまっすぐな農道をひたすら歩く。塁の眉間にはしっかりと皺が。

最寄とは名ばかりのその距離。目指す猪里の下宿先は、このまっすぐな農道のはるか遠く、向こうにポツリとまだ小さく。

いつもなら自転車で行く猪里の下宿先に、今日に限ってバスでやってきたのには、勿論訳があってのこと。

肩に掛けた紙袋の中身を、どうしても猪里に捧げたかったから。

「お、」

下宿先である親類の家の離れの二階が猪里の部屋だ。

そろそろ塁が来る時間だと、台所の冷蔵庫へジュースを取りに行き、ガラステーブルに並べてから窓の外を見てみれば。

まっすぐな農道を、大きな紙袋を肩から下げた塁が歩いてくるのが見えた。

明るい色の髪に、レトロなサンバイザーは良く目立つ。茶色い大きな紙袋をしきりに気にしながら歩く塁はどう見ても疲れている。

ということは、バスで来たんだと猪里は判断した。最寄とは名ばかりのバス停は、頼りにならないほど遠いのに。

「珍しいこともあるとね。……まぁ、ダイエットにはよかと」

呟いた後で、聞こえてたらきっと殴られる、と思った。

「梅星ぃーっ」

窓から身を乗り出し、大きな声で名を呼び大げさに手を振れば、猪里に気づいた塁が立ち止まりやはり大げさに手を振り返した。




●夢のあとさき。猿凪前提御柳×凪。エロお題の続きです。

……早まってはいけないと、抑える気持ちが無かったわけじゃなかった。

けれどあの時はどうしようもなかった。

気持ちを抑えなくてはと思いながらも、抑えることが出来なかった。

御柳さんに逢ったあの日から二、三日。

猿野さんの顔をまともに見られなかった。罪悪感にさいなまれた。

取り繕い、何とかいつもどおりに接した。

次の日は流石に逢えなかった。学校をずる休みした。

でも女って……ずるい生き物だから。一週間もしないうちに、あの日のことはすっかり過去のものになり。

御柳さんにもう一度、逢いたいと思っている私がいる。



猿野さんが嫌いなわけじゃない。

猿野さんとのセックスが苦痛なわけでも。

ただ、満足できなくて……。

もっと違ったセックスを知りたいと言う、単純な……わがままな……それだけの理由だった。



部屋のベッドに、制服のまま横になる。

今日も練習は遅くまであった。帰りに猿野さんと駅前の喫茶店でコーヒーを飲んで、帰り際に……ビルの裏でキスをした。

何も知らない猿野さんはとても優しい。

こんな、猿野さんを裏切ってしまった私なんかには勿体無いくらい……優しかった。

「……猿野さん、」



●黄泉×♀白雪。

大和撫子なんて言葉は死語だと思っていた。



「なに?」

じっと注がれる視線に、白雪は読んでいた本から顔を上げた。

「イヤ、ナンデモナイ」

「変なの」

くすりと笑うと、横髪を耳にかけ、白雪はまた本を読み始めた。

その僅かな仕草。なに、変なの。たった二言に含まれる意味。

お気に入りだという淡い色の浴衣は、幸薄いこの人をより美しく、よりはかなく映えさせた。





「少ナクトモ、ココニヒトリ」

黄泉は誰にも聞こえないような声で、呟いた。

貞淑で控えめなだけが大和撫子では無いはずだ。



●「愛を囁く」↑の続きの黄泉×♀白雪。

言葉なんて、実は思っている程必要じゃないのかもしれない。



耳元で囁く、歯の浮くような言葉の数々。アメリカナイズされた黄泉の、女性に対して並べ立てる愛の言葉はどれもこれも、白雪にはくすぐったいものばかりだった。

「なんだか、恥ずかしくなっちゃう」

「ソウカ?」

「男の人にそんなに褒められたこと、無いもの」

愛していると書いたメッセージを添えた、大輪の薔薇の花束を贈られたこともね、と白雪は付け加えた。

「褒められるのも贈り物も嬉しいけれど……でもねぇ」

「デモ?」

白雪はんー、と言葉を選ぶそぶりをし、そして考えた末に。

「君に愛されてる事実だけで、ボクのお腹は一杯だよ」

「………」





愛の言葉は嘘でも言える。贈り物も金さえ出せばなんとでもなる。

けれど、愛し愛される事実は、嘘や金でどうなるものではない。





「愛の言葉は時々言うから効き目があるんだよ。少なくともこの国ではね」

白雪の言葉に、黄泉はただ頷いて従うより他はなかった。

郷に入れば郷に従えと、昔から言うのだから。



●『干渉しない日』↑の続きの黄泉×♀白雪。

「じゃあ行ってくるね。お昼までには帰るから」

朝から30度を超える真夏日だというのに、白雪は日傘を差して出かけていった。その手には一抱えもある、菊と高野マキとシキミ。

黄泉は白雪を見送ることしか出来なかった。

今日は、彼女のしたいようにさせる日だ。



今日は幸薄い彼女の、かつての想い人がこの世を去った日。

白雪が向うのは、駅を挟んだ隣町にある寺院の墓地。



「……」

白い日傘は角を曲がる。黄泉はそれをクーラーの効いた部屋の窓からただ眺めるだけ。

「俺ハ、ズットソバニイルカラナ」

聞こえなのに、黄泉はそう呟いた。

つないだ手はもう、離す事はない。



●『お姫様抱っこ』ユタ×♀白雪。

「お姫様抱っこ?」 「うん、おれ監督のこと、お姫様抱っこしてベッドまで連れてってやるよ」

キラキラした目で見つめられ、白雪は困惑の表情を浮かべる。

「……ボク、君より大きいんだけど」

身長も体重も、女性である白雪のほうが由太郎を上回っているのだ。由太郎が力自慢だというのは分かっていても、じゃあどうぞ、とその太い腕に身を任せる気にはなれないのが、女心というものだ。

「平気だよ、落としたりしねえよ」

「……重いとか文句言わない?」

「言わねえよ、絶対!!」

「―――ならいいけど……」

由太郎は見た目に寄らず頑固だ。一度決めたら引き下がらない。根負けするなら早いうちだと、付き合ううちに白雪は身をもって分かっていた。

「んじゃあ、抱っこするからな、……よ、っと」

「わ……あ、」

男性にしては小柄な由太郎は、ひょいっと白雪を横抱きにした。

「へへっ、な、大丈夫だろ? 監督」

「……ボク上背あるから重いでしょ?」

由太郎の首に腕を回し、白雪は恐る恐る尋ねる。

「平気だよ、軽いもんだ。だって、欲とおれの二人がかりだしな」

「……あ」

このまま二人が向かう先はベッド。

待っている行為は、勿論。

お姫様気分は、ベッドまでの三歩の時間。



●『昼寝』↑の続きのユタ×♀白雪。

昼下がりの住宅街はこの上なく静かだった。

蝉の泣く声しかしない。

「起きたらカキ氷ね」

「監督、おれイチゴとコンデンスミルクな」

「分かってるよ」

縁側に面した和室で、昼寝の為に白雪は布団を敷いていた。

掃き出し窓に掛けた簾をとおって入ってくる風は心地よい。

「ドンブリ一杯、作ってくれよな」

「……おなか壊すよ」

一枚の布団に二人で入り、麻のケットを掛けて。

「おれ、昼寝って好きだな」

「ボクも」

「なんかわくわくするんだ」

「……そうだね、何でだろうね」

しばしの夢の時間。愛しい人と隣り合って。



●『お泊り』↑の続きのユタ×♀白雪。

「そ、だから今夜は監督のトコ泊まるから、うん、じゃあな、にいちゃん、お休み」

弾んだ声で電話を掛ける由太郎君の後姿を見ながら、ボクは二人分の布団を敷く。

「監督、にいちゃん泊まっていいって言った」

「そう、じゃあ大丈夫だね。でも明日は早く帰るんだよ」

「わかってるって……あれ」

受話器を置いた由太郎君が、ボクのほうを見ながら不思議そうな顔をする。

「監督、なんで布団二人分なんだよ」

「え……だって、」

そりゃあ、ね。

わかっちゃいるけど。一応、形ってモノがあるでしょうに。

「……どうせ一枚しかつかわねえのに」

「まぁ、そうなんだけどね……」

ああ。

年甲斐もなく、顔が赤らんでいくのが分かる。やっぱりこういうのって、ちょっと照れてしまうんだ。

まだまだ、ボクは女の子なのかも。



●『すきなもの』↑の続きのユタ×♀白雪。

「えーと、何々……誕生日、身長、体重、野球を始めたのはいつ……」

今日帰りがけに渡された紙を、家に帰る途中のバスの中でじっくり見た。

なんか細かい字で一杯書いてあった。野球部の内部資料にするんだとはオヤジいわくなんだけど。

「ふぅん、好きな野球選手、駄目だと思う野球選手……わ、きついこと聞くなあ……」

こういうの聞いてなんの資料になるんだろうな。

適当に書いたら親父にはわかっちまうし、……あーめんどくせ。

「……好きな食べ物、好きなもの……」

好きなもの、か。





「監督のイった時の顔とか……」





脳裏に思い浮かべるのは、白雪監督の、あのときのあの顔。

「……って、書けるわけないか……」





なんか、そんなこと言ったらちょっと会いたくなっちまった。

今日はちょっとだけ早く終わったし……監督、家にいるかな。

思ったら即実行、おれは携帯を取り出した。





「もしもし、監督? おれ、由太郎。……今から会えるかな。晩飯? まだだよ……え、作ってくれるの? やった!」



●『呼び名』↑の続きのユタ×♀白雪。

「監督、あのさ」

「由太郎君」

「ん?」

おれが監督、って呼んだら、監督は妙にかしこまった顔でおれの言葉をさえぎった。

「あのね、由太郎君。ボクもう監督じゃないから」

選抜はとっくに終わった。監督はもう監督じゃない。 そんなの分かってる。でも、ずっとそう呼んでたし、今更違う呼び方するのもなんか変だから、猿野もみやなぎも、みんな監督って呼んでる。

「じゃあなんて呼べばいいんだよ」

「……普通に」

「普通って」

「そんなの由太郎君が考えてよ」

「ええぇ……」

普通、ねえ。

っていうかおれに丸投げ? 





「……静」

考えた挙句、静、って呼んだ。

「なに、由太郎」

―――わ。

おれと、監督……じゃない。静。

二人とも、顔真っ赤だ。



●『駄目になってしまいそう』辰羅川×♀白雪。

二人で埋もれた。白い白いシーツの海に。



駄目になってしまいそうです、と、彼は言った。

その目は涙で濡れていた。

荒い息を必死に抑えながら、もう一度言った。

「……私、駄目になってしまいそうなんです……」

「怖い?」

尋ねると、まだあどけなさの残るまなざしが、責めるようにこちらを睨んだ。

「監督、貴女という人は……」

「ふふッ」

むきになってるものだから、ついおかしくて。笑いがこみ上げた。

「ごめんね、つい」





駄目になってしまいそう、か。

もう駄目なのかもしれない。少なくともボクは。

「ねぇ。もう一回、しない?」

「……もう、嫌です……」

だって、と辰羅川君は目を瞑り声を詰まらせる。

「迷うくらいなら、駄目になっちゃえばいいんだよ、辰羅川君」

彼の手を取り、ボクの柔らかな胸に押し当てた。





さっき、2回した。

辰羅川君はひどく貪欲だった。

駄目になるのは、もう目の前だった。



●『今夜限りの関係で……』黄泉×♀白雪。

あの夜は、たしか。

ひどい雨の夜だったのを覚えている。

黄泉が白雪を抱きしめてすぐに、白雪が言い訳のようなことを口にしたのを黄泉は覚えている。



今夜限りの関係で、と。



「随分ト長イ一夜ダ」



自嘲気味に黄泉はつぶやき、口の端を軽くあげて笑う。

あの夜から、黄泉は自宅に帰ることもなく、ずっとこの白雪の家に居着いている。

やがて立て付けの悪い玄関の扉が開き、聞き慣れた足音と「ただいま」の、妙に間延びした声がする。





「オソカッタナ」

「うん、バス一本遅らせたんだ……」



明けなければいい。

夜など、永遠に。

黄泉は心から願った。




●『宝物』ユタ×♀白雪。大雪前提。

監督の部屋の、洋服タンスの上。

古い携帯電話がいっこ、無造作に置いてあった。

赤い携帯。角っこは色々ぶつけたのかちょっと欠けてて、全体が色あせてた。

なんでこんなのずっと置いてるのかなんて、聞かなくてもおれには分かった。





ああ、この携帯には思い出が詰まってんだ、って。

死んでしまってもう帰ってはこない、監督の昔の恋人との。



勝手に中見るなんて、失礼なことをおれはしない。

見なかったフリをする。ただ、それだけのこと。

今の監督の携帯には、おれとやりとりしたメールが沢山沢山入ってるし、二人で撮った写真が沢山沢山入ってる。



過去は過去。

今は今。

未来は未来。



●ジュリマキ。

「ん……っ、この……へん、たい……っ、あ……」

罵る言葉は乱れ、あえぎ声へと変わっていく。

摩季の大柄な体は床に押し付けられ、身動きひとつ取れなかった。

「ああ、変態で結構だ、摩季」

坂本は摩季の自由を奪ったまま不敵に笑うと、わざと音を立ててその頬に口付けた。

ちゅっ、という音に、摩季の頬がかぁっと赤くなる。



そしてその音を合図に、さっきまでDVDを見ていた二人は、男と女の関係になる。



「あぁ……」 後から後からこぼれてくる声を抑えることなど、出来はしなかった。

摩季は眉根を寄せ、襲ってくる快楽の波の中を漂うしか出来なかった。

その波を起こすのは、坂本。

いつの間にか脱がされた服は部屋のあちこちに散らばり、慣れた坂本の指が、メリハリの激しい 白い体を自在に這う。

「ひゃ…・ッ」

その後を、坂本の舌が追う。胸の先端をなめられ、摩季の体がびくんと跳ねる。

「摩季は胸が弱いな」

「う・うるさい……んぁ……」

罵りの言葉は弱く、拳の一つも出ない。

抱かれるたびに拓かれていく身体に、摩季は戸惑いを覚えずにはいられなかった。




●銀魂・山通。一日局長直後。

真選組の屯所を、お通こと寺門通が訪れていた。

先日、お通が真選組一日局長を務めた際の任命証を渡すという名目だ。

既に終わっているイベントでもあり、後先が逆なのだが、イベント当日に近藤が任命状を屯所に忘れるという新人でもやらないようなポカをやらかしたために今日に至っていた。

とはいえ、近藤や土方や沖田は捜査のため不在、夜勤明けの山崎がその役をおおせつかっていた。

「……真選組局長、近藤勲。警察庁長官、松平片栗虎。どうぞ、お通ちゃん」

「ありがとうございます大山」

山崎が任命証を読み上げ、向かい合って座るお通に任命状を差し出すと、お通は恭しく任命状を受け取った。

「いやー、でもこの前は本当に大変だったねお通ちゃん……怪我は大丈夫?」

「ありがとう、私はもう大丈夫だよ」

怪我といっても、お通を人質にとっていた攘夷浪士の刃物が軽くお通の手の甲に当たってかすり傷を負った程度なのだが。

「山崎さんこそ凄かったよ。人質の中に紛れ込んでたのに普通に分からなかったもん」

「あはは……」

それは俺が地味で目立たないって意味かコルァァという心の叫びを抑えつつ、山崎は頭を掻く。

「それはそうと、今日は近藤さん達はいらっしゃらないんですか?」

お通はあたりを見渡す。がらんとしたものだ。

「うん、見ての通り。攘夷派の動きがこのごろ派手でさ、大方出払ってるんだよ」

普段は騒がしい屯所も人の気配は少なく、応接室のあるこの部屋の周囲は静かなものであった。

お通はふうん、と納得したような顔をして、人差し指を唇に当てて目の前に居る山崎を上から下までじっくりと観察した。

「……どうしたの? お通ちゃん」

『顔は地味だけど普通、性格も地味だけど普通……悪くは無いか』

「あのね、山崎さん……」





屯所の薄暗い納戸で、山崎とお通はマジでやっちゃう5秒前だった。

「……本当に俺で良いの?」

「だから、良いって言ってるじゃない。って言うか、山崎さんで良いの!」

「……はぁ(山崎さんが、じゃなくて、山崎さんで、かよ)」

山崎はがっくりと肩を落とした。

お通は山崎に頼みごとをした。それも、とんでもない頼みごとを。

一時はスキャンダルで堕ちるところまで堕ちたお通だったが、敏腕プロデューサー・つんぽにその才能を見出されて不死鳥の如く復活した。

ここまでは世間に知られている話だが、お通によればつんぽとお通は実はまだ会ったことがないのだそうだ。

つんぽは謎の多い男らしく、元々業界でも顔出しはほとんどしないらしいのだが。

それが、来週催されるお通の新人賞受賞を祝う宴に出てくれることになり、初めての顔合わせということになった。

その際、つんぽがお通に『そういう関係』を求めてくるのではないか、とお通の母が予想しているのだ。 この業界、枕営業やお偉方との肉体関係は日常茶飯事。

母ちゃん共々覚悟はしている、とお通は言う。

しかしお通は実はまだ男性経験はなく、そのため少しでも練習を……という訳だ。

「だって、万事屋さんには断られたし……近藤さんは生理的にちょっと……土方さんは目つきが怖いし……。沖田さんは口調が怖いし……」

「はぁ……って万事屋の旦那に依頼したのかぁぁぁ!!??」

「うん、新八君に悪いからって速攻断られたんだ」

「いやまぁそりゃそうだけど……」

乗りかかった泥舟。毒食らわば皿まで。山崎は覚悟を決めた。

「じゃあ、……いいよ。こんな俺でよければ」

「やったぁ♪」

はしゃぐお通を尻目に、山崎の頭の中はダークインザダークだ。

『局長や副長にばれたら絶対殺される……沖田隊長にばれたら一生昼飯おごらされる……新八君にばれたら親衛隊から袋叩きィィィ!』

しかしそんなことは顔には出せない。作り笑いを浮かべる。

「で、何をしよっか……」

「うーんと、とりあえず……フェラチオかな?」

「アイドルがフェラチオとかさらっと言うなぁぁぁぁ!」




●銀魂・銀さち 出来上がり済み

「……気のない振りすんも結構大変なんだぜ」

銀時はソファにふんぞり返り、自分の足の間に跪いているさっちゃんに声をかける。

さっちゃんは銀時の服のジッパーを下ろし、銀時のモノを取り出しかけている。

「穴があったら入れたい盛りの新八と、今ヘンなこと覚えさせたら携帯小説まっしぐらの年頃の神楽だぞ」

「あ、陰毛ちょっとチャックに巻き込んじゃった」

「痛くないように外しとけ……って聞いてるかぁ、さっちゃん、だから新八や神楽の前では……」

「あらぁ、銀さんの股間の洞爺湖もうこんなにおっきくなってる」

「……人のモンに勝手に名前付けんな」

とは言え、銀時はそんなさっちゃんの姿にゴクリと息を呑む。

銀時の好きないちご牛乳にちなんでか、いちご牛乳色のレースのブラとショーツ姿。

しっかり谷間のある胸と、むっちりとした太腿。きゅっとくびれた腰に、すべらかな白い肌。

新八と神楽の前ではさっちゃんには気の無い振りをする銀時だったが、 いないところではばっちりよろしくやっていた。

『こんなやらしい身体してなんであんなに身軽なんだコイツは……っていうか 最初のときより確実に乳でっかくなってんぞ!』

さっちゃんの胸の谷間はブラのお陰だけではなく、外してもちゃんとある。

横髪を耳に掛け、さっちゃんは銀時のモノを、赤い唇でちゅ、と咥えこんだ。

「んッ」

流石元お庭番衆、というべきか。くのいちに性技は必須だとは聞いていたが、実際は噂以上だった。

手と口を駆使し、さっちゃんは銀時のモノをどんどん気持ちよくしていく。

ちゅぱちゅぱといやらしい音を立てながら、亀頭を中心に舐め、竿を扱きふぐりを揉む。

「お、ちょ、待てお前飛ばしすぎッ!」

直ぐに限界がそこまで訪れ、銀時はさっちゃんを制した。

「あら、溜まってるの? いつもと同じよ?」

さっちゃんのこのフェラテクで銀時は堕ちた、といっても過言ではない。

勿論他にも堕ちるに足る理由は沢山あったのだが。

顔良し、テク良し、身体良しのさっちゃん。

少々性格に難があるが、天秤にかければどちらに傾くかは一目瞭然だ。

銀時のモノを咥えたまま、さっちゃんは上目遣いで小悪魔のように微笑む。

『……そんな顔で見られたら直ぐ出ちまうだろーが』

銀時はさっちゃんのブラの金具へと手を伸ばし、何もいわずに外した。

銀時がそうすることの意味をさっちゃんは分かっていて、銀時の手によってブラが取り去られると

「銀さんも好きね」と言い、たっぷりとした両胸で銀時のモノを挟み込んだ。

「おうっ、」

ふにゅん、とした柔らかな感触に銀時は思わず情けない声を出してしまう。

以前は決しておっぱい星人というわけではなかった――むしろプレイそのものがどうであるかが 大事だった――銀時だが、今やれっきとしたおっぱい星人だ。

『柔らけー……』

苺大福でもこんな柔らかくは無い筈だ。

「んふ……カッチカチだわ」

さっちゃんは胸で挟み込んだ銀時のモノの亀頭へとチロチロ、舌を這わせる。

胸でもって銀時のモノを擦ると、カッチカチのモノがガッチガチになるのだ。

風俗嬢真っ青のテクニックは、銀時をすぐに天国へといざなった。

「あ、あ、ちょ、」

「んっ」

銀時の鈴口から勢いよく白濁が迸り、メガネを掛けたままのさっちゃんの顔を、髪を、胸を汚す。

「……早いわ、銀さん」

さっちゃんは少々不満げに、銀時の白濁を指で救って舐める。

「ごめ……や、久しぶりだったからさぁ、あはは」

乾いた笑いと言い訳をしながら、銀時は『だってお前がエロ過ぎるしテクあり過ぎるし』 といい訳のように心で呟く。





「銀ちゃーーん、ジャンプとファブリーズ買ってきたアルよーーー」

「特売のティッシュラス1で買えましたよ!」

玄関の音が勢いよく開く音と神楽の声、定春の鳴き声に新八の声。

「やべッ、帰って来た!」

銀時は慌てた。

「これからっていう時に! 沢山買い物頼んだのに何で今日に限って早すぎッ! さっちゃ……あれ?」

慌てる銀時を尻目に、さっちゃんは既に銀時の脚の間にはいなかった。

「じゃあね、銀さんまた今度!」

さっちゃんは神業ともいえる秒速でいつものくのいちスタイルに着替え、 窓から疾風の如く去っていった。

流石くのいち。

「お前、ちょ、後始末……!」

銀時はチンチンだけ出した状態で、床に白濁が撒き散らされたままだというのに。

「銀ちゃーん、何言ってるアルか」

「ただいま銀さん」

ガラッと銀時のいる部屋の戸が開き、新八と神楽と定春が中を覗く。

「……あ……お……かえり……」

「……」

「……」

中にはチンチンだけ丸出しで慌てている銀時が一人。床には白濁。

「……」

「……」

「いやこれはあの……」

二人と一匹の顔が能面のように凍りつき、ピシャッ! と開けられた戸が閉じられる。

「今日はうちでご飯食べよう、神楽ちゃん。姉上が冷凍食品買い込んでるから」

「今日だけといわず永遠にそうするアルよ、行こう定春」

去っていく二人と一匹。

「ちょっと待てお前ら……痛ッ!!」

新八らを追おうとした銀時が慌ててジッパーを上げると、さっちゃんが金具に巻き込んだままの 陰毛が勢いよく引っ張られて激痛が走った。



「うおおおおおお痛ぇぇぇぇ!!!!」






●所詮この世は男と女(万通)

普段はプロデューサーとアイドルという関係で、当たり前だがプロデューサーの方が立場が上だ。



けれど、ひとたびスタジオを出てその肩書きを外してしまえば、年頃の少女と、年上の癖して彼女にメロメロな男へと変わる。



ホテルの部屋の赤い絨毯は、わざとらしさを何倍にもしてくれる。

「どうぞ、お通殿。おみ足を」

大げさにお通の前に傅いて、万斉はお通の右足に触れる。

「はぁい、お願いしまーす」

スツールに座ったお通が右足をひょいと上げると、万斉は白いニーハイソックス……お通のトレードマークのようなそれをゆっくりと下ろしていく。

細い足が現れ、万斉は恭しげに向こう脛に口付けた。それも、わざとちゅ、なんて音をさせながら。

「……なんか恥ずかしい……」

万斉の一連のしぐさにお通が頬を染める。

「そうでござるか?」

「だって、つんぽさん仕事のときとは全然違うんだもん」

「アレはアレ、コレはコレでござるよ」

仕事の時、万斉はお通に対し厳しい言葉を飛ばすことも多い。 今日も今日とて、お通はスタジオで万斉ことつんぽに新曲の歌唱指導を受けたが、慣れないバラードに悪戦苦闘。

ボロクソに近い言われ方に、涙を堪えた。つんぽさん、なにもそこまで、とスタッフがたしなめる場面もあった。

しかし万斉が厳しいのは、あくまでも仕事だから。

プロデューサーとしてお通をもっと上に押し上げたいからこそ。お通の曲が少しでも売れるようにとの気持ちからだ。

「仕事を離れれば、拙者はお通殿の言いなりでござるよ」万斉は言いながら左足も同じように脱がせ、お通を横抱きにしてひょい、っと抱えあげる。

「わ、」お通は慌てて万斉の首に手を回す。

「さてと、お通殿。お風呂とお食事とお昼寝と……今日はどれを先に致しましょうぞ?」

「えっと……じゃ、お昼寝」

「かしこまりました」

そのままお通は隣の部屋に運ばれる。

女の子なら誰でも好みそうな天蓋付きの大きなベッドに横たえられた。





「当然、沿い寝付きだよネクロマンサー?」

「……勿論デスメタル」

万斉の身体がお通の上に覆い被さる。

今はサングラスでその表情は半分しか伺えないが、優しい素顔だということをお通は知っている。

ゆっくりと万斉の顔が近づいてくる。お通は目を閉じた。

「ん、……」

唇が重ねられ、万斉の手がお通の着物の帯を緩めていき、短い裾を肌蹴ようとしたその時。

「ああっ!!!」

「ん?」

お通の目がぱっちりと開く。

「思い出したっ!」

がばっ、とお通が万斉を押し退ける勢いで飛び起きた。

「4時から月9の再放送があるんだったっ!」

お通は慌ててベッドから飛び降り、帯が緩められた格好のままでテレビの前にしゃがみこんでせわしなくチャンネルを合わせる。

「3時58分……ギリギリセーフ!」

よかったぁ、とお通は胸をなでおろし、緩められた帯をしっかり締めなおしてテレビの前に腰を下ろす。

やる気満々だった万斉はベッドに取り残されたまま。ぽっかり空いてしまった自分の下のスペースをむなしく見遣り、力なくお通に呼びかける。

「……お通殿……もしもし……お通殿……」

「ごめんなさいつんぽさん、先にこれ見させて! 本放送でこの話見逃してたのっ」

さっきまでのムードはどこへやら。

陽気なオープニングテーマが始まると、お通は一緒になってテーマ曲を口ずさんでいる。

「……そうでござるか……じゃあ拙者、ラウンジでコーヒーでも飲んでくるでござる……」

がっくりと肩を落とし、トボトボ、万斉は部屋を後にする。





「……お通殿のいけず……」

無理やりでもベッドに引きずり込むとか、叱責するとか、そのままやっちゃうとか。

方法は他にも有るのだろうが、お通にメロメロな万斉にはそういう無体なことは出来ないのだ。





ラウンジのテーブルにのの字を書きながら、万斉はいじけた顔でドラマが終わるのをひたすら待っていたという。






●鴨また(ちょいフェチ?)



武市に客間へと案内されるその男を見たまた子は、嫌なやつ、と心の中で呟いた。

真選組の参謀、伊東鴨太郎。表立っては敵である鬼兵隊との密談に、こともあろうか真選組の隊服でやって来た。





今にも雨が降り出しそうな空の下、鬼兵隊の戦艦は荒れ模様の海を進む。

空気がべたついていた。また子は甲板の貨物の上に腰掛け、愛用の銃を手に空を見上げていた。

「やはり、少し時間が掛かるようです」

戦艦の中から武市が現れ、また子にそう告げた。

伊東を客間に案内した武市は、古傷が痛むせいで昨夜から床に入ったままの高杉を起こしに行った。

「そうッスか」

「今、着替えをしておりますが、また子さん……その間伊東殿のお相手を――とのことです」

「……了解ッス」

一呼吸置いて、また子は頷いた。



晋助からの命令は絶対だった。また子に拒否権などは無い。

”伊東殿のお相手を”――これは、高杉からのまた子への命令。



こういう命令はよくあることだ。しかし何度経験を重ねても、気乗りはしない。

男ばかりの攘夷派集団の中、紅一点となればこういう役目は自然と与えられる。

今まで属してきた幾つかの攘夷派でもそういう役割は当たり前だった。



戦艦には不似合いなほど、整えられた清潔な和室。

高杉が客をもてなす際にしか使わない客間だ。

伊東は刀を脇に背筋を伸ばして正座したまま微動だにせず、高杉を待っていた。

こんな場所で真選組の隊服を目にすることほど、心臓に悪いものは無い。

「……失礼するッスよ」

また子が客間に入ると、伊東は一瞥をくれた。

「晋助様が来るにはもう少し時間が掛かるんスよ」

「総督殿は体調がお悪いそうで」

伊東は正面の床の間の、古い掛け軸をじっと見据えたまま、入り口に立つまた子と会話した。

「こんな天気の日はね、古傷が痛むんスよ」

「古傷か。あの左目は随分派手にやったようだな……痛々しいことこの上ない」

「痛々しい? 晋助様の左目をやったのは幕府の狗ッスよ」

「そうか」

伊東は鼻先でフッと笑うだけで、また子の皮肉も通じなかった。

嫌な男だ。自分以外の人間を見下しているのが、態度にも声にも表れている。

「来島殿はそれを言いに?」

「……アンタのお相手を、と晋助様からの命令ッス」

また子は後ろ手で襖を閉め、伊東の傍に立った。

伊東は首を傾けまた子を見上げ、にやりと笑みを浮かべた。

どこか爬虫類的なその冷たい笑み。生理的に受け付けない。気持ち悪い、また子は思った。

晋助の命令でなければ、今すぐにでも脳天に風穴を開けてやりたいところだった。

「今から湯を使ってくるッス。少しだけ待っていてくれたら、」

「いや、このままでいい」

伊東はまた子の方に身体を向けると、また子の脚に手を伸ばした。

「少しだけ脚を開いて」

「……ふん」

また子は言われるがままに少しだけ脚を開いた。性急な男だ、と思った。

伊東は立ったままのまた子のスカートをぴらりと捲くり、現れた薄地の下着のクロッチ部分へと顔を埋めた。

「……ッ!」

伊東は割れ目に鼻を埋め、スゥスゥと匂いをかぐように息を吸う。

(何こいつ…変態ッ!)

また子の顔が耳まで真っ赤になる。伊東の頭に置いた手が震える。

伊東は布越しに、蒸れたまた子の性器の匂いを確かめるように呼吸をする。

下着越しにかかる伊東の息に、また子の呼吸が乱れた。

「っ、ちょ……ちょっと……! アンタ何してるんスかっ!」

押し退けようとするが、伊東は退かない。

伊藤はスゥ、ハァ、と何度も呼吸を繰り返す。

「随分と濃い匂いだ」くぐもった声はまた子の性臭を堪能していた。

「……ッ、悪かったッスね……!」

いっそ裸にひん剥かれて、さっさと突っ込んでくれた方がよっぽどましだとまた子は思った。

こういう特別な趣味のある男の相手ほど、いやなことは無い。

(だから身体洗ってくるって言ったのに……!)

一体どれだけ濃い匂いが伊東の鼻を擽っているのかと思うと、また子は穴があったら入りたいほど恥ずかしくなる。

「僕はこういうことの方が本番よりも好きでね。君のような濃い匂いは好みだよ」

(何が好みッスか! ただの変態じゃないッスか!)

伊東は下着越しに舌で割れ目をつつき始めた。

「あっ、や、」

そのじれったい感触に、また子の平衡感覚がおかしくなる。

「やめ……」

膝が震え、バランスが崩れ、伊東共々畳に倒れこんだ。

「……ッ、」

伊東はまた子の上に影を作り、やはりにんまりといやらしい笑みを浮かべ、また子の神経を逆なでするような感想を述べる。

「おや来島殿、下着に染みが」

「ッ…!」

ホラ、と伊東はまた子の下着の、今まで自分が顔を埋めていたところを指でなぞる。

色濃い染みがついている。つ、となぞられ、また子の背筋をぞくぞくしたものが駆け上がる。

「ぁ……あ……」

「いつもそんな風に喘ぐのかね、来島殿は」

「……ぅ、うるさいッス……」

つい、と伊東の指がまたそこへと触れる。人差し指でつう、と何度も行き来する。

しかしそこしか、それしか触れられないことは、生殺し同然でもどかし過ぎる。

もっと貪られれば、いっそ楽なのだ。

「ぁ……ぅ……ッ」

また子の下着の色濃い染みが余計に濃くなる。身体の奥から、はしたない欲求が脈打つようにあふれ出す。

伊東はそれを楽しむように見下ろしながら、緩急をつけ指を往復させる。




●万通バレンタインネタ。(甘)



天人が持ち込んだ底の浅い慣習に踊らされるのはあまり好きではない。

そもそも慣習どころか天人の持ち込んだことだと言ってしまえばそれまでなのだが。

夢見がちな年頃の少女にそんなことを幾ら説いたとしても、暖簾に腕押し、糠に釘。

二月十四日。

たったひとかけのチョコレートに、少女は幼い気持ちの全てを込めて寄越してくる。



「これ、私が作ったんです。慣れてなくてちょっと不恰好なんですけど……」

お通が差し出した、過剰にラッピングされた箱を開くと、まるで宝石の様に鎮座する二つのまあるい小さなチョコレート。

男性に贈るには可愛らしすぎるのではないだろうかと思える、ピンク色の箱にカラフルなリボン。カラースプレーを纏った二つのチョコレート。

忙しい仕事の合間、何度も練習を重ねたのだと言う。

「それはそれは……かたじけない。有り難く頂こう」

万斉は小さな箱を押し頂き、お通の頬にお礼にと口付けをそっと返した。

お通の頬が見る見る赤らんでいく。可愛らしいものだ、と万斉は思った。

今更この日にチョコレートを贈らなくては確認できないほどの薄っぺらな愛情のやり取りしているわけではないだろうに、 忙しい日々の合間にわざわざ気持ちを形にしてくれたことを万斉は嬉しく思った。



底の浅い慣習だと思う。天人の持ち込んだイベントだの行事だのに碌なものはないとも思う。

けれど、悪くはないかもしれない。




●万通猫ミミネタ。



時代は猫耳らしい。 先日デビューシングルがお通の新曲を抑えて8位に入ったあの新人の登場以来、猫耳は芸能界でちょっとしたブームだ。

「猫も杓子も猫耳でござるよ」

「だから私も猫耳ですか? っていうか猫はもともと猫耳ですぅ」

新曲のコンセプトについて話し合いたい、と万斉から電話がかかってきたときから、お通には何となーく嫌ーな予感がしていたのだが、その予感は的中した。

「……細かいことは気にするものではないでござるよ。ちなみに新曲のタイトルは”お前の晩飯ねこまんま”で頼むでござる」

「わかりました……あのぅ、それ私がつけるんですよね?」

お通は万斉の頭に乗っかっている猫耳のカチューシャを指差した。

「勿論。あと猫の手の手袋と尻尾もある」

カチューシャを外してお通に渡しながら、万斉は「時代に迎合するのもアイドルの役目でござるよ」ともっともらしく言った。

まさか語尾はにゃーとかにゃんで歌詞を書けってか! と内心突っ込みを入れていたら、案の定万斉は

「歌詞の語尾は全てにゃーとかにゃおんとかそういうので」

と補足を入れてきた。

「無理なら細川ふみえのにこにこにゃんにゃんみたいな感じでいいでござるよ」

「それ今の若い子知りませんって……あのぅ、猫耳の次ってあります?」

「出会い系で行こうかと」

「それ、どういうコンセプトですか?」

ちなみに出会い系の次はヤンデレらしい。

「お通殿は何も手を加えないのが一番可愛いと拙者は言い張ったんでござるが、スポンサーとかタイアップとかの絡みで仕方なかったんでござるよ」

やれやれでござるよ、と万斉はわざとらしく肩を竦めた。

「……つんぽさん、楽しんでるくせにっ」

「あれ、ばれた?」

お通には何もかもお見通しだった。




●万通『おやすみ』



頭が重い。 後ろ手に襖を閉め、喧騒を背に漸く横になると、酔いが幾分かましになる。

『おや、河上殿はお弱いようで』

まだ酒宴が続く隣の部屋で接待相手の幕吏達が笑いながら言っているのが聞こえ、横になった万斉は心の中でこのザル共めが、と吐き捨てる。

散々飲ませたつもりだが、あちらは酒焼けしていて酔っているのかどうだかわかりゃしない。

『悪ィな、アイツはあんまり強くねェんだ。おいまた子、酒が足りねえ』

『女将に頼んで来るッス、晋助様』

『それと三味線持って来い』

潰れた自分の代わりに、高杉が場を盛り上げようとしている。

襖一つ隔てた部屋は薄暗く少し寒いが、酒で火照った身体には丁度良い。





眠気がじわじわ来ていたが、胸元で振動がした。

火照って腫れた様な指でコートの胸元を探ると、携帯が光っている。

シェルを開くと、寺門通と見慣れた三文字が封筒の絵文字の隣に。

(お通殿からメールか)

メールを開くと、『今どこにいますか おやすみなさい』とだけ書かれていた。

今日は会えなかった。

胸の奥がくっと詰まるように感じるのは、切なさと恋しさなのか。

遅い初恋なのか形容しがたい感情に息が詰まりそうになる。

酔いでおぼつかない指で、そのメールに返信する。

『同じ空の下に おやすみ』と。

送信完了のメッセージを確認すると、万斉は目を閉じて眠りについた。




●三本挿すのは無理でした(近土沖×さっちゃん)



土方と沖田が歩く屯所の廊下は、客間である離れへと繋がっていた。

「とっつァんから慰労の品だァ?」

煙草を咥えたまま、土方は警邏を切り上げさせられ屯所に呼び戻された不満を顔に露にしている。

「そうらしいですぜ。この間うちがとっ捕まえた攘夷派が、思わぬ大物に繋がってたとかで、 とっつァんから隊長格以上にって慰労の品が届いてやす」

まだ開けてやせんけど、と沖田は付け加えた。慰労の品は応接室に置いてあるらしい。

「ま、貰えるモンは貰っとくが、モノより給料に反映させてくれたほうがありがてぇがな。 税金高ぇんだよったく」

「嫌なら死ねば払わないですみやすぜ、土方さん」

「お前が死ね沖田」

「お前が死ね土方」





定番のやり取りをしながら客間に入ると、十畳の真ん中には巨大な段ボール。

それを覗き込む近藤が腕組みをして考え込んでいた。

「近藤さん、どうしやしたか?」

「品ってなんだよ、近藤さん」

「おお、トシと総悟か」

沖田が声をかけたが、近藤は蓋を開けた段ボールを覗き込み、腕組みを崩さない。

「いやあそれがなあ……とっつァんから品が届いたのはいいんだが……」

うーん、と近藤は唸った。

「まさか数が足りないとかですかィ? だったら配給は一番隊から順にお願いしやす」

「何自分だけちゃっかり貰おうとしてんだ総悟」

二人もどれどれ、と箱を覗き込んだ。

「「……………」」

そして言葉を失った。

箱の中には、土方や沖田も面識のあるさっちゃんが入っていた。それも全裸。

「……ぅ……ぅっ……」

口にはギャグボール。涎が口端から垂れ、段ボールの底面を濡らしている。

紅潮した頬。そして、右手首と右足首、左手首と左足首をきつく縛られている。

たわわな乳房も濡れた秘蜜も露になっていた。

膣口には極太のディルドが根元まで押し込まれ、一杯に広がった襞がディルドに吸い付いていた。

「トシ、総悟……どうする……これ……」

困惑の表情の近藤に尋ねられ、土方と沖田は顔を見合わせた。

「どうするって……」

「そりゃ一つしかありやせん」

三人とも、股間は硬くなりしっかりと布地を押し上げていた。





立ち入り禁止、と走り書きした半紙が客間の前に貼られていた。

畳に転がるのは、濡れたディルドとさっちゃんが入れられていた段ボール箱、縛っていた縄。

そして三人分の隊服。

「とっつァんもたまには使えやすね」

仁王立ちになりさっちゃんにフェラチオをさせながら、沖田が目を細める。

後ろからさっちゃんに突っ込みながら胸やクリトリスをいじる近藤も頷く。

「さすがとっつァんだ。俺達に何が足りないかよく分かっている」

さっちゃんは一服盛られているのか松平の命令だからなのか元々スキモノだからか……恐らくは全部なのだろうが、 この倒錯的な行為に不満一つ言わず、積極的に沖田のものを咥え、近藤の律動にあわせ腰を振る。

「んっ、……んぅん……ン、ふ……」

「さっちゃん、いい締まりだなぁ全く」

「口もプロ以上ですぜィ、さっちゃん」

「ふぁ……ん・ああ……ぅ」

男だらけの真選組屯所にこれ以上はない慰労の品だ。

下半身専用ではあるが。





「……早く代われっつーの。あの攘夷派捕まえたの俺だぞ……」

順番を待つ土方は新しい煙草を咥えながら呟いた。






●桃色変態遊戯(土そよ)



「城下で流行っていると耳にしましたの」

にっこり、笑みを浮かべるそよの首から上は普段のまま。高貴な笑みを湛え、簪が揺れる。

首から下は……スクール水着。

「ね、そうなんでしょう? 土方様」

濃紺のスクール水着に身を包んだお姫様。

「…………」

相対する土方の時間が止まった。





細く、くびれも膨らみも殆ど無い幼いそよの身体に、野暮ったいナイロン生地のスクール水着。

胸の二つの小豆が、薄く安っぽい生地を僅かに押し上げている。

いったいそよは臣下になんと言ってこれを用意させたのか、土方はあえて深く考えなかった。考えたくなかった。

姫君に相応しい豪華絢爛な部屋なのに、当の姫君はスクール水着。ミスマッチにも程がある。

「土方様は、お嫌いですか? こういうものは」

「いや……嫌いじゃありませんけど……」

度肝を抜かれた土方は、そよの問いになんとでも取れる言葉でしか返せなかった。

「そよ様は……泳がれますか? そもそもこれは泳ぐ時に着るものですが」

「私、泳げませんわ。でも流行っているんでしょう?」

(泳げないのに着たってのか)

土方は今迄も度々、そよの突拍子も無い行動に驚かされてきた。

どんな行動かというのは――紙面の都合上割愛するが、要するに性的な方向に、である。

そもそも、そよとの初対面からして城を抜け出すという一般的な方向ではあるがやはり突拍子も無い行動だった。

今更、といえばそれまでなのだが。





ジョキ、ジョキ、と裁ちばさみが布を裁つ音が、御簾の中に響く。

土方は手が震えそうになるのを堪えつつ、そよのスクール水着を、渡された裁ちばさみで切っていた。

それも両胸の部分だけを丸く。そよに乞われたのだ。

「……すごくいやらしいですわ……」

そよは己の胸を見て、うっとりとした顔で呟いた。

片方は既に切り取られ、薄桃色の小豆ほどの乳首が、えらそうに硬くなりつん、と上を向いていた。

ふくらみというより腫れのような幼い胸。

(……最初からこのつもりか……)やれやれ、と土方は小さくため息をついた。

本来の役目を果たす事無く布は哀れ、倒錯的な行為のスパイスとなり塵となる。

それでもそよの言うとおり、いやらしい光景ではある。正直、土方は嫌いではない。こういうプレイは。まさかお姫様相手に、できるとは思ってもいなかったが。

最後の数センチを一気に裁つと二つ目の丸い生地が新畳の上に落ち、そよのもう一つの薄桃色の乳首が露になった。

「失礼致します、そよ様」

裁ちばさみを自分の脇に置くと、土方は露になった両の乳首を武骨な指でそっとつまんだ。

「っぁあ、っ!」

そよの顔が快楽に歪み、嬌声が上がる。乳首が弱いのを土方はよく知っていた。土方の舌が片方をチロチロと舐め始めると、乳首は硬度を増す。

「は……っ……土方様……っ」そよの小さな手が土方の頭を抱いた。

「そよ様、」

そよが崩れ落ちる。畳の上に倒れたそよのうえに土方がいつものように影を作る。

「こういう格好では出来れば海辺でした方が興奮すると思うのですが……」

「ぁ、……」

濡れた乳首を、土方の指が軽く押す。くにくにと捏ねる。

「んっ…、」じれったさに、そよの踵が畳を擦る。

「そよ様の立場上、そういうわけにもいきませんが……」

土方は再び裁ちばさみを手にすると、スクール水着の股間部分を横に、一気に切り裂いた。

「や、」

胸と同じく幼い陰部が露になる。まだ薄い恥毛すら生えていない生まれたてのような土手と、色づき顔を覗かせる芽。

「……今度は是非、海辺ででも」

刃を畳みながら土方が言うと、そよは怯えと期待の混じった顔で、……頷いた。

「ええ……そう……ですね」

細い脚が開いていく。そよの手が、切られた水着の股間の部分を上に捲り上げる。

「海で……したいですわ、是非……連れてってくださいませ」

ひじかたさま、とそよに名を呼ばれ、土方は絶対に、と約束してその場所へと顔を寄せた。





御簾の中はスクール水着だったものの残骸と、白濁を拭った懐紙が散らばっている。

「大体俺が夏に休みなんざ取れるかねえ……」

それらをかき集めながら土方は一人ごちた。

「海かぁ」

土方の傍には、あられもない格好で畳に横になるそよ。

拭いきれなかった白濁を腰の辺りにつけたままで。

土方はそよにちらりと目をやった。可愛らしい尻が目に入った。

……もう一度、やりたい、と思った。





「……夏にはもう少し大人になってる……よな……?」






●万通



刀の目釘を抜く万斉の手元を、お通がじっと見ていた。

『そんなに珍しいか?』と言う代わりに万斉がちらりとお通を見遣ると、お通は「私、初めて見るんです」と万斉が期待していた答えを呉れた。

「刀の手入れなど、じっと見ていても大して面白いものではござらんよ」

と万斉は苦笑した。

柄をニ、三度手の甲で叩くと、錆のような血の塊が柄の根元から畳に落ちる。

「……」

わくわくしていたお通の表情が、一瞬にして凍りつく。

「おや」

干からびた肉塊の破片も、ついでに落ちてきた。

「……だから、面白いものではござらんと言ったのだが」

塊と欠片をつまみ、万斉は脇に置いた塵箱にそれを棄てた。

「刀は、人を斬る為にある」

万斉の言葉に、お通は瞼を伏せ頷いた。





(ついこの間切り捨てた幕吏のものだ)








●万通(万斉余裕無し)



お通の半開きの唇を、指先でそっとなぞる。

あどけないそれは柔らかく、瑞々しい。

簪を抜き、髪留めを外してやると艶やかな長い髪が背中にさあっと流れる。

自分を見上げている潤んだ瞳に映る己が、何処か戸惑っているように見えて、万斉はく、と息を詰めた。

憬れをかたちにした彼女の微笑みが、余裕に見えた。

胸の奥に戸惑いの焔を感じた。

どこまでも忌々しい、己。





(むちゃくちゃにしてしまいたくなる)






●祝い船(万通・エロですがひたすら暗いです)



密談用にと手配する屋形船は船頭も浪士崩れで、端から分かっているらしく終始無言だ。ただ黙々と櫂を動かす。

だから都合がいい。賑やかな灯りが降り注ぐ三島楼の方ではなく、薄暗い古町の方へと船を出してくれるから、鬼兵隊はいつもこの船頭に頼む。

ふんだんに運ばせた酒と、一組の布団。たまにはいいだろう。鬼兵隊の軍資金の殆どとまでは行かないが、少なく見積もっても半分は万斉が稼いだものなのだ。

資金流用のこれくらいで咎めるほど、高杉もけちではない筈だ。





船頭が川岸を蹴って船が進む。

ぼんやりとした灯りだけの、天井の低い狭い部屋。

緞子の布団に横たえれば、お通は飲んでもいないのにもう頬を染めていた。

「……つんぽさん、」部屋の隅で膳に並べた徳利に口を付けて冷を流し込む万斉に、お通が声をかける。

「そんな呑み方、とでも言いたいのか? お通殿」すぐに二本開け、万斉はお通に圧し掛かった。

酒臭い口でお通の口を吸い、乱暴に帯を解く。

「ん、ふ、ん、」

露にした乳房はぷっくりと膨れている。

万斉は乳房に頬を寄せ、熱を持つ双つを揉み、痛い程に愛撫した。

「あぁあっ、や、っ」

いつもよりも優しさが少ないその仕草に、お通の手が万斉を拒もうとし、万斉はそれを軽くいなし、顎を捕え、また口付ける。







出合って今日で、丁度一年になる。

なのに、こんな祝い方しか出来ない。





豪奢な花束や綺羅を磨いた着物を贈り、甘い言葉で頬を染めさせられれば、どんなに楽だろう。

そんな児戯に浸れたらどんなにかいいだろう。

出合って一年。相変わらず万斉は人斬りだ。

今日も人を斬ったその足で船に乗り、その手でお通を抱き、末期の水だと死者に唾を吐いた口で口付けている。





罪ばかりが重なっていく。





冷たい尻を掴み、思い切り打ち付け、打ち付け、打ち付ける。

万斉はお通の女陰ではなく、まだ慣れぬ尻穴を攻め立てていた。

お通が窓枠にしがみ付いている所為だろう、小船が揺れる。それでも船頭は何も言わない。

「ふぅっ、ぅ、う……ぁ、あっ、ん、ん!」

律動に合わせ、喘ぎとも我慢とも取れる声。快楽よりもまだ痛みが先に立つのだろう。逃れようと腰が左右にくねり、横に結った髪がばさばさと揺れる。

「もっと、締めろ」

低い声で耳元で命じれば、お通が尻に力を入れる。きゅ、と中が窄まり、万斉自身が締め付けられ、刺激される。

「中に出すぞ、」

「いや、や、です、」

ダメ、とお通が首を横に振る。

「――聞けぬな」

たわわな乳を後ろから揉みながら、打ちつけを激しくする。

「あ、や、いや、いや……」

いや、という声が泣きそうになった時、万斉は呻きと共にお通の中に盛大に放出した。





緞子の布団の上で声も上げずに頬を濡らすお通の隣で、万斉は横になったまま何本目かの徳利を口にした。

あ、と思ったときは既に遅く、零れた冷が顎を伝い首に流れ、緞子を濡らした。

(こんな祝いがあるものか)

己の愚かしさに、川に飛び込んでしまおうかという気になる。

万斉は僅かに開いた小窓の向こうを見遣った。

夜鷹が茣蓙を手に柳の木の下にいた。





優しく出来ない。

愛する形は何時も不器用で、罪ばかりが重なっていく。










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