サンプル(0*4)
 

 

眉間の皺、少し伏せられた目、長い指。

おまけに滲み出る大人の色気付き。

 

 

ただ煙草を吸うって行為が画になるって凄いよなぁ。

そんなことを考えながら大き目のクッションを抱えて床にごろんと寝そべる。

俺の視線の先には0。

何をするでもなくソファーに沈んで煙草を吹かしている。

思考の海の中に絶賛ダイブ中ってとこでしょうかね。

0さんは俺といるときは結構こんな感じ。

いまいち掴みどころのないマイペースな人だ。


 

煙草の煙がゆらゆらと色んな形に変わるのをぼんやりと見つめてみたり。

特に会話をするわけでもなくゆっくりと流れていく時間。

小さめの音量でつけっ放しのテレビはくだらない通販番組。

俺が捲る雑誌の音。

普段は喋り倒すのが好きだったりするけど、この人といるとこういう時間も悪くないなぁと思う。

ただ一緒にいるだけで幸せなんて我ながらかなりお手軽だ。


 

「4君」

急に雑誌に影が落ちて至近距離で名前を呼ばれた。

「ぬおっ!?」

びっくりして顔をあげるといつの間に移動したのか0さんが覗き込んでいた。

あまりに唐突だったからちょっと心臓がばくばく言ってる。

自他共に認めるヘタレの俺にそういうのはやめてください…

「びっくりさせないでくださいよ!」

まだばくばくしている心臓あたりに手を当てて0さんに抗議する。

「ごめんごめん」

0さんはちっとも悪いと思ってなさそうな顔で笑いながら手を差し出してくる。

余裕な態度が何だか悔しくて、出された手を無視してクッションに顔を埋めた。

……ダメだ。

俺はこの人といると、どうもかっこわるい駄々っ子になってしまう。

情けないが自分では何故かコントロールができない。

いくつなんだよ俺…

 

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