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エピローグ. 「見ていたかい?私は望みを叶えたよ。 この国はもう安心だ」 そう言って、古くなってしまった1枚の写真と、彼女からの手紙を取りだす。 「私は充分に生きたよ」 大総統になるという願いを叶え、国を変え。 そして、自分が任せられる人材を見つけ、この国を託した。 彼女の弟も、すでに亡くなってしまった。 もう彼女を知る人間は自分だけになってしまっていた。 「今頃、君たちは姉弟で仲良く過ごしているのだろうね」 少し、妬けるなと呟いて写真に写る少女にキスを贈った。 写真に写るのは顔を赤くして顔を膨らませている少女。 その後ろにはまだ若い自分が笑って立っている。 「君はまだ、私を嫌いにならないでいてくれているだろうか・・・」 瞳を閉じて、心の中にいる少女に笑いかける。 「私は、これからもずっと君と生きていくよ」 その声は、もう『声』になる事はなかった。 目を閉じた男の力ない手から写真と、少女の残した手紙がひらりと落ちた。 『 ―ロイへ あんたがこれを見る頃には、もうオレはこの世界にはいないんだろうな。 ロイと出会えて幸せだったよ。 こんなオレでも、愛して貰えた。 誰かを心から愛する喜びを知った。 それが苦しい事も知った。 オレは無くしたものは多かった。 神様なんて信じちゃいない。 だけどな。 あんたに会ったことだけは奇跡だったのだと。 少しだけ、いない神様に感謝したよ。 いつか、お互い必要とし合って、その背中を求め合って。 そして。 心が並ぶことができたのはいつだったかな。 それでも、あの時から。 オレはあんたの元を去ってしまったから。 何も言わず。 オレはあんたのために『おんな』になることはできなかったから。 知られる前に。 必要とされている間に。 あんたがオレを愛してくれているこの幸せな間に。 そのままのオレで。 オレの姿で。 あんたが愛してくれたこの姿のままで、あんたの中に留めておいて欲しかったから・・・。 オレが姿を消したその理由を知ったら。 あんたは何ていうのかな。 いつかのあんたのように、オレの胸倉を掴んで怒るのかな。 それとも。 ・・・悲しむのかな。 それをあんたに聞くことも、確かめることもオレにはできない。 これをあんたが読むときには。 オレは・・・もうここにはいないから。 でもきっと。 あんたは。 涙を流さなくても、心の底でないてるんだろうな・・・。 オレのことをすっかり忘れろとは言わない。 だって、きっとできないだろ? オレという人間が、あんたの側にいた事は変えられない事実だし、 あんたの中からオレの存在を消すなんて。 優しいあんたにはできないだろ? ロイ。 オレは、最後まで。 いや、これからもあんたを愛し続けるよ。 だからどうか願っているよ。 あんたが自分の力でこの世界で生きること。 自分の足で立って前に進んでること。 オレが愛したのは、そういうあんただから。 これからも、オレが愛してるあんたがこの国で自分の願いを叶えて、 最後まで生きていく事を願う。 そうじゃなきゃ、今からでもあんたの事嫌いになってやるからな。 覚悟して置けよ。 じゃあ、元気でな。 エドワード・エルリック―』 |
| . | 天国できっと二人幸せに。 悲恋ネタ…やってしまいました。 管理人は悲恋が好きではないのですが、こういうエンドはありかなと。 話よりもまず先に思いついたのは詩でした。 その詩を元にこの最後のエドの手紙を書き、話を作り上げました。 花の画像は内容と関わらせたくて色々探してみたのですが、見つからずで…それがちょっと悔やみどころ。 1.軍での話なので銀時計の画像を…。 2.枯れた黄色い薔薇。 黄色はエドの髪、『枯れた』は失くしたモノがあるというイメージで。 3.手紙の画像があればよかったんですが…。あえなくベッドシーツのイメージで白の画像。 4.真っ白な花束の画像が欲しかったです。 この話に合わない豪華な花束の画像はあったんですが(苦笑)。 無理矢理、花束から零れ落ちた花びら…という感じの画像を選びました。 5.「君を忘れない」という花言葉の花の画像を探しました…。 紫苑という花の花言葉だそうです。 素材では見つからず、花言葉の辞典で見つけた写真が青い花だったので。 6.2話の枯れた薔薇が再び咲きました。 彼女はもういないけれど、彼らの中で咲いています。 みずみずしい黄色の薔薇の花びらを。 7.一つの終焉に赤い花束を。 彼らは空の上で永遠というもう一つの話を紡いでいくだろうから。 薔薇の花束は流石に合わないので、1輪の赤い薔薇で…。 |