「ご奉仕しましょ」 放課後の星奏学院。 部活動へ集中するもの、下校に急ぐ生徒達の醸し出す空気で賑やかな外とは反対に、人々の出払った校舎は静寂に包まれていた。 その中で赤みがかった髪を揺らし、軽快なステップで日野香穂子が歩みを進める。 目的地は音楽準備室。彼女が唯一会いたいと望む人物の居るであろう場所。 果たして、香穂子が軽くドアをノックすれば彼、金澤紘人の応えがあった。 「おう、お前さんか…何だ?」 にこにこ笑顔の可愛らしい香穂子の様子に、書類片手に奮闘している金澤の顔も緩む。 似たような書類の束が積まれている机の上を一瞥すると香穂子の顔もちょっと曇る。 「悪いな、仕事が立て込んでいるから今日は練習の成果も聴いてやれないが…」 沈み込んだ香穂子の雰囲気を察して金澤が苦笑混じりに言うのを慌てて首を振って微笑み返す。珍しく…といってはいけないが、こうやって金澤が真面目にデスクワークに励んでいるのを見るのは、香穂子にとってかなり珍しい光景だ。 猫を構ったり生徒に軽口を叩いたりする金澤を見慣れた香穂子の目にはとても新鮮に映った、 素直にそれを伝えるとさすがに金澤は頭を抱えた。 「一応は教師、だからな。しかし、お前さんの目に映る俺の立場って…」 ため息をつきながら金澤は肩をすくめた。 香穂子の方はおかしくてたまらないといった風に微かな笑いが止まらない。 それでも疲れた感じがする金澤に同情したものか、首を傾げて何か考えていた香穂子は突然ぽんと両手を合わせてにっこりと言った。 「先生、お疲れですよね」 「ああ、まあな」 何も考えず返事をした金澤は、次の香穂子の言葉に文字通り全身を硬直させた。 「それじゃ、及ばずながら日野香穂子…先生にご奉仕させて頂きます」 今ではメイド喫茶やそれに似た店が氾濫しているので、別段何気なく聞き逃してしまえる単語であるが、今は校内。しかも自分は教師、相手は教え子。 教え子に『奉仕』される教師。ほのかな恋情が二人の間にあるとしてもそんな設定は淫靡な空気が滲み出る。 目まぐるしく色々考えはするものの、身体は動けない。 一言も発せない金澤の様子にも動じず、香穂子はそれは楽しそうに白い繊手を教師に差し出した。まるでそんな『奉仕』は金澤相手でなくても慣れているようで、奥歯をぎりと噛み締めるが、そんな矜持も次に香穂子がどう動くのか邪な期待の前に消し飛んでしまう。 そして、期待は裏切られなかった。 「…ぅあ…」 「あ…そこですね。それじゃもっと…んん…!」 「い…いつっ…」 「ご、ごめんなさい!力入れすぎちゃって…」 「ああ、大丈夫だ。…気持ち良い…」 「わ!本当に?」 「てててててててっ、急に握り締めるなっ」 「優しくしてあげますね〜」 椅子に座ったままの金澤の背後に立って、香穂子はリズミカルに肩を叩いて揉んでいた。 家族に好評だというそのテクニックを駆使して頑張る香穂子の姿が健気で、そんな彼女に一瞬でもあるまじき妄想を抱いた自分を叱咤しつつ、金澤は身体から黒いものが解れて消えていくのを感じた。 そんな至福の時間も終わりが近づく。 そろそろ本当に仕事に戻らないとまずい。彼女にしても練習しなければいけないだろう。 「ん…でも、もう少し…」 未練がましく下を向く香穂子がいじらしく、金澤は黙って席を立った。 「そこまで一緒にいてやるから…ほら」 差し出された手に目を見張った香穂子が次の瞬間嬉しそうにすがるのを金澤は目を細めて見遣った。 手と手が触れ合えるのはほんの一時。 廊下を通り、校舎のエントランスに来る時には二人とも言葉少なくただゆっくりと歩いているだけ。 ただそれだけでも自分達だけの時間が流れているようで嬉しい。 「あ…香穂子ー!」 楽しそうにしている香穂子に目を留めたのは同級生らしき少女。 ぱたぱたと駆けてくる少女は可愛いレースに包んだ袋を香穂子に差し出した。 「誕生日でしょ?おめでと!これプレゼント、甘い物が好きって聞いたから」 「わ…ありがとう…!」 菓子の包みを受け取り、それ以上はないというぐらい可愛い笑顔で香穂子が言葉を返す。 立場がないのは近くにいる金澤だ。 だが、それを聞いて今日の香穂子の行動に全て合点がいく。 一言言ってくれても良かったのに。 だが、変なところで気を使って意地っ張りなこの少女はきっと黙ってにこにこと傍にいるのだろう。 「あ…あの、先生?」 何となく離れがたくなって、ついつい香穂子の目指す森の広場まで一緒に来てしまった。 さすがの鈍い香穂子も不審な表情で金澤を見遣る。 「あーその、な」 「はい」 「肩揉み、結構気持ちよかった…ありがとな。礼に今度奢るから」 ぽつりぽつりと恥ずかしげに言葉を出す金澤に見る見るうちに香穂子の顔が明るくなった。 「やった!私のは愛情たっぷりですから、お礼も高くつきますよ。覚悟しておいて下さいね」 人気が少ないことをいいことに、大胆にも香穂子は金澤の耳元に口を寄せて囁いた。 そんなタイミングを待っていたのは、実は香穂子だけではなかった。 「ああ、望むだけやるよ…誕生日、おめでとう」 抱き締められるという不意打ちにびっくりした香穂子の少し開いた唇にかすめるように自分のを落としてから、金澤はもう一度だけ強くその華奢な身体を抱く。 二人の姿を隠すように一瞬強く風が吹いたのは、粋なファータの計らいか、短い抱擁を邪魔立てする者は誰もいなかった。 |
ヤッバイですよ〜!!ミヤミド、未だにニヤニヤ笑いがおさまっておりません!!(爆) とゆーコトでですね!!この度いつもお世話になっておりますkuresaさんから、こんなに素敵なSSをいただいてしまったのでございます〜!! 実を言いますと、今月ミヤミドの誕生日だったんですよ〜。んまぁ、月入ってすぐの日なんで今ではとっくに過ぎてしまったのですが、そんな私の誕生日記念に、kuresaさんが私の大好きな金日で・・・!!というのと、ミヤミドはやっぱりギャグとラブ甘が好きなんだなぁ、とこちらの作品を見ていて改めて認識致しました。 と言いましても、ミヤミドはこの通りギャグが書けないのですが・・・・良いなぁ〜。ギャグがあり、かつラブラブもあるってミヤミドの大好物でございますよ!!!(壊) エロい妄想をする金やんが良いですよねっ!!んでも最後、チューする時にはとっても格好良く決まっていて「さすが大人!」と胸をときめかせていただきました!更に健気で可愛い香穂子ちゃんがたまりませんっ!!!そりゃあ金やんでなくても「ご奉仕」なんて言われたらエロい妄想を致しますよ!!!むしろ私が香穂子ちゃんに「ご奉仕」を・・・!!(←誰か止めてやって下さい) ってコトで、変態だってのがバレちゃうので(え)この辺で留めておきますねっ!! 改めましてkuresaさんへ、本当にありがとうございました!!(お辞儀) |