「決断」

 

雨が静かに降る日の午後。王女・スピカは読書を中断すると、ハンカチを取り出して目に当てた。

「ウゥッ。何て、切ないお話なんでしょうか・・・・せっかく結ばれたのに、愛する人と離れ離れになってしまうなんて・・・・」

スピカが読んでいたものは、城の中にある図書館から借りてきた悲恋小説である。
2人の出会いは些細なことから始まったが、やがて愛し合い、結ばれたと思ったのも束の間。本の世界では身分が絶対の世界だった為、身分違いの2人の恋は無残にも引き裂かれ、離されてしまったのだ。
スピカは元々感情移入しやすい性格の為、例えフィクションだと分かっていても、胸が引き裂かれそうな悲しみを感じて涙をこぼしたのである。
そしてスピカが泣いてしまった原因はもう1つある。何となくではあるが、自分の恋と本にある恋が似たようなものだと感じたからだ。
悲恋ではないのだが、スピカには生まれる前から婚約者がいるらしい。しかし、今はその婚約者の存在を無視して親衛隊長・レグルスと恋仲にある。
唯一の肉親・父親にそのようなことを伝えられる筈もなく、この仲を公に出来ないことはつらく、レグルスと一緒にいることに何の不満も抱かないだけに、婚約者の存在がスピカに重くのしかかっているのだ。
もしもスピカが、その婚約者と本当に結婚することになったら・・・・?それはレグルスとの関係が終わるということである。

「ウゥッ。レグルス、さん・・・・!私たち、ずっと一緒ですよね・・・・?こんな風に、引き離されたりしたら・・・私、は・・・・!」

そう考えるだけでスピカは悲しくなってしまって、泣くことしか出来なかった。天気も、スピカの悲しさを象徴するかのように雨音が若干強くなったような気がする。
このままいたら、完全に悲しさに心を支配されてしまうだけだ。何か明るいことを考えなければとスピカは思ったのだが・・・やはりそれは、愛する人・レグルスの力が必要だった。

「・・レグルスさんに、会いに行きましょう。お仕事中かもしれませんが・・・お顔を見る位なら、許されますよね。」

スピカは自分を納得させるようにそう言うと、涙をきっちりと拭いてから立ち上がり、部屋を出た。
恐らくレグルスが現在いると考えられるのは、自分の執務室か、剣や魔法を練習する練習室のどちらかだろう。スピカの部屋から近いのは練習室の為、まずはそちらに赴いてみることにした。
練習室に近付くと、炎や氷の魔法を打ち込んでいたり、男性たちの気合の入った「はぁっ!」「たぁっ!」などの掛け声が聞こえてきてとても活発的だ。頑張る男性たちは素敵だなぁ、などと思いながら、スピカは練習室に足を踏み入れた。

「あの、すみません。お邪魔します・・・・」
「スピカ様!?これはこれは、ようこそいらっしゃいました。」
「敬礼!!」

一瞬練習室の空気が静かになったのだが、スピカの姿を認めた途端、その場にいた者たちは全員、スピカの前に跪いてお辞儀をしたり敬礼をしたりした。

「あっ・・すみません!皆さんの練習を妨げるつもりはなかったので、どうぞ続きをなさって下さいね。」
「畏まりました!お気遣い、感謝いたします。」

こうして、再び練習室に掛け声や熱が戻ったのだが・・・・見渡してみた感じ、どうやらレグルスはいなさそうなことに気が付いた。
このままここにいても時間の無駄だろう、レグルスの執務室に行こうかとスピカが踵を返そうとした、その時だった。

「あ、姫様だ。」
「えっ?ミザールさん!?」

そう、スピカの方にゆっくり歩いてきたのはスピカの親衛隊員の1人・青い長い髪と背の高さが印象的な美男・ミザールであった。

「ん・・・バザーの時以来、か?」
「はい、そうですね!あの時は、楽しかったですよね!とってもお世話になりました。」
「いや。俺も、楽しかった・・・・ところで、どうしたんだ?姫様。魔法の練習、か・・・?」

確かに、スピカがここに来る用事の1つとしてそれが含まれることもある。しかし今回は違う為、スピカは首を横に振った。

「いえ。実は、レグルスさんを探しに来たんです。」
「レグルス・・・・?そういえば、さっきまでここにいた。」
「えっ?本当ですか!?その後、どちらに行ったか分かりますか?ミザールさん。」
「ん・・・誰かに呼ばれて、どっかに行ったような・・・・」
「ウゥッ。ミザールさ〜ん、その『誰か』と『どこか』って分からないでしょうか?」

ミザールのボケは今日も爆発中である。ミザールは「うぅ〜ん・・・」と考えていたが、その後ポンと手を打った。

「・・思い出した。国王様に呼ばれて、玉座に行ったような気がする・・・・」
「お父様に・・・・?レグルスさんが、ですか?」

スピカが驚いてそう言うと、ミザールは少し首を傾げた。

「・・よくあることだけど・・・そんなに不思議だったか?」
「えっ?よくあること、なんですか!?」

スピカは一度だってそんな話をレグルスからはもちろん、父親からも聞いたことがなかった。その為、非常に驚いてしまったのだ。

「あぁ・・・レグルス、国王様のお気に入りだから。」
「そうなんですか〜。ちょっとだけ、嬉しいです・・・・」
「・・・そういえば、姫様とレグルスって、付き合ってるんだっけ・・・?」

ミザールに改めてそう聞かれると恥ずかしいが、スピカはコクンと頷いた。

「はい、そうです・・・・」
「・・レグルス、姫様の話をしてる時、いつも幸せそうだ。順調な印だな。」
「えっ・・・?レグルスさんが、私の話を?」
「ん・・・レグルス、すっかり姫様にゾッコンだから。」
「そんな・・・ですけど、嬉しいです・・・・」

ついのろけてしまったスピカだったが、ミザールはそんなスピカを温かく優しい瞳で見つめた。

「・・姫様やレグルスを見てると、恋愛っていいなって思う・・・・」
「えっ?あの、ミザールさんは、お付き合いしている方は・・・?」

スピカがそう尋ねると、ミザールは静かに目を閉じた。

「・・・いない。片思い、だから・・・・」
「そうなんですか!?ですけど、ミザールさんの恋ならきっと叶います!私、応援してますね。」

スピカがそう言うと、ミザールは目を開いて微かに笑った。

「・・姫様・・・俺のこと、勇気付けてくれるんだな。ありがとう・・・・」
「いいえ、そんな!私の方こそ、ありがとうございます。それじゃあ、長話してしまってすみません。失礼しました。」
「あぁ・・・じゃあ、また。」

こうしてミザールと別れたスピカだったが、その心は温かくなって、悲しみはほぼ払拭されていた。
どうやらレグルスに会わなくても、今日はこの温かい気持ちを持続していられそうだ。スピカはルンルン気分で部屋に帰ろうと思ったのだが、やはり気になるのはレグルスと父親のことだった。

「・・レグルスさんが、お父様と仲が良かったなんて知りませんでした・・・・ウゥッ。でも今そこに私が行ったら、お父様がどう思うでしょうか?レグルスさんも、ビックリしちゃいますよね。ここは1つ、何か話題を作ってから行かないと・・・・」

そう思って考えてみたものの、厳格な父親を前にすると話すことさえためらわれてしまう。レグルスはすごいなぁ、などと思いながらスピカが「うぅ〜ん、どうしましょう・・・・」と深く考えていた、その時だった。突然スピカの視界が真っ暗になったのは。

「キャアアァッ!!あ、あの、これは・・・・!?」
「スピカ・・・当ててみてごらん?」

こんなに色っぽくスピカの耳元で甘く囁く男性は1人しかいない。スピカはドキドキしながら、その答えを言った。

「レ、レグルスさん・・・・」
「フフッ、正解。」

視界が開けたかと思うと、スピカの愛する恋人であり、親衛隊長のレグルスはチュッとスピカの耳朶にキスをした。スピカが「あっ!」と高い声を出すと、レグルスはウインクして人差し指を口の前で立てた。

「いけないね、姫君は。そんな声を他の男が聞いたら、どうするんだい?襲われてしまうよ?」
「ウッ・・もしそうなったら、レグルスさんのせいですよ!?」

スピカは顔を真っ赤にしてレグルスに精一杯の勢いで抵抗してみた。だが、レグルスは面白そうに笑うだけである。
常に余裕あるレグルスにスピカは勝てずにいた。未だにレグルスが余裕なく乱した所を見たのは皆無である。

「アハハハッ、そうだね。謝るよ、スピカ・・・それより、どうしたんだい?こんな所にぽつんと立って、考え事でもしていたのかな?」
「あっ・・・!そうでした。私、レグルスさんとお話したくて・・・・」
「私と?フフッ・・嬉しいね。私のことを、そこまで必要としてくれるなんて・・・・」
「はい・・・だって、レグルスさんですから・・・・」

スピカが顔を真っ赤にしてそう言うと、レグルスはそのままスピカを抱き締めた。

「ありがとう、スピカ・・・それじゃあ、今日は私の部屋に来るかい?」
「えっ?いいんですか?」
「あぁ。今日は雑務だけだから、おまえとゆっくり過ごせるよ。」

レグルスはそう言うと、スピカの手を取って軽くキスをすると、そのままエスコートする形で歩き出した。スピカもそれに甘えて、レグルスに導かれるまま歩いた。
間もなくレグルスの部屋に到着した2人は、誰にも邪魔されることなくソファの上で熱く抱き合った。こうして2人きりで過ごすことがどれほど嬉しくて幸せなことだろう。

「・・そういえば、おまえは私に話したいことがあると言っていたね。何かな?」
「は、はい!あの、レグルスさんは、その・・・お父様と、よくお話をなさってらっしゃるんですか?」

スピカがそう尋ねると、レグルスは少し驚いた表情を見せた。

「おや・・・?それは、誰から聞いたのかな?スピカ。」
「はい。今日、ミザールさんに・・・・」
「そうか・・・・まぁ、否定はしないよ。国王様とは、よく会議もしているしね。」
「そうなんですか・・・・あの、レグルスさん。これは、非常にお聞きしにくいことなのですが・・・・」

スピカが顔を俯かせながらそう言うと、レグルスは心配そうにスピカを見つめた。

「・・聞きたくないことなら、無理しなくていいんだよ?スピカ。」
「はい・・・・ですけど、どうしても聞きたいことがあるんです。ずっと、ずっと胸の中に閉まっていたのですが・・・・」

ここまでスピカに沈痛な表情をされると、レグルスとしても心が痛い。せっかく2人きりになって抱き合っているというのに、スピカはどうしたのだろうか?

「スピカ・・・・どうしたんだい?私とこうしていることが、不満?」
「いえ、違います!その・・私がお聞きしたいのは、私に関する噂のことなんですが・・・・」
「噂・・・・?あぁ、おまえの婚約者のことかな?」
「!レグルスさん・・・・やはり、ご存知だったんですか?」

スピカが驚きながらそう尋ねると、レグルスはいつも通り余裕の微笑を浮かべた。

「あぁ。おまえは、その婚約者について、どう思っているのかな?」
「えっ!?あの・・その。私、レグルスさんと、別れたくないんです・・・・!なので、私の気持ちがどこまで通じるか分かりませんが・・・・私はずっと、レグルスさんと一緒にいたいです・・・・」
「そうか・・・・ありがとう、スピカ。」
「レグルスさん・・・・!」

せっかく手にした本当の恋を失いたくなかった。スピカがレグルスのことを強く抱き締めると、レグルスもそれに応えて強く抱き締めてくれた。

「スピカ・・・そんなに恐れなくていいよ。私たちは、ずっと一緒だから・・・ね?」
「はい・・・はい!レグルスさん・・・・ウゥッ・・・!」
「・・スピカ・・・泣かないで。大丈夫だから・・・・」

レグルスがそう言うと、本当に大丈夫のような気がしてくる。
どうしてレグルスはこんなに強いのだろうか。もしかしたらあの悲恋小説の主人公たちのように、引き離されてしまうかもしれないのに・・・・

「ウゥッ・・・ウッ!でも、レグルスさん・・・・!」
「心配しなくていいよ。おまえを守れる男は、私だけなんだから・・・・」

レグルスは優しくスピカにそう言うと、スピカの唇に自分の唇をそっと重ねた。そしてスピカを安心させるように、スピカの頭を優しく撫でる。
スピカは幸せだった。レグルスの優しさと温かさをこうして感じられて。どんなに弱気になってても、レグルスならこうして自分を支えてくれるだろう。スピカはますますレグルスと一緒にいたいと強く思った。
スピカと舌と舌を絡めてディープなキスを交わした後、レグルスはスピカの項に「チュッ」とキスをした。それだけで、スピカはビクンと身を震わせた。

「あぁっ!」
「フフッ・・可愛い、スピカ・・・」

レグルスが甘くそう囁いてくれるだけで、スピカは何倍もレグルスを感じてしまいそうだ。
レグルスはスピカの着ているドレスを丁寧に脱がすと、露になったスピカの白い体のあちこちに口付けた。

「あ・・っ・・!ん・・・」
「感じるかい?スピカ・・・」
「は、はい、レグルスさん・・・!あぁっ!そ、そこ、は・・・っ・・・!」
「こんなに勃っているね、スピカ・・・」

スピカの胸の頂を、レグルスは優しく転がした。それだけでスピカの中に甘い痺れが体の中を駆け抜ける。

「う・・ん・・あぁっ!ん・・あっ!気持ち、良いです〜・・・!あっ、あぁっ!」

レグルスがそれを口に含み、強く吸い付いてチュッとキスをした。それと同時に、スピカは下半身が濡れるのを自分でも感じていた。
きっとまた、レグルスに「もう濡れているね。」とからかわれるに違いない。だが、こうしてレグルスに愛されると、自然と濡れてしまうのだ。それだけスピカがレグルスを愛している証拠でもある。
両方の胸をたっぷりレグルスに愛された所で、今度は下半身だ。太股にキスをされて、スピカは再びビクンと反応してしまう。

「あっ!レグルス、さん・・・!」
「もう、ここは濡れているかな?」

レグルスがスピカの下着をそっと脱がし、とうとうスピカが全裸になったと同時に、レグルスはスピカのそこにそっと触れた。既にスピカのそこは泉のように、愛液が沢山流れ出ていた。

「ひゃあぁっ!う・・ん・・・ダメ・・ェッ・・・!」
「フフッ・・そう言われると、もっとしたくなってしまうね。」

レグルスはそう言って指でスピカのそこをやんわりとかき混ぜた後、スピカの足を広げて泉の中央部分・花芯にチュッとキスをした。

「ああぁっ!や・・っ・・あぁっ!そ、そこ、は・・・あぁん!」
「・・はぁ・・っ・・すごいね、スピカ。こんなに濡らしてしまって・・・・私と、一緒になりたい?」
「はい・・・はい!レグルスさん・・・!レグルスさんと、一緒に・・・」
「スピカ・・・・!あぁ。今行くよ・・・・」

レグルスはそう言って、すぐに自らの服を脱いでスピカの中に入り込んだ。レグルスの大きくなっているそれは、スピカのトロトロとあふれ出てくる愛液によってあっさりと受け入れられる。

「あ・・っ・・レグルス、さん・・・・!やっと、一緒ですね・・・・」
「あぁ、スピカ・・・・これからも、いつまでも・・ずっと一緒だよ。」
「レグルスさん・・・・!あっ!ああぁぁっ!ああぁん!」

レグルスがスピカを抱き締めた後、腰を動かした。いつもは徐々に腰を動かすペースを速くしていくレグルスだが、今日は初めからそのスピードが速かった。

「・・っ・・・スピカ。今は、私だけを感じてね・・・・!」
「はい・・レグルスさん!うんっ!ああぁっ!あぁ・・っ・・!ああぁっ!」

ソファの上で2人は強く抱き合い、互いに腰を動かした。感じる快楽はより一層強く2人をつなぐ。

「・・スピカ・・・私だけの、姫・・・!絶対に、離さないよ・・・・!」
「ああぁっ!はい・・私、も・・・ずっと、レグルスさんと・・・あぁっ!ああぁっ!そんなに、したら・・・あっ!ダメ・・・!!」
「スピカ・・・・!もう、我慢出来ないよ。私の全てを、おまえに・・・・!」

レグルスはそう言って、スピカの最奥を何度も突いた。スピカは何も考えることは出来ず、ただ快楽に身を任せるしかなかった。

「あっ!ああぁん!ああぁ・・っ・・!ああぁん!あぁっ・・・ダメ・・ェ・・・!イッちゃう・・・・!!」
「く・・っ・・はぁ・・・スピ、カ・・・!」
「ああぁっ!ああぁぁっ!あああぁぁっっ!!」

スピカが絶頂に達したと同時に、締め付けが一気にきつくなった。レグルスも同時に絶頂に達し、スピカの中からそれを抜いて自らの性を放出する。
いつもは息遣いが荒くなってしばらく動けなくなるスピカだったが、今日は違った。手早く処理しているレグルスの腕に抱き着いて、自ら動いたのである。

「ん・・・?スピカ?」
「すみません・・・どうしても、今はレグルスさんと離れていたくなくて。甘えても、良いですか?」

愛する恋人に顔を赤くしながらそう言われて、誰が否定出来よう。レグルスはスピカの頬に軽くキスをして微笑んだ。

「もちろんさ。それは、おまえだけの特権だよ。」
「レグルスさん・・・はい!ありがとうございます・・・大好きです。」
「あぁ・・・私も、おまえを愛しているよ。スピカ・・・・」

そうして、2人は再び熱い口付けを交わした。舌を絡め終えてから、互いに見つめて微笑み合う。
スピカの中で、答えは決まった。例えどんなに婚約者の存在があっても、レグルスを選ぼうと。
悲恋小説のような恋はしたくない。世情に流されず、自分の想いを貫きたいとスピカは密かに強く決意したのだった。

 

END.


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